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    INTERVIEW − 白玉雅己

    • Interview:Kengo Nakamura

    なんとなく聴いて、なんとなく“あ、心地いいんじゃない?”
    っていう感じで捉えてもらえるといいな

    ━━今作は全体的にシンプルで、絞った音数でのアレンジになっています。そのなかでベースが主旋律を奏でていますが、「さんぽに行こうよ」や「運命も君も曲がりくねっているRoad」など、スラップのプルでメロディを弾く曲も目立ちますね。

     スラップのプルって合理的な奏法で、波形で見ても音が強いしすごく抜ける音じゃないですか。ベースは音域が低めなので、あの音の抜け方は派手にも聴こえるし、効果的なんですよね。それをうまく取り入れられたらいいなと思いました。

    「運命も君も曲がりくねっているRoad」MV

    ━━「愛情かそれとも悲しみか」では、サビのメロディの合間にスラップでパーカッシブな装飾を入れていますね。あからさまなオブリではなく、さらりとやっている印象です。

     軽く入れている感じですね。僕は親指だけのアップダウン、オルタネイトってあんまりしなくて、親指と人差指でオルタネイトにしてみたり、ロータリーみたいな親指と人差指でちょっと三連符っぽいことをしてみたり……。

    ━━「さんぽに行こうよ」の16分音符の詰まるところも、それを活用して速い音符に対応してますね。

     そうですね、そこは少しやってますね。

    ━━そういうのもすごくさりげなくやってますよね。聴いていて“わぁ、テクニカル!”とはならないけど、実際にコピーしようとしたら“あれ、これってどうやってやってるんだろう?”ってなるような。テクニックのひけらかしにはならずに、ちゃんと音楽的にテクニックを使っていると感じました。

     僕は曲やフレーズを作るときに歌いながら作ることが多いんですよ。だからそういう感じになるのかな? あとはエレクトリック・ベースのスラップはまだ歴史が短いじゃないですか。1970年代くらいに出てきて、まだ歴史的には50年くらいですよね。だからカッチリとした教科書がほかの奏法に比べるとまだそんなにないので、多分みなさんもそうだと思うんですけど、けっこう自分で考えながらフレーズを組み立てるんですよね。僕もそういうところがあるので、フレーズごとに考えながらやっています。

    ━━「優しい時」では2フィンガーのソロがありますね。ベースでのソロもいろいろなやり方がありますけど、あそこはちょっとブルース・ギター的な速弾きリックといいますか、ギター・ライクな感じがしました。

     たしかに言われてみればギター・ライクですね。今回はほかの曲ですが、ギターのフィンガー・スタイルを取り入れてみたいなと思ったんです。例えば、「Fun Day」ではダブル・ストップ的な奏法を使いました。

    ━━「Fun Day」のイントロの部分ですね。親指で低音弦を弾いて、人差指で上の弦をつまんでいくような。

     あそこはちょっとコードっぽいアプローチをしたかったので、奏法からアプローチをしてベースに合う感じに落とし込んだんです。本当はもっと“フィンガー・スタイル!”みたいな感じでやってみたかったんですけど、音がモワッとしすぎちゃったりして、ちょっとベースには合わなかったんですよね。それでダブル・ストップが合理的なんだなってところに落ち着いたんです。

    ━━「Fun Day」のサビは1、2弦を使った重音アプローチです。あそこはバッキング的な意識ですか?

     そうですね。あそこは基本重音奏法でやっています。あんまり必要ないかな、とも思ってたんですけど、やってみたら気持ちよかったのでそのまま重音奏法でやりました。こういうのはたまに入れるとやっぱり気持ちいいですよね。

    ━━今回の使用機材を教えてください。

     6割くらいがプレベで、あとはパッシヴのジャズ・ベースとアクティヴの5弦ジャズ・ベースも使いました。5弦は「優しい時」のメロディ・パートで使いましたね。実はあんまり5弦の必要はなかったんですけど、5弦だと上がE音まであるので、デモのときに試してその流れで5弦を使ったような気がします。

    ━━アンプなどは?

     アンプはもちろん、DIもRED DIとかを試したんですけど、結局それらはなしで、インターフェイスのUNIVERSAL AUDIO APOLLO TWINに直接挿して録音しました。そのあとでプラグインで加工などはしていますけどね。

    ━━今回のアルバムはタイトルどおりリラックスして聴ける、良い意味で生活のBGMになるアルバムだと思うのですが、ひとつひとつの楽曲をどうやって弾いているのかベーシスト目線で分析してみるとわりといろいろな技が詰まっていて、“FUN BASS”っていうベースのおもしろさが詰まっている作品だなと思いました。

     ありがとうございます。ただ、そこまで込み入った感じじゃなく、自然に弾いて楽しいっていうのもあるかなと思います。なんとなく聴いて、なんとなく“あ、心地いいんじゃない?”っていう感じで捉えてもらえるといいなと思いますね。

    【お知らせ】
    4月19日発売のベース・マガジン2021年5月号にも白玉のインタビューを掲載! BM webとは違った内容でお届けします!

    ◎Profile
    しらたま・まさみ●1974年4月27日、広島県因島出身。1994年にポルノグラフィティとして活動を開始し、1999年にシングル「アポロ」でメジャー・デビュー。翌年にはNHK紅白歌合戦に出場するなど人気を集めるも2004年に脱退。その後、『Great Pleasure』(2005年)、『Natural Born』(2007年)などを発表してソロ・アーティストとして活動する。2019年にオフィシャルYouTubeチャンネルを開設し、演奏動画などを投稿。2021年2月にアルバム『HEALING & FUN BASS』の配信を開始した。

    ◎Information
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