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    【BM web版】歪みベーシストという生き方①━━松本駿介[Cö shu Nie]

    • Interview:Kengo Nakamura

    歪みサウンドって、特筆するものというよりは
    “カッコいい人たちって、みんな歪ませてるよね?”というイメージ。

    ━━11月にリリースされる新作『LITMUS』でも、1曲目「FLARE」から歪ませまくってますね。しかもラインが細かい。かなり歪んでいるのにちゃんとラインが見える音作りになっているのがお見事です。

     ありがとうございます。レコーディングでは、先ほども言ったように、基本的にラインの音とアンプの音を混ぜるというのを大前提でやっているので、意外と歪ませるチャンネルの音は過激にセッティングできるんですよね。OCDもダークグラスも踏みっぱなしでギャリギャリにしているからこそ、ラインの音を混ぜたときにうまく聴こえてくるんだと思います。あとはやっぱり、銀パネのアンペグを使っていて、そのパワーがデカいかな。

    「FLARE」MV

    ━━「ずっとそばに」は細かいフレージングのスラップで、金属的な激歪みサウンドですね。

     伝わってよかった〜。あれ、スラップって気づいてもらえるかなって思っていたんです(笑)。この曲は「FLARE」を除いたら一番ゴリゴリに歪ませたかもしれません。でも、使っている機材的には全部一緒なんですよ。ダークグラスとOCDとアンペグのアンプなので。実は、そんなにエフェクターとかを試したりするタイプでもなくて。

    ━━そうなんですね。同じ機材を使っているにしても、サウンドにはかなり幅がありますね。

     はい。「ずっとそばに」はイントロ、Aメロ、サビで全部歪ませ方を分けてやっていますが、OCDとダークグラスでかなり音が作り込めるんです。特にダークグラスは、ローに寄せたりハイに寄せたりっていう細かい設定がめちゃくちゃできるんで、そこがかなり大きいかな。ミニ・スイッチもレコーディングではめちゃくちゃ使いますしね。

    ━━「黒い砂」はあまり歪んでいないように聴こえますが、これはほかのパートとの関係性で、ベース単体の音は歪んでいたり?

     OCDは踏んでいないけど、ダークグラスの歪みは入っていますね。

    ━━逆に、どクリーンな音だとアンサンブルから浮いてしまうとか?

     「黒い砂」に関しては、そうでした。どクリーンでカッコいいベーシストもたくさんいますが、自分が今目指すプレイの歪みサウンドって、特筆するものというよりは“カッコいい人たちって、みんな歪ませてるよね?”というイメージですね。気持ちいいベース・ラインは基本的に歪みが付いて回っていて、どこかしらで生音に聴かせるような歪みが隠されているんじゃないかなっていうのは、常に思います。まぁ、Cö shu Nieは過剰ですけど。

    ━━ライヴとレコーディングでは歪みに対する意識が違うとのことでしたが、ライヴでの歪みについてはどう考えていますか?

     ライヴって会場によっても音が変わってくるから難しいですよね。最初は、あんまり歪ませたらローがなくなっちゃうから難しいかなと思って、ちょとずつちょっとずつ歪みをかけていたりしたんですけど、消極的な方法でかけても反映されないし、音が前に飛んでいかないイメージがあって。最近は、もうライヴでもガッツリと歪みをかけています。そのほうがしっかりとラインも出るし、ローも、右手でパワーを込めて弾いたら鳴ってくれるから、意外と過激なセッティングでもアリなのかなって。

    ━━弾き方でちゃんと芯のある音を出せていれば、それが出ていくと。

     そうですね。もちろん、だからってハイをゴリゴリに上げたらとっ散らかっちゃうんですけど。

    ━━そのほかに演奏上で心がけていることはありますか?

     カッコいい音を出せているっていうのが前提で、俯瞰で、余裕を持ってまわりの音を感じられるようにしています。ちゃんと自分が真ん中にいないといけないっていうのを意識して。あとは左手。左手のストップ&ゴーで輪郭を出さないと、どうしてもボヤけてフレーズが見えにくいかなっていうのはあるので。

    ━━“歪みサウンド”という点で、自身の作品のなかで象徴となる楽曲というと?

     「絶体絶命」ですね。イントロからギャリギャリに歪ませていますし、サビでも細かく動くラインになっているのに“歪み”でうまくまわりと協調しつつラインが聴こえる、良い音作りができたなと思います。自分というベーシストがわかりやすく表現されている曲ですね。

    「絶体絶命」MV

    ━━松本さんにとって“うまい歪み”とはどんなものでしょうか?

     2パターンあると思うんです。ディストーションとかファズを使ったときには、完全に聴いている人をハッとさせるというか、歪みをかけた瞬間に異次元に連れて行ける、世界観が変わったなって思わせられたら成功だなと思っています。一方、オーバードライブとかのベースの生音にかけていくようなものは、ドライブ感がしっかりと出て、バンドを引っ張って行ける存在感が大事で。アンサンブルに馴染みつつもしっかり聴こえるような存在感が出せたら成功かなって思いますね。そういう意味で、オーバードライブのドライブ感で言えば「絶体絶命」とかではうまく表現できたと思いますし、ファズとかは「inertia」の間奏では成功したなって思います。

    ━━最後に、歪みサウンドの醍醐味とは?

     やっぱりベースが主人公になれるっていうところがかなり大きいかなと思います。バンド・サウンドなら特に、自分が引っ張っていくっていう使命感も感じられるし、責任感も出る。カッコいい音になるからこそ自信を持って弾けるんです。バンド・サウンドのタイプにもよりますが、Cö shu Nieの場合は、ベース・ヒーロー的な役割を担っていると思っています。

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