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INTERVIEW − イアン・ヒル[ジューダス・プリースト]
- Question:Gentaro Ymamoto
- Translation:Tommy Morley
- Photo:Shigeo Kikuchi
━━先日イギリス国内の野外フェス“Bloodstock”でライヴしたそうですね。こういった状況下で、大規模なオーディエンスを前にしたライヴはやはり特別なものでしたか?
そうだね。僕らはこの2年間、ほとんどが家で主夫生活をしていて、妻と一緒にショッピングをするくらいのことしかしていなかった。2年ぶりのライヴで、2回目のワクチンの接種を終了しているか、コロナウイルス感染の陰性証明がなければ、アーティストもオーディエンスも参加することが許されていなかった。2万人程度のオーディエンスにはそれ以外の制限がほとんどなかったみたいだね。コロナ感染予防の証明書をみんな持っている状態であるうえ、誰もがマスクを着用していた楽屋まわりだったので、僕らも安心して過ごすことができた。でもおもしろかったのは40年近くライヴをしてきて、ステージに上がる直前に初めて緊張したってことだね。あまりにも長い間プレイしていなかったので、”本当に全曲をプレイできるのか?”なんて思っていた。もちろんリハーサルはたっぷりと3週間もかけて行なったけど、ステージに上がって曲をプレイするとなるとそれは別モノだろう? でも2曲プレイしたらいつもの感じで落ち着いて自信を持ってプレイできるようになったよ。
━━久しぶりとはいえ、もはや毎年がツアー・サイクルではないあなたたちなら、特にナーバスになるところもなかったのではと思うのですが、やはりここまで未曾有の状況下ともなると、そういうわけにもいかなかったのですね。
本当にそういうことだよ。だってライヴを終えてから2週間後に“実は誰かが感染していました”なんて言われたって不思議じゃないからね(笑)。もちろんそんなことは起きてほしくはないけれどさ。僕らは長距離移動をするときを始め、基本的に2週間に1回は自主的に検査を受けている。それに僕らだけじゃなくてプロモーターやクルーたちもみんな検査を受けて当たり前という新しい時代になってきている。これだけの対策をみんなで講じているのだから、感染の拡大が起きていないことを祈っているよ。これは通常の生活に戻るために必要なステップだとわかっているし、そのなかで開催された最初の大切なフェスだったんだ。数千人規模のフェスだったらそこそこ開催されているけど、“Bloodstock”みたいな2万人規模ともなるとかなり大きな意味があったと思うよ。
━━「Breaking the Law」のビデオが新たにHDリマスターされて、昨今Youtubeでアップされましたね。撮影時のエピソードはありますか?
当時はああいうビデオを作るってこと自体がまったく新しいことで、ビデオの時代が到来しようとしているまさにそのときだったんだ。あのビデオを作ってくれたジュリアン・テンプルによる楽曲や歌詞の解釈をもとに作成され、“お前はここに立って、お前はあっちに……”みたいな感じで、指示されたまま“わかったよ”とひたすら従っていただけだった。どんな風に仕上がるのか僕たちは把握していなかったけど、ジュリアンのなかで思い描いているものがあるのだから、そこに任せていこうという感じだった。僕らは楽器を持って立ってはいたけれども、真剣にプレイしていたわけじゃなくただの当て振りだったんだ。それでもアレはアレで楽しみながらやれたよね。オープンカーに乗って野外を走るシーンの撮影は11月のかなり寒い日に行なわれ、凍え死ぬかと思ったよ。映像を観るとみんなの頬や鼻が赤くなっているのが確認できるはずだよ(笑)。そこも含めて楽しい思い出が詰まったビデオだね。
━━今回のボックス・セットに収録された若かりし頃の未発表音源は聴きましたか?
さすがにすべてを聴くことはできなかったけど、いくつかは聴いたよ。長年プロデューサーを務めてきてくれたトム・アロムが細心の注意を払って作業をしてくれて、彼の耳で判断してくれた内容には誰もが信頼を預けている。彼は 1979年の『Unleashed in the East』からずっと僕らと仕事をしているわけだから、このバンドに関して彼が知らなかったり興味がないと判断したりしたものには、価値がないこともわかっている。そんな彼からのお墨付きをもらった音源が収められているわけだから、そこにはクオリティがあることは確約されているよ。今回の件で僕らは持てる素材をほぼ出し切ったと思うのだけど、なぜかこういうのって、あとあとになってまた発掘されるんだよね。過去、エピタフ・ツアーですべてを振り返ったときに手元にあった音源を全部放出したのだけど、すぐに“あれ? こんなのがガレージにあったぞ!”って感じでプロデューサーやCBSの人たちが発見してくれて、世の中にけっこうな数の音源を出すことができた。今回のボックス・セットでは本当に思い当たる限り現在の自分たちが持っているすべてを出しているつもりなんだが、ひょっとしたら、まだ誰かが屋根裏とかに隠しているかもしれないな(笑)。
10月19日発売のベース・マガジン2021年11月号にもイアン・ヒルのインタビューを掲載!自身のベース・プレイや機材について、BM webとは別内容でお送りします。
その他、JIRO(GLAY)と楢﨑誠(Official髭男dism)による表紙巻頭のスペシャル対談のほか、新作『KNO WHERE』をリリースしたOKAMOTO’Sよりハマ・オカモトの特集、ベース用ペダル型プリアンプの大特集などを掲載しています。ぜひチェックしてみてください!