PLAYER
冷静なときと、熱いとき
それぞれを遠くから見ている自分がいる。
ダンサブルなパーティ・チューンを世に放つI Don’t Like Mondays.。緻密に構築されたアンサンブルにキャッチーな歌を乗せて、モダンなサウンド・アプローチでまとめあげる隙がない楽曲を奏でる彼らは、2020年8月から行なっている5ヵ月連続のシングル・リリース企画にて、良質なポップ・ソングを鬱屈気味な世の中に届けている。そのなかでUKロックなどをルーツに持つKENJIは、自身が表現したい音楽を模索しながらも、歌に寄り添うことに長けたコンポーズ的視点でバンドの音楽に貢献する。そんな彼に、12月30日にリリースされた第5弾シングル「ミレニアルズ 〜just I thought〜」でラストとなるこの連続配信リリースにおいて、どのように楽曲を捉えてベース・プレイの取捨選択を行なってきたのかについて語ってもらった。
アプローチはあくまでシンプルでも、
フレーズの表現の仕方で色を加えていく。
━━I Don’t Like Mondays.(以下、アイドラ)はダンス・チューンが多く、ノリのあるグルーヴが印象的ですが、バンドの方向性はどのように決めていったんですか?
結成してから1年ぐらいは、自分たちの音楽性にかなり迷っていたんですよね。僕がコールドプレイやレディオヘッドなどのUKミュージックからの影響が強いこともあってそういう方向も考えたんですが、YU(vo)がけっこうMJ(マイケル・ジャクソン)やプリンスとかのダンス・ミュージックが好きなんです。各メンバーは本当に幅広くいろんな音楽を聴いてきてはいるんですが、YUの声を最大限に生かせる音楽性で、なおかつまだあまりやられていないスタイルで……今ではグルーヴィなスタイルのバンドが増えましたけど、当時はあまりいなかったんですよ。洗練されたポップスで、1980年代の香りもするダンス・ミュージック。そうやって自分たちの方向性を定めてきましたね。
━━確かに、ダンサブルなグルーヴが根本にありますが、楽曲によっては本当に多彩な表現のバリエーションがありますよね。
いい意味で期待を裏切っていきたいし、おもしろいことをどんどんやっていきたいっていう思いもあります。ダンス・ミュージックっていうルーツもありつつ、これが僕らですよっていうはっきりとした提示をすることよりもいろいろと挑戦したいですね。あとは、特定のジャンルに固執せずにトレンドのものを取り入れることも積極的にやっています。
━━楽曲はどんな風に作っていくんですか?
いろいろなやり方を試してきましたね。始めはコンペ形式で曲を出し合ったり、スタジオに入ってジャム・セッションを繰り返すこともあります。でも、各メンバーの好みのジャンルが本当に幅広いので、あるときからはやりたい音楽よりも、“アイドラは何をすべきか?”ということを考えるようになりました。
━━一度、俯瞰して考えてみよう、と。
はい。4人で商品開発の会議をするみたいに集まって作業をして、“今、アイドラにこういう曲が必要だよね?”というところからイチから作り始めるんです。テンポ感、コード進行、あとは歌メロがどういうキャッチーさなのか、どこに歌の山場を持ってくるのかとか。曲を100〜200曲ぐらい譜面に起こして、どういうものがキャッチーとされるのかを研究したこともあって。そうやって得た知識も踏まえつつ、さらにリファレンス(参考)を集める。イメージを近づけてからDTMに向かって、ドラム、ベース、ギターを鍵盤で打ち込んでから歌を決めていく感じですね。けっこうコライト(複数の作家でひとつの楽曲を共同制作する手法)っぽい感じ。海外では主流のやり方ですよね。
━━では、ベース・ラインを楽曲に当てハメるときも、俯瞰した視点でフレーズを構築していくんですか?
そうかもしれないですね。ギターのCHOJIはどちらかといえばプレイヤー寄りなんですよ。自分のやれる演奏をどこまでブチ込めるかっていうタイプで。僕はどちらかというと真逆で、まずは歌が目立たないとっていう考え方があります。もともとギター・ヴォーカルをやっていたっていうのもありますし、僕はある程度年齢を重ねてからベースを弾き始めて、テクニックで押すというよりはプロデューサー的な視点で必要な要素を加えることに注力しています。歌を立たせながら、いかにミニマルで効果的なベース・ラインを作れるか。シンプルななかに弾き方のニュアンスだったり、フレーズの表現の仕方で色を加えていくことが重要になりますね。