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INTERVIEW – 河西ゆりか[羊文学]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto
  • Photo:Yuki Kawashima

ベースはお腹に響いてくるのを聴く。
ドラムは体全体で聴く。

━━「キャロル」ではイントロからリフっぽいフレーズを弾いていますが、このフレーズはどのように発想したんですか?

 これはみんなで合わせたときにパッと出たフレーズです。弾き語りでデモをもらったときは、冬っぽい印象だったので、“鐘の音”をイメージしながら弾いています。

━━具体的な情景のイメージが先にあって、フレーズや音を作っているというのは興味深いです。

 そういうのばっかりです。あんまり“何Hzが〜”とかはわからないので、“鐘みたいな音”とか“マカロニみたいな音”とか言うんですけど、全然伝わらなくて困ってます(笑)。

━━今作で、ほかにそうやって音のイメージを言語化していた曲を挙げるとすると?

 「hopi」とかは、海の深いところにいる感じ。「光るとき」は海の波というイメージでした。

━━ところで、今回ベーシストとして、またはバンドとして一番苦労したというか、“ひと山超えた”みたいな達成感を感じている曲ってありますか?

 「パーティーはすぐそこ」ですかね。この曲はポップに仕上げたいっていうイメージがみんなのなかにあったんですけど、そういう感じを今まであまりやって来なかったので。ポップな要素を取り入れつつ、今までの羊文学らしさも残すみたいなテーマでしたね。でも、そういうのって演奏がかっちり合っていないと雰囲気が出なくて。なので、これはみんなで息が合うまで猛練習しましたね。音作りもけっこう難しかったです。

━━ベース・プレイで言うと、“羊文学らしさ”はどこに出ていると感じていますか?

 ポップのなかに羊文学らしさを出すっていう意味で、コードが展開してもベースだけはずっと一緒のフレーズを弾く、みたいなことをやったところですかね。

━━今作を作るうえで河西さんが影響を受けた音楽を挙げるとすると何になるでしょう?

 1個しかないですね(笑)。スーパーカーです。

━━「OOPARTS」とか、特にわかるような気がします。

 そうですね。音作りとかもう、めちゃめちゃ寄せました。スーパーカーのアルバムで言うと、やっぱ『HIGHVISION』(2002年)ですかね。

━━最後に、河西さんのプレイをお手本に楽器を練習するベーシストたちもこれを読んでいると思いますので、羊文学をコピーするうえでのアドバイスがあれば教えてもらえますか?

 そうですね……私はベースを“楽器と楽器の接着剤”的な役割だと思っているので、そういう風に捉えて弾いてみてほしいです。そうすることで何か発見もあるかもしれないですね。

━━それはつまり、“音をよく聴く”ってことですか?

 “ベースは腹で聴く”みたいなのは大事かもしれないですね(笑)。

━━その心は?(笑)

 私はベースはお腹に響いてくるのを聴いて、ドラムは体全体で聴く、みたいなリズムの取り方をしているような気がしてるんですよね。それが大事なのかなと。うまく言えないですけど……。

【お知らせ】
2022年4月19日発売のベース・マガジン2022年5月号にも河西ゆりかのインタビューを掲載! 本インタビューで触れられなかった今作の制作プロセスや使用機材などについて、BM webとは別内容でお届けしています。

また同号では、ヒトリエのイガラシとUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が表紙を飾り、全60ページにて“リード・ベース”というアプローチを掘り下げた『Special Program 鮮烈のロック・リード・ベース〜バンドを彩る旋律的低音』、King Gnuの新井和輝を試奏者に迎えた『アクティヴ・フェンダーの世界』など、さまざまな記事を掲載しています。ぜひチェックしてみてください!

◎Profile
かさい・ゆりか●1997年生まれ。高校生の頃にギターを弾き始め、のちにベースに転向、2017年1月に羊文学に加入した。羊文学は2012年結成で、繊細ながらも力強いサウンドのオルタナティブ・ロック・バンドとして人気を集める。2020年のメジャー1stアルバム『POWERS』やFUJI ROCK FESTIVAL’21でのパフォーマンスが大きな反響を呼ぶなか、4月20日にメジャー2ndアルバム『our hope』をリリース。5月からは、5大都市のZepp公演を含む全国ツアーを開催する。

◎Information
羊文学
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河西ゆりか
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『our hope』
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