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INTERVIEW – Natsuki[Luby Sparks]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo(Live):kokoro
  • Photo(Ampeg PF-500):Yoshitake Hamanaka

大学時代はスティングレイを高めに構えて、
ひたすらブラック・ミュージックをやっていました。

━━リッケンバッカーはどういう経緯で手に入れたんですか?

 ずっと欲しかったんですけど、色がいいやつがほしいなと思って。これは“Blue Boy”っていう2003〜2007年くらいの短期間で日本限定とかで売っていたやつなんですけど、カジヒデキさんも同じものを持っていて。“Blue Boy”っていうくらいなのでカジさんにピッタリなんですよ(笑)。自分もこのカラーがいいなと思ってずっと狙っていたんですけど、『(I’m) Lost in Sadness』のレコーディング中にオークションに出ているのを見つけたので速攻で買いましたね。その前に使っていたスティングレイのベースも水色っぽいペイル・ブルーみたいな色ですし、こういう色のベースを集めてるんです(笑)。

━━リッケンバッカー使いで、憧れのベーシストはいましたか?

 ピースというUKバンドのサム・コイザーですかね。高校時代にサマソニの来日で知ったんですけど、アーティスト写真に惹かれて好きになって。いつも“黒いスキニーに白い靴下とドクターマーチン”みたいな格好で、足も細くて長いし、弾き方がとにかくスタイリッシュでカッコよかったんです。彼が黒いリッケンバッカーを使っていたんですよね。

ピース「Lovesick」(2013年)

━━ちょっと内股で弾く感じがいいんですよね(笑)。ピースは僕も好きでした。

 そうそう(笑)。あれをけっこう真似して弾いていたので、僕はいまだに右足を内側に織り込んでリズムを取るのをやっちゃうんですよね。

━━Natsukiさんにとって一番最初のベースは、スティングレイということになるんですか?

 ベースを始めたのは高校2年生くらいなんですけど、最初に買ったのはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが立ち上げたブランドから出ていた“フリー・ベース”でした。その頃は、やっぱりレッチリとかは普通に好きだったんですよね。でも途中で、フリーも使っていたし、あとはレディオヘッドのコリン・グリーンウッドが初期に使っていたというのもあって、スティングレイが欲しくなったんです。それこそ、ライドとかスロウダイヴとかシューゲイザー系のバンドでも使われていましたしね。

2018年から使用しているリッケンバッカー 4003 “Blue Boy”。
ヘッド・アンプは写真のアンペグ製 PF-500を所有。今作のレコーディングではIDEAL MUSIC FABRIKが保有するアンペグ製B-15Sが使用された。

━━Natsukiさんからフリーの名前が出てくるとは、かなり意外です(笑)。

 ですよね(笑)。僕、最初は指弾きだったんですよ。それこそ、Luby SparksのドラムのShinとギターのSunaoは大学のブラック・ミュージック専門のインカレ・サークルで出会ってますし。その時期は、スティングレイを高めに構えて指弾きでひたすらブラック・ミュージックをやっていましたよ。

━━全然想像できないです(笑)。いわゆる“ファンキーなプレイ”も、実は引き出しにはあると。

 そもそもは指弾きとかスラップをずっとやっていましたからね。でも、サークルのまわりの人たちの演奏がすごくうまかったのと、自分のベース歴が浅かったこともあって、途中からコンプレックスを感じてしまうようになったんです。それでサークルを辞めて、すぐにLuby Sparksを結成しました。その頃僕はザ・ドラムスっていうバンドが好きで、それを真似した髪型にしていたんですけど、Sunaoも好きだったみたいでそれに気づいてくれて(笑)。それでちゃんと話してみると、彼もスロウダイヴとかがめちゃくちゃ好きなことがわかり、“シューゲイザーみたいな音楽をやってみよう”という運びになりましたね。

━━そう言われると、今回のアルバムの「Search + Destroy」はベース・ラインにファンク感が出ているような気がしてきました。

 タメが効いてる感じが出てますよね。今回のアルバムではこの曲だけ指弾きかつスティングレイなんです。個人的には、リッケンバッカーを指弾きするというのがしっくりこなくて。

 「Search + Destroy」(Official Music Video)

━━Natsukiさんは最初からベースを手に取ったということですが、ソングライティングもベースで行なっているんですか

 作曲はやっぱりギターですね。でもベースから始めちゃったんで、いまだにギターのコードの名前をひとつもわかっていないんですよ(笑)。自分の耳で一番気持ちいいところと、“これはハズれてるな”っていうのはわかったので、なんとなくで作り始めましたね。ベースのスケールとかは今でもまったくわからずにやっています。

━━でも今回のアルバム、コードの使い方がすごく凝っているなと思いましたよ。「Start Again」とか、けっこう複雑じゃないですか?

 これはノリとしてはビーバドゥービーとかサッカー・マミーとか、最近のオルタナ・リバイバルっぽいものをイメージした曲なんですけど、確かにコード・チェンジがけっこう激しくて。サビが何回かあるんですけど、毎回進行が違うんですよね。僕は“規則正しいフレーズ”というか、“コードは変わるけどベースのフレーズはそのまま”みたいなアプローチがけっこう好きなんですけど、この曲ではそれをやりながらコードに合うようにフレーズを組み立てるのに苦労しましたね。

━━「One Last Girl」も、1サビと2サビでコード進行を変えて、そこで盛り上がりを作っていますよね。

 そうですね。今になって昔の曲を聴き返すと、コード進行とか構成がすごく“当然のもの”になっちゃっているのを感じるし、そうすると曲の尺も自然と長くなっちゃうんです。今回のアルバムでは、曲の長さを3分とか、なんなら2分台に抑えることを意識しているし、なおかつ展開はちゃんと飽きさせないようにっていうのをけっこう考えましたね。1曲のなかで、Aメロは1番と2番では必ず何かを変化させているし、サビもコードとかメロディで変化を作るようにしています。「One Last Girl」はラスサビとアウトロで“最後だよ!”っていう感じを出すことに、かなりこだわって作った曲ですね。

「One Last Girl」(Official Music Video)
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