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INTERVIEW − 長谷川プリティ敬祐 [go!go!vanillas]
- Interview:Tomoya Zama
- Live Photo:Taichi Nishimaki、Kazuki Watanabe
作曲者とヴォーカルに寄り添う先に見つけた
曲全体を見渡す視野と間の美学
UKロックや日本フォークなどをルーツに、多数のジャンルを巻き込んで昇華し、独自のポップ性を深化させていくgo!go!vanillas。前作の『PANDORA』から約1年9ヵ月を経てリリースされた最新アルバム『FLOWERS』はまさに彼らの原点と現在地を示す一枚に仕上がっている。本作でベーシストの長谷川プリティ敬祐 は、“作曲者が何を求めているのか”を常に意識し、曲全体を俯瞰して寄り添い引き立てる音を目指したと語る。2023年にインディーズ・デビューから10周年を迎える彼らが、約1年半の期間をかけてレコーディングした渾身の作品について、プリティの思いとプレイ、そして今後の展望を聞いた。
作曲者に対してどういうベースを提供できるかを考えて、
基礎的な部分から見直した。
━━前作『PANDORA』から1年9ヵ月ぶりの新作ですが、この間はどのような期間でしたか。
1年9ヵ月の間、止まらずにライヴができたっていうことがすごく嬉しかったし、そのなかで制作もありつつ、ベース本体やエフェクターとか機材に対するネジがハズれた期間があって、音に対する選択肢が広がりましたね。
━━前回のインタビューの際に“次はSGで、その次はリッケンバッカーを買う予定”って言っていましたよね。
そうですね。ちょうど言ったとおりに買いました。本来エフェクターもアンプ直を目指すところからのスタートのはずだったんです。例えば、僕が尊敬しているフラワーカンパニーズのグレートマエカワさんのプレイを配信で観たんですけど、“ピッキングの位置でニュアンスを変えている、カッコいい!”って思って、そういうことができるようにアンプ直を目指していたはずなんですけど……ボードもデカくなっちゃいましたね(笑)。機材とかそういったほうに目を向けて、自分が出したい音っていうよりは、レコーディングやライヴをしていくなかで、全体を通して作曲者の求める硬さだったりニュアンスを考えるようにもなりました。だからボードとかは今年9月の大阪城ホール、日本武道館でのライヴから変わっていますね。
━━去年はまだコロナの影響でライヴの中止や延期がありましたが、プリティさんとしてはいかがでしたか?
ライヴができないっていう苦しみも当然ありつつ、牧(達弥/vo,g)と(柳沢)進太郎(g)のふたりは作曲に力を入れる期間にもなって。僕は曲を作る側の人間ではないので、自分のスキルを上げるためにいろんなことを考えた期間でしたね。先ほどの機材もそうですし、作曲者に対してどういうベースを提供できるかっていうのを考えていました。今までとはちょっと違う弾き方にしたり、単純なところで言うとピックを入れる角度とか、もう本当に細かい基礎的なところからしっかり見直しましたね。
━━初の映像作品のリリースや初のアリーナ・ツアーなど、バンドとして新たな挑戦もした期間だったと思います。
そうですね。そういう挑戦をしていこうみたいな機運がコロナ禍のはじめからバンド内であったんですよ。『ドントストップザミュージック』っていう4人の音を重ねていく曲を配信のみでやっていて、会えてはいないけど、家から出られないけど、音楽は止めないっていうのをもう最初の段階から決意を固めていましたし、バンドとしてもバニラズっていうチームとしても、止めたくないよねっていう思いがありました。
━━特に2年ぶりに開催した武道館公演は満員というのもあって、見える景色はかなり違いましたか?
もう全然違いましたね。まわりの先輩方からとか本で、“最初の武道館は特別なもので、それを超えるのは相当難しいものがある“みたいな話を見聞きしていたんです。でも僕は“いや、超えたよ”って思いましたね。1回目は本当に自分たちのフル・パワーっていうかもうがむしゃらで、気合いがもうパンパンに充満していたんです。でも、2回目は逆に自然体で落ち着いていて、いつもの自分たちをどう見せるかっていうことを考えたりしましたね。もちろん気合いはしっかり持っているうえで、いかに自分たちの好きなものをナチュラルに音に落とし込んで届けるのかっていうのと、ファンのみんなに武道館だからと言って変に気張らずに聴いてほしい、観てほしいって考えていました。自分たちはステージとかビジョンも本当に好きな場所、落ち着くところを作り出せたのかなって思っていて、その曲ごとにしっかり合う心持ちで、それ以外のことにも視野を広げながら演奏をできたのは大きかったと思います。
━━今回のアルバムは制作期間としてはどれぐらいでしたか?
「LIFE IS BEAUTIFUL」を録ったのが2021年の8月くらいなので、全体としては約1年と少しくらいですね。
━━前作では、自分と向き合い結果的に“無償の愛”というテーマも自然にできたと聞いたのですが、今作では方向性や取り組みの違いはありましたか?
違いはそこまでないですね。でも、実際にスタジオに入ることが増えました。前作でまったくスタジオに入っていなかったわけではないんですけど、単純に回数としては増えましたね。今回はゲスト・プレイヤーの(井上)惇志(showmore/p)くんも一緒に入って、直接言葉を交わすことで自分の音に新たな発見があったり、メンバーからの指摘でここはこうしてみようとか、そういう作り方が増えたと思います。スタジオに入ることの大切さを再認識しましたね。
━━制作自体はどのように進んでいったのでしょうか?
牧とかからデモをもらって自分がベースをつけることもあれば、デモの段階でわりと形作られているものが渡されたり、惇志くんと一緒にスタジオに入ってデモをもらったりとかもしましたね。例えば「Two of Us feat. 林萌々子(Hump Back)」とかは、惇志くんがベースの音っぽいエフェクトでデモを作ってきてくれていて、基本的にはそれに沿いつつも自分なりに変えてみたりしました。惇志くん、手島宏夢さん(fiddle)、ファンファンさん(trumpet)の御三方に入っていただいたことで、よりこの曲を、このバンドを好きになってほしいっていうマインドが強くなったので、それはかなり大きかったと思います。