PLAYER
“ギターロック・バンドがやったヒップホップ”というイメージですね。
――「SYUUU」は初期のベボベを思い出す、らしさ溢れる爽やかな一曲ですね。なんとなくエモーショナルな気持ちになりました(笑)。
うん、そうですよね。私もそう思っています。いわゆる、“ザBase Ball Bear”って感じの曲に仕上がったと思います。
――聴くだけでオール・ダウン・ピッキングのニュアンスが伝わってきます。これが関根さんのベース・プレイの真骨頂でもありますよね。
そのとおりで、この曲はオール・ダウン・ピッキングで弾いています。そういうふうに言ってもらえて嬉しいです。やっぱり“ダウン・ピッキング”が自分のルーツであり、影響を受けた部分でもあって、やっと自分でも自信を持ってできるようになったと感じているので、いいプレイができたなって思います。
――「A HAPPY NEW YEAR」は今作では唯一の関根さんヴォーカルの曲ですね。
私がヴォーカルの曲は随分久しぶりでしたね。歌うことに関しては自信ないんですけど、でも一枚のアルバムのなかで、メイン・ヴォーカルじゃない人が歌う曲があってもいいと思うし、ある意味いい差し色になると思うので拙いなりに一生懸命歌いました。
――関根さんがメイン・ヴォーカルを担当するというのはどういったタイミングで決まるんですか?
いろんなパターンがありますけど、この曲に関しては最初に小出から、“この曲は関根がメイン・ヴォーカルの曲にするから”って言われたんですよ。だから私が歌うことを想定したうえでできた曲だと思います。
――ご自身がメインで歌う際は、ベース・ラインもそれを踏まえて作成するんですか?
やっぱり最低限、歌いながら弾けるラインにはしますよ。この曲はシンプルな8ビートなので、そのまま曲に寄り添う形でベース・ラインもシンプルにしています。前にレゲエ調の曲(「LOVE SICK」)でメインで歌うことがあったんですけど、そのときは本当に大変でした……。ベースに気をとられて、歌うことは半分ぐらいしか考えられませんでしたから。だからベース・ヴォーカルの人たちって大変だなぁと改めて思います。
――「悪い夏」はアタマのソロなど、ベース・サウンドが今作のなかで一番強烈ですね。文字どおり“ワルさ”を演出したような音になっています(笑)。
これはボスのDS-1を踏んでいます。バンドとしてちょっと変な曲にしたいっていう意図があったので、ベースの音もワルい感じにして特徴を出そうと思って音作りしました。この曲はドラムとベースから曲が膨らんでいった曲で、Aメロまでドラムのリズムとベースのリフで土台を作りつつ、小出にこんなのどうって提案してそこから発展させていったんです。
――そういった曲作りの仕方もするんですね。
前回の『C3』ではわりとこういった流れで曲を作ることが多くて、8小節ぐらいのリズムのネタを渡して、そこから膨らませていくケースもありましたね。ただこの曲に関しては結構変わったリフなので、これが曲になるとは思ってなかったんですけどね。
――「生活PRISM feat.valknee」はゲストにvalkneeさんを迎え、ヒップホップを生バンドで表現した一曲になっていますね。
本当のヒップホップとは違うけど、“ギターロック・バンドがやったヒップホップ”というイメージですね。小出がちょっと前からvalkneeさんに注目してたようで、ある日スタジオにvalkneeさんを連れてきたんです。ラップのリズムもいいし、リリックのキーワードもおもしろくて、そういったものがヒントになって私自身も楽しくベースが弾けました。
――結果としてどんなベース・プレイ/楽曲になったと実感していますか?
ファンキーでありつつ、ノリ的な意味では今作で一番ベースの弾きがいのある曲になったと思います。だから私の思うヒップホップを再現しつつ、ちゃんと私たちらしいギター・ロック感も残っていて、いい仕上がりになったと思います。
――ベース的には小節の終わりに細かいフィルを入れ込んでいますね。それも各フィルごとにフレーズを微妙に変えていたりと芸が細かいです。
ありがとうございます。この曲に関してはほとんど歌詞もでき上がった状態でプリプロを進めていたので、歌詞やギター・フレーズに引っ張られるようなベースが弾けたと思っています。それこそバンド・マジックであり、ゲスト・マジックですかね。だから細く計算していったというよりは自然と出てきたフレーズで、ここ近年そういったプレイができるようになった自覚があるんです。
――20周年を超えてもなお進化し続けているということですね。
そうですね。進化し続けているし、進化していかなきゃなって自分自身でも思っています。
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