一瞬、気の利いたフレーズを出せればいいかなと。

━━「BITTER!」は、スラップでプルのアクセントが小気味よく入ってくるのが気持ちいいですね。こういうプレイは、わりと田口さんの得意分野なのでは？

　海くんのデモに、シンベでそういうフレーズがけっこう入っているんですね。海くんがそれでグルーヴを作るのが好きみたいで、その影響なんじゃないかなと思います。

━━自身のもともとの手グセではないと？

　今となっては、もう海くんとずっと一緒にやっているので、手グセになってしまっているかな（笑）。だからそんなに考えて入れているものではなかったりしますね。「BITTER!」はけっこうシンプルにやろうとは思っていて、スラップのプルで気持ちいいところをついていくみたいな感じでしたね。

━━「ナイトダイバー」のサビはさりげなくプルを入れてニュアンスに変化をつけています。

　この曲は海くんが作ってきたデモのとおりに弾いたものを一度渡して、それとは別に僕が自由に弾いたものも渡して、それを海くんが編集して最終的な音源になっているんです。だから曲が上がってきてから、“あ、こう使ったんだ”って初めて聴く感じでした（笑）。

━━素材を提供した的な。

　そうそう。そういう感じですね。僕らしさも入れつつやったって言っていたので、うまいところをつないでくれたんじゃないかな。

━━「NO AID」はジャクソン5的な雰囲気の曲ですね。

　そうですね。ちょっと古いソウルみたいなものを意識して。

━━Aメロはピアノのリフと合わせつつ、リフの隙間ではピアノとベースが交互にオブリを弾く構成になっていますが、これは計算したものですか？

　この曲は、最初はシンベでやろうと思ったんです。シンベはそんなに弾けるわけではないんですけど、けっこう頑張って録音したものを海くんに送ったら、“生ベースで聴いてみたい”って言われて。

━━せっかくがんばったのに（笑）。

　そう（笑）。まぁでも、それは仕方ないかなと思って。僕はもともとシンベ弾きでもないので、けっこうあのピアノのリフが特徴的だったから最初はそれに全部合わせたものをシンベで弾いていたんですけど、生で弾き直したときに全部ついていくのもちょっとくどかったんです。それで違うフレーズを入れたり休符にしたりして、Aメロとサビで分けて考えていきましたね。

━━サビはストリングスなんかも入って全員でいく感じですよね。

　ちょっと盛り上がり感がありますよね。ここは自分的には意識して作っていった部分ですね。

━━最後のサビのちょっとだけハイ・ポジションに浮遊する感がすごくさりげなくて、田口さんらしいなと（笑）。

　あそこは和音も使っているのかな。けっこう気に入っています（笑）。ベースに関しては、けっこう“土台”として考えてはいて、ウワモノはもう健介に好きにやってもらえればいいんです。「脚本」とかの最後はベースでブリブリやっているかもしれないですけど、基本的には、“1曲通してずっと気持ちよく”が目標で、一瞬、気の利いたフレーズを出せればいいかなとは思っていますね。

━━ほかの楽器とのバランスでいうと、ベースが引く感じ？

　作業的には、最初に健介が入る前のデモを聴いてやっているので、一度多めに弾いたものを提出して、健介のギターが入ってきたのを聴いてから、“じゃあここはベースを減らそうか”って感じで作り上げていくんです。基本的には、“もう健介好きにやっちゃって”っていう感じだし、ギターのカッコいいフレーズがあって、それを目立たせたいなと思ったら、僕は全然引きますね。ただ「Get Back」とかは、最初からあれだけギターが目立っていると、“サビは俺の持ち場だから”っていう感じで弾きました（笑）。

━━さて、アルバムのリリース後は5月からライヴがありますね。本作制作前にはバンド内でもライヴへの熱が高まっていたということですが、どのようなライヴになりそうですか？

　ライヴのサポート・メンバーをガラッと代えまして。今まではサポート・メンバーも含めての“バンド”っていう見せ方をしていたんですけど、最近はバンマスの小西遼（sax）くんが、海くんと一緒により3人が引き立つようなアレンジを考えてくれたりしているんです。昔の曲のアレンジも、“これ何の曲だろう？”みたいなアレンジもあったりするので、観に来てくれる人を飽きさせないワクワクするような感じのステージになると思います。お楽しみに。