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    INTERVIEW − イアン・ヒル[ジューダス・プリースト]

    • Question:Gentaro Ymamoto
    • Translation:Tommy Morley
    • Photo:Shigeo Kikuchi

    子供が気に入って触れたがるものを、
    偏見を持った親が遠ざけようとする時代は終わったんだよ。

    ━━現在、ヘヴィメタルという音楽はさまざまなスタイルに枝分かれしていますが、あなたが思うヘヴィメタル・ミュージックとはどのようなものでしょうか?

     多様性に富んだ音楽だと思っている。昨今のバンドたちが作るアルバムには涙がホロッと出てしまいそうなバラードが入っていることも珍しくない。それでいてあまりにも速くてアグレッシブであるがゆえに、鳥肌が立ってゾッとするようなものもある。1980年代後半から1990年代にかけて、デスメタルやグランジメタル、スピードメタルといった具合にさまざまなスタイルのものに分岐していった。それでいてヘヴィメタルにはそれらのすべてが含まれていたのさ。ただ、速い曲、スローな曲、コマーシャルな曲の多くは昔の曲に通じるものがあって、そういったものは新しさがなくてラジオから聴こえてこなくなってしまった。80年代はメタルの全盛期だったのに、それ以降は少しずつ勢いを失っていってしまったのも否めない。だからその解決策としてある程度はコマーシャルな側面を持たないと、普遍性を失ってしまうことも覚悟しなければならないね。

    ━━現在の若いバンドであなたが個人的に一目置いているバンドはいますか?

     僕は若いバンドだって何でも聴いているけど、昔の音楽ばかり聴いてしまいがちだから保守的なところもあるかもしれない。50年前と同じ音楽を今でも聴いているって感じかな(笑)。でもフェスに行くとさまざまなバンドがいて、ステージ袖で観ることも多々あるよ。優秀で人気な若い人たちを観るとエキサイティングなものを感じるよ。ここでバンド名を1、2個だけ挙げると、名前を挙げなかった連中にフェアじゃないから気になるバンドはあえて言わないでおこうかな(笑)。

    ━━昔は“ヘヴィメタルは反抗的な若者たちが好むどうしようもない音楽”として親たちに敬遠されたこともありました。しかし今では楽器演奏を追求した芸術として認知されていて、それこそオリンピックを目指すスポーツ選手と同じような扱いがなされています。いつからこうなったとあなたは感じますか? そこにはあなたたちがやり続けてきた功績も要因としてあるのでは?

     ヘヴィメタルを80年代に聴いてきた人たちが歳を重ねて親たちの世代になったっていうのがあるだろうね。彼らの子供は音楽を聴くことをむしろ推奨されているだろうし、新しい形態の音楽にだって偏見なく接しているだろう。僕の父はジャズ・バンドでベースをプレイしていたから、クリエイティブでいることに価値を認めてくれていたよ。もうかつてのような偏見は存在していなくて、音楽だけじゃなくてすべてのことに対してリベラルな見方がなされている気がするんだ。子供が気に入って触れたがるものを、偏見を持った親が遠ざけようとする時代は終わったんだよ。

    ━━3rdの『Sin After Sin(背信の門)』(1977年)はサイモン・フィリップスがドラマーを務めました。今となっては、ジャズをルーツに持ちTOTOなどで活躍したサイモンの参加は珍しい取り合わせのように感じますが、彼とのリズム・セクションで思い出に残っていることはありますか?

     あのアルバムを作った当時の彼は二十歳になったばかりだったと思う。そんなに若くてもちょっと説明すれば最高なドラムを叩いてくれた。彼はサウンドに新たな次元を持ち込んでくれたよ。あのアルバムの「Dissident Aggressor(異端からの反撃)」は今でもお気に入りの一曲で、彼のツーバスは最初から最後まで特徴的でほかに何を叩いているのかわからないくらいだった。これが新しい次元をもたらしてくれていて、あまりにも生々しいサウンドを作り出していたんだ。プリーストの曲はたくさんあるけど、それでもいつもあの曲を思い出すし、それだけ彼は革命的なドラマーだったよ。僕らは彼にバンドに参加してくれないかと頼んだけど、彼はジャック・ブルースたちとプレイすることをすでに決めていて、僕のヒーローとプレイするならまぁいいかと思い彼を応援し、僕らはレス・ビンクスを迎えることとしたんだ。

    「Dissident Aggressor」 (Official Audio)
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