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    INTERVIEW – 内田雄一郎[筋肉少女帯]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto

    筋少節が炸裂する、
    コロナ禍に生まれた11篇の映画物語

    メジャー・デビューより33年目を迎えた筋肉少女帯が、11月に通算21作目となるニュー・アルバム『君だけが憶えている映画』をリリースした。2019年の前作『LOVE』まで3年連続で新作アルバムを発表し、ハイ・ペースな活動を展開してきた彼らにとって約2年ぶりとなる今作は、「楽しいことしかない」や「COVID-19」といった収録曲のタイトルも示すように、今の世界を取り巻く状況が反映された作品となっている。今作で3曲のバラエティ豊かな楽曲の作曲も手がけたベーシストの内田雄一郎に、ベース・プレイについてはもちろん、キャリア30年以上のベテラン・バンドがコロナ禍にどのように向き合い、制作を進めたのかについて話を聞いた。

    今回やってみてまだまだイケると思いましたね。

    ━━前作の『LOVE』(2019年)まで3年連続というハイ・ペースで新作をリリースしていた筋肉少女帯ですが、2020年はリリースがなく、今作は2年ぶりとなっています。パンデミックはバンドが一度立ち止まるタイミングになったのでしょうか?

     毎年アルバムを出していて、“そろそろちょっと疲れたね”っていう話はしていたんですよ。最近は若いときとは時間の流れ方が違ってきていて、3年前が3ヵ月前くらいに感じられるんですね。その3ヵ月で3枚アルバム作ったから新鮮味がないというのもあって(笑)、“来年はやめようか”みたいな感じだったんです。そういうときにパンデミックが発生して、もはや世の中全部が“明るい未来が見えません”という状況になり。しばらくは世界の人と同じく、感染しないように家に閉じこもってましたね。

    ━━そこから、どうやって新作を作ろうという動きになっていったのですか?

     まずはZoom会議をやろうとなりまして。と言っても毎週会議とかいうことはなく、2020年に2回か3回かしかやってないんですけどね(笑)。それで20年中には、ライヴというロック・バンドの基本的な活動ができないならば、やっぱり新しいアルバムを作ろうというところまで話が行っていました。

    君だけが憶えている映画
    徳間ジャパン/TKCA-74994
    左から本城聡章(g)、内田雄一郎、大槻ケンヂ(vo)、橘高文彦(g)

    ━━去年は家で過ごす時間が増えたと思いますが、それによってソングライティングなど創作面への影響はありましたか? 今作には内田さん作曲の「COVID-19」という曲も収録されています。

     1日中ニュースを観ていると、嫌になっちゃいますよね。世の中の仕組みが嫌になっちゃうみたいな。そんな1年でしたね。曲を作っても大変暗いほうに行くわけでありまして。でも最初は重苦しいイメージで作っていたものが、途中で“もうどうでもいいや!”というやけっぱち気分で変えていったら、最終的に明るい方向になっていったという曲もありました。それで形になったのが「COVID-19」でしたね。

    ━━そうだったんですね。「COVID-19」はリズムも複雑ですし、鍵盤のアレンジも多く、かなりアレンジが作り込まれている印象ですが、内田さんのデモの段階ではどこまで完成していたのでしょう?

     これ、ほぼデモのとおりなんですよ(笑)。なんかね、長い間バンドをやってると、昔はデモ・テープに入ってるフレーズとかを“わざと変えてやろう”とか“もっとスゴイことをやってやろう”みたいな意識がメンバーみんなにあったわけです。でも最近は、打ち込みをいかに忠実にできるかみたいな方向になっていて。ギターの運指を考えないで鍵盤の打ち込みで入れたフレーズも、意固地になってそのとおり弾くことに挑戦する感じになっていますね。地味な挑戦(笑)。

    ━━「COVID-19」は今作で唯一シンセ・ベースを使っている曲でもあります。後半からはエレキ・ベースも入ってきますが、エレベは8分のウラを使ったリズミカルな動きをしていて、シンベとの絡みが複雑なリズムを生んでいますよね。

     これはルンバのリズムのアクセントを入れるようなイメージですね。あとエレキ・ベースは全部の弦を1音下げて弾いているんですよ。でもやっぱりテンションが難しいよね、慣れてないと。力を入れて弾きたいんだけど、右手の力加減が難しかった。

    ━━「COVID-19」は音像的にもアルバムのなかで異彩を放っていて、バンドの音楽性の幅広さを感じさせる曲だと感じます。バンドに複数のソングライターがいるなかで、今作での内田さんの役割はどういうものだったと思いますか?

     ギタリストのふたりは、しっかりメタルを、ポップを、ロックンロールをやろうというのがあると思うので、僕はその隙間の常に違ったジャンルというか、変わった方向を突いていこうというのは常に思っていますね。毎回違うことをやっていて、そろそろネタが切れるんじゃないかと思うんですが、今回やってみてまだまだイケると思いましたね。

    筋肉少女帯『君だけが憶えている映画』全曲ダイジェスト

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