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INTERVIEW – 中村和彦[9mm Parabellum Bullet]
- Interview:Zine Hagihara
バタバタ感を抑えながらほどよい疾走感にするイメージ
――使用したプラグインはどのようなものでしたか?
サンズ系など、メインのサウンドを作るのに使用したのはTSE AUDIO BODです。アンプのシミュレーターはCubase付属のものです。(カップリング曲の)「Calm Down」で空間系のプラグインを使ったんですが、リヴァーブ、コーラスともにCubase付属のものでしたね。そのほかにもEQなどいろいろ使っていますが、おもにこんなところです。
――サンズアンプがサウンドメイクの核になっているのは変わらないですね。
サンズはライヴでも常にオンになっているベーシックのペダルなので、そこはやはり重要でした。あとは、オートメーションもかなり活用したんですよ。例えば、ブーストしたいときにブースターを踏んでいたところを、必要なところからゲインがあがるようにしたり、そうやってオートメーションを書いていきました。そういう作業ってどちらかと言えばエンジニアがやることが多いと思うんですけど、そういうのも自分でできる範囲でやっちゃおうかなと。そういう意味では今までよりも自分の音に対して責任が伴うことになったなと思います。でも、エンジニア的作業ではありながらも“ここでブースター踏みたい”っていう考え方はライヴ的というか、やっぱり瞬間を大事にしているっていう感じもあります。
――フレーズについて聞いていきます。「白夜の日々」はシンコペーションがキモになっていますが、ベースはそれに対して部分的にアプローチを変化させて飽きさせない工夫をしています。例えばイントロ部分では、途中からスライドで高音のメロディを差し込んだりしていますよね。
スライドが好きだっていうのもあるんですけど、リズムをうしろにも前にもズラしやすいのでタイミングがシビアなんです。曲自体の勢いが強く感じられるアレンジになっていると思うんですけど、この合間に入れているスライドは、どちらかと言えば重めに弾いているつもりなんですよ。勢いよくやってしまうと疾走感というよりはバタバタした印象になるので、なんとなく引き算するイメージで弾いていたと思います。
――なるほど。スライドによってグルーヴを出しているんですね。
そうですね。タメを意識してバタバタ感を抑えながらほどよい疾走感にするイメージというか。こういうことって意識している部分と意識していない部分があるんですけど、あとあと考えてみたらそういう必要性があるからやっているんだなって感じたりもします。
――カップリングの「ロードムービー」はファンキーなノリの楽曲で、ベースは全体を通して的確に音価をコントロールしていることがわかります。
そうですね、ちょっとブラック的なノリだと思います。音を止めるタイミングとかも、譜面では表わせられないぐらいに“ちょっとだけハミでてる、もしくは短い”とかっていう絶妙なところで、そのへんはけっこう昔からこの手のアレンジをするときは意識しています。
――そういったシビアな部分も、ひとりで作業するからこそさらに追い込めるのでは?
めちゃくちゃ集中して追い込みましたね(笑)。音の切り際とかってドラムの余韻などのほかの楽器とも深く関係している部分なので、そこを見極めながら作業するのはけっこう難しかったです。
――最後の「Calm Down」はインスト曲になっていますね。
この曲は去年ぐらいからツアーの合間にやっていたセッション曲で、ヴォーカルの(菅原)卓郎が喉を痛めていた時期に、ライヴの途中で少し休憩するために演奏していました。それを改めてアレンジしています。
――サウンドはコーラスやリヴァーブを多重にかけて複雑な作りになっていますね。
いろいろかかっています。宅録向きな音の詰め方ができたなと思っていて。空間系は足下にたくさん並べるよりも画面で数値を見て細かい作業をしていくほうがスムーズでしたね。足下にペダルを並べるとすごい量になるだろうし。
――フレーズとしてはギターの和音に対してさらに和音を足すように弾いていて、あまりベースらしくはないアプローチになっていますね。
むしろギター寄りのイメージで、前半はほとんどアルペジオを弾いています。これもフレーズとしてあまり今までにやってこなかったアプローチでしたね。もとはセッションだったのでゴールを決めずに演奏していたんですけど、やっていくうちにこの形になっていって、自由に演奏したことが生きたアレンジになったのかなと思います。
――曲のクライマックスではかなり歪んだサウンドは登場しますが、ここはフレーズというよりは音圧での主張なのだと感じました。
そう、いつもどおりの音圧です(笑)。この部分ではライヴのときはオクターバーを踏んでローC♯を出しているんですけど、録音ではチューニングを下げて鳴らしています。深い意味はないんですが、それもありかなって(笑)。これも、最終的に目指しているクオリティにたどり着けばいいので、手段は一番重要なわけではないということですね。
――コロナ禍によって新たな手段も得られた新作ではありますが、今後の展望は?
ライヴハウスっていう場所は本当に、我々にとってそこで生活していると言っても過言ではない場所だと思うので、そこを守ってあげられるようなことが何かできたらなと思っています。
◎Profile
なかむら・かずひこ●1984年4月24日生まれ、宮城県出身。9mm Parabellum Bulletは2004年3月、横浜にて結成。2枚のミニ・アルバムをインディーズ・レーベルよりリリースしたのち、2007年に『Discommunication e.p.』にてメジャー・デビュー。2019年9月9日にリリースした『DEEP BLUE』までに、8枚のフル・アルバムなどを発表している。“9mmの日”である9月9日に総勢18組みのアーティストが参加したバンド初のトリビュート・アルバム『CHAOSMOLOGY』と、11枚目のシングル「白夜の日々」をドロップした。
◎Information
9mm Parabellum Bullet
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