PLAYER
UP
INTERVIEW – 村井研次郎[cali≠gari]
- Interview:Shutaro Tsujimoto
- Live Photo:Mikako Ishiguro
ベース・ラインは鼻歌で作ったものを
打ち込んでいきます。
──少し脱線しますがもうひとつルーツのお話を。フレットレス・ベースはどういう影響から弾き始めたんですか?
諸田コウさんっていう日本人ベーシストですかね。彼は30代で亡くなっちゃったんですけど、DOOMというスラッシュ・メタルのバンドでフレットレスを弾いていて。あとはトニー・フランクリンとか、マルコ・メンドーサとか、ブルー・マーダーみたいなハード・ロックでもフレットレスを使う人がいて。そういうジャンルのなかで、あくまで表現の一手段として使われるフレットレスがすごく好きでしたね。
──今作で村井さんは「裂け目の眼」「ニンフォマニアック」「鐘鳴器」と3曲の作曲も手がけています。「裂け目の眼」はどういうところから発想した曲ですか?
これは“cali≠gariあるある“なんですけど、僕が自分の好きなハード・ロックをベースに曲を作っても、cali≠gariのフィルターを通すと全然違うものになる。これが最初からわかっているので、好きなハード・ロックをそのまま提出した感じですね。そうすると見事に“cali≠gariパンク”になるという(笑)。不思議なんですよ、バンドマジックというかね。それを楽しみましたね。
──村井さんはデモの時点で、ほかのメンバーのプレイをけっこう指定するんですか?
ギターは打ち込みしか入れてないんで、完全におまかせです。歌メロも、ピアノとか僕の仮歌で軽く入れたりはするけど、符割が変わったりしたところで全然OKというスタンス。一度自分の手を離れたら、僕はわりと異論は持たないほうですね。
──「裂け目の眼」は間奏のベース・リフのディストーション・サウンドも印象的でした。
あれはエンジニアさんが、ミックスのときにサンズアンプっぽいものを画面に出していました。ライヴでも、そういう歪みを入れています。ジャンクな感じっていうか、ああいう音が年々好きになってきていて。最近の若い子の歪みってキレイじゃないですか? 昔の人のぶっ壊れちゃったような音が好きなんですよね。
──「ニンフォマニアック」は、2回目のサビ前の間奏がシンセとベースだけになるソロ的なパートです。このフレーズはどのように組み立てましたか?
いつもベースはデモの段階ではまったく弾かなくて、ベース・ラインも含めて曲作りは基本すべて鍵盤なんです。それと、ベース・ラインはいつも家で鼻歌で作ったものをピアノで打ち込んでいきます。歌えるベースじゃないと弾かないというか、メロディアスじゃないスラップとかってあんまり好きじゃないんですよね。パーカッシブなフレーズって口に出して歌えないじゃないですか? そういう作り方なので、基本ミックス前のギリギリまで生のベースは弾かないんですよ。
──複雑な運指のラインが生み出される背景には、そのようなフレーズ作りのプロセスがあったのですね。
鼻歌で作るので、しょうがないんです。あくまでベース・ライン重視なんで、どうしてもプレイ的に無茶な状況になってしまうこともあるんだけど、それに合わせて奏法を変えていくしかないですよね。
──鼻歌に追いつくためには、テクニックを磨く必要が出てくると。
テクニックとかはむしろ全然使いたくないんですよ。ただ、使わざるを得ない状況ってあるじゃないですか。あるメロディを歌っちゃったら、それを弾くしかないですから。そうすると“左手だけだと足りない、じゃあ右手入れなきゃ”って感じになっていきます。なので最終的にはいつも困ってますね(笑)。レコーディングになると、“弾けない!”ってなることはよくありますよ。