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瓢箪から駒というか、ギャグから生まれたものです(笑)。
━━本作での使用機材は?
ベースは、ほぼ1961年製のプレシジョン・ベースです。PJに改造してますけどね。あと、「ハイポジション」は上のEが出てくるから普通のフェンダーでは弾けないということで、21フレットのネックが付いているジャズ・ベースを使いました。あとは、「踊りかける」はウォルですね。これは、例の16分のアルペジオのフレーズがけっこう難しくて。ウォルがネックの感触的に一番弾きやすかったんです。
━━「大きな河」は1番終わりとエンディングにオート・ワウを使ったフレーズがありますね。
これはズームのB3だったと思います。「ぐるぐると」の左チャンネルに寄せられたベースのリフの歪みもB3だったんじゃないかな。レコーディングではラインはもちろんアンプも鳴らしていて、アンペグのV-4Bのヘッドと、エピファニのユニットを交換したキャビネットを使っています。
━━最近は、レコーディングでは実機としてのアンプを必要としない人もいますが、鈴木さんは?
僕はアンプが鳴っていないとダメですね。音楽の種類にもよるんですけど、特に今回のような音楽だと、アンプのサウンドがないと、ちょっと足りなくなっちゃうかなって思います。
━━しかも、V-4Bなんですね。例えばB-15とかではなく。
そうなんです(笑)。新宿のピットインに古いV-4Bがあって、それが世の中で一番好きな音が出るアンプなんですよ。それで同じモデルを買ったんです。
━━「ハイポジション」は硬質な8分ルート弾きを始め、ベースのあり方がニューウェイヴ感やパンキッシュさを生んでいますね。
これはピック弾きですね。栗原の曲で、あの人はニューウェイヴ好きなんですよ。後半は、キーがDということもあって、開放を弾きながらハイ・ポジションのフレーズを同時に弾いていますね。
━━「あさやけ」はハーモニクスやタッピングのフレーズがセンスフルに挿入されているのが印象的でした。
ハーモニクスは、よくあるジャコっぽい感じですよね。ああいうのはついついやっちゃう。タッピングは、これもレコーディング前のリハーサルで冗談でやってみたんですよ。そうしたら案の定、“それ、いいね”って。瓢箪から駒というか、ギャグから生まれたものです(笑)。
━━タッピングをしている部分のバッキング・ギターはフェイザー系のエフェクトがかかっていますし、エディ・ヴァン・ヘイレンへの追悼かなと思ったりしましたが……。
なるほど(笑)。レコーディングをしたのは、まだ亡くなる前でしたね。でも、実はヴァン・ヘイレンは3人とも好きなんですよ。特に初期のヴァン・ヘイレン。だから、亡くなったのはすごくショックでした。
━━鈴木さんはさまざまなアーティストのサポートも手がけていますが、そういった仕事のときと自身のバンドのときでは、ベーシストとしての思考法や発想法が変わったりするものですか?
それは違うかもしれないですね。やっぱりクリーチャーズのときのほうが、何をやっても許されるというか(笑)。わりと好きにできるなっていうところはあります。やっぱり3人なので、ベースっぽくないというか、上のほうで弾いたりとかいろんなことをやれるスペースがありますから。きっちりとした4リズムとか5人くらいバンドのメンバーがいると、あんまりベースがそういうことをやっていても、“うるさい”って言われてしまうだけなので(笑)。
━━さて、本作のCDのみのボーナス・ディスクとなるDISC 2『STUDIO SESSION』には最新スタジオ・ライヴ音源を収録しています。大半がウッド・ベースでの演奏なのにはどのような意図が?
これは単に『30』がこういう感じのアルバムなので、ボーナス盤は全体をアコースティックな感じにしようかなっていうところでしたね。エレアコ・ベースみたいなものも一部使っていますけど。『30』のほうでウッド・ベースを使うっていうアイディアは特になくて、わりとシンプルな編成というか、一番オーソドックスな編成でやろうというのがあったので。
━━エレアコ・ベースを使ったのは最後の2曲ですか? 演奏が爆発しています(笑)。
そうですね(笑)。いわゆるアコースティック・ベースというやつなんですけど、初めて使ったんですよ。けっこうおもしろくて、これは可能性があるなと思いました。
━━さて、まだコロナ禍の情勢下ですが、今後のLITTLE CREATURESの活動についてはどのようなことを考えていますか?
ライヴができるような状況になったら、やっぱりライヴをしたいなと思っています。あと直近だと、2月にクリーチャーズで芝居の音楽をやる予定なんですよ。実は、今はそれで頭がいっぱいだったりします(笑)。
◎Profile
すずき・まさと●1971年6月ベルリン生まれ。高校在学中の1987年にLITTLE CREATURESを結成し、1990年にシングル「THINGS TO HIDE」でメジャー・デビューする。その後渡米しバークリー音楽院に入学。帰国後はバンド活動と並行してセッション・ミュージシャン、プロデューサーとしても活動する。2005年にsighboatを結成、2007年に菊地成孔ダブ・セクステットに参加。2006年にはソロ・アルバム『UNFIXED MUSIC』も発表している。
◎Information
鈴木正人 Twitter
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