プランのご案内
  • PLAYER

    UP

    INTERVIEW − 森本夏子 [bonobos]

    • Interview:Tomoya Zama
    • Live Photo:Yumi Ikenaga、Hisashi Ogawa

    今のbonobosの最大限カッコいいセットリストで
    最大限イケてる演奏を見せたい

    ━━「アルペジオ」は手数や音価、音の配置などかなり複雑なラインになっているのが印象的ですね。

     これはもう、レゲエの弾き方だから難しいんじゃないかなって思っています(笑)。もっと重心高く、手数多く弾ける人ならきっと軽やかに弾きこなせるんじゃないかと思うんですよね。私がとにかく一音一音をしっかり出すっていう音の出し方が骨身に染みているので、どの曲でもレゲエが根底にあって、特にアルペジオは手数のわりに太い音が出ているんじゃないかなって思いますね。

    ━━それぞれの楽器が複雑に絡み合いつつベース・ラインがウネっていて、緻密な計算されたラインだと感じました。

     実際、はじめにデモからフィジカルに落とし込むとき、聴いていても理解できなかった思い出があります。“これどうなっているんだろう?”っていう(笑)。まったく理解できなかったですね。うちのドラムもキーボードもギターも多分途方に暮れていたと思います。全員がバラバラなことをやっていて、なにがどうなっていたら正解なのかが正直最初の頃はわからなかった。今はもうほかの曲と同じくらいの感覚で弾けますけど。

    ━━2:42からの静かになっていくところでは、ベースの音の配置も独特で、すべての楽器やヴォーカルが複雑に織り重なって、ある種トランス状態に入っていくような感覚がありますね。

     そうですね。実際ライヴではもっとトランス状態が長いんですよ。これは私が伸ばしたい派だったのでもっと引き伸ばしています。ライヴでのこの部分は今現在めっちゃカッコいいですよ。

    「アルペジオ」 MV

    ━━「LEMONADE」は全体的にバス・ドラムとベースの刻みが軽快で心地いいハネ感がありますね。こういったドラムとの絡みなど、bonobosのリズム体としてはどういった意識がありますか?

     ドラムの梅本と一心同体でありたいというか、完全にドラムしか聴いていない状態でいつもベースを弾いているんですよね。私自身のドラムの理想像もあって、梅にこうあってほしいっていうのはよく話すので、梅は梅で本来の自分のプレイ・スタイルがありながら、bonobosで叩くときは私の意向をよく汲んでくれていると思います。そうやって“リズム体としてこうでありたい”っていう感覚を共有して一緒にグルーヴを作っている感じがしますね。蔡くんが一番ドラムに厳しいって言いましたけど、私もめっちゃドラムに厳しいので、梅は大変だと思います(笑)。でもドラムが梅本になってから、ベースを弾いていて最高に気持ちよくて、相性はめちゃくちゃいいと思います。細かいところを要求するだけで、根本的にはまったく違和感なく、意識せずとも合う感じがしますね。

    ━━この曲はステップを踏むようなベース・ラインで、踊るようなイメージっていうのもあったんじゃないでしょうか?

     そうですね。このハネ感をめっちゃ大事にしていますし、自分で弾いていても勝手に体が動く感じはあります。でも、これ地味に難しいんですよね。アルバムのなかでは軽快でポップなほうだと思うんですけど、なんなら「アルペジオ」よりも厄介なんじゃないかって。それぐらいベースが大切な立ち位置にいるんですよ。

    ━━4:27からはハネ感のあるプレイに加えて、なめらかなベース・ラインも組み合わさって、後半にいくにつれて高揚感が演出されていますね。

     この曲は転調からあとの後半は、蔡くんから珍しく”こっから先は考えて”って任されたんですよ。だからこの曲が一番デモから変わった曲なんじゃないですかね。わりとオーソドックスなアレンジなので、曲に合わせてその場で弾いたのかなって、今思い返しています。

    ━━任されたからこそ、べース・ラインを作っていくうえで意識したポイントはありますか?

     こういう曲こそグルーヴが大事というか、ひとりひとりが音価をしっかり意識して計算して音を出さないと、だらけた曲として聴こえてしまうんですよ。ちゃんとパキッとした曲として伝わりづらくなっちゃうから、みんなそこは意識していたと思います。

    ━━最後に、3月にラスト・ライヴとして心斎橋と日比谷での公演がありますが、どんなライヴにしたいですか?

     音源もそうなんですけど、ライヴに関しても最後だから懐かしい歴史を振り返るようなライヴにしたいとはまったく思っていなくて、今のbonobosがその最後のとき、2023年3月にできる最大限カッコいいセットリストで、最大限イケてるカッコいい演奏する、完成度の高い、bonobosの最高の到達点を見せるっていうライヴにしたいと思っています。だから、みんなが思っているようないわゆる解散ライヴにはならないような気がしていますね。“こんなバンド解散するの?”、“未来しか見えないじゃん!”みたいなライヴにしたいです。

    「アルペジオ」と「LEMONADE」で使用されたスタインバーガー製の XS-15FPA。2010年頃に入手。減衰の緩やかなサステインの長さがレゲエ・ベースと相性が抜群で、これを入手してから音価により意識的にストイックに弾くようになったと語る。
    「永久彗星短歌水」、「Not LOVE」、「YES」、「電波塔」、「Ghostiun’」、「おかえり矮星ちゃん」、「KEDAMONO」「Super Adieu」で使用したヤマハ製BB2025X。2009年のアルバム『オリハルコン日和』の頃より使用しており、スタインバーガーよりも腰高なベース・ラインを弾く際に使用すると語る。

    ◎Profile
    もりもと・なつこ●1978年9月生まれ、千葉県出身。レゲエやダブをルーツに持つベーシストで、2001年に結成されたbonobosとして活動を開始。2003年のシングル「もうじき冬が来る」でメジャー・デビューを果たす。幾度のメンバーチェンジを経ながら、現在の5人編成に至る。bonobosは2023年の春に解散することを発表しており、ラスト・アルバムとして11月2日に『.jp』をリリース。3月には心斎橋 BIG CATと日比谷野外大音楽堂にて解散前ラストとなる公演”bonobos LAST LIVE「bonobos. jp」”を開催する

    ◎Information
    森本夏子 :Twitter Instagaram 
    bonobos:Official HP  YouTube