PLAYER
3ピースは3ピースで楽しいなって
多分3人ともに思っている。
2021年にバンド結成20周年を迎えたBase Ball Bearが、最新作となる9thアルバム『DIARY KEY』をリリースした。初期のバンド像を思い起こさせる爽快なギターロック・ナンバーから、ファンク、ヒップホップといった多彩なサウンドを網羅する今作において、ベーシスト関根史織のプレイはさらに磨きがかかり、圧巻のバンド・アンサンブルを楽しむことができる。20周年という節目に発表した本作に関根はどのような思い、そしてベース・プレイを込めたのか、これまでのBase Ball Bearの歩みとともにじっくり話を聞いた。
何より“バンドがやりたい”っていう純粋な気持ちが一番にある。
――Base Ball Bear(以下略称、ベボベ)バンド結成20周年おめでとうございます。まず20周年を迎えた率直な心境を教えてもらえますか?
ありがとうございます。“20年やるってすごいことだね”っていろんな人から言ってもらえるので、やっぱり20年バンドが続くっていうのは奇跡みたいなことなんだなって実感しています。でも個人的には現在進行形で音楽や楽器、そしてバンドに飽きずにやれているので、そこが一番良かったなって思っています。
――2016年にはメンバー脱退からの3ピース体制での再スタートなど、歴史を振り返ると明確な転換期もあったかと思います。
3人体制になってからしばらくはサポート・ギタリストに入ってもらって、いろんな人と演奏させてもらったんですけど、今思うとすごく貴重な経験だったと思います。それを経て今は3人だけでやっていこうっていう時期なんですけど、新鮮な気持ちで曲に取り組めているので、それはそれでやりがいがあって楽しんでやれていますね。2016年の転換期をバンドとして乗り越えられたのは大きいことだと思っています。
――そういったことがありつつも、ここまで一度も活動を止めずに続けられている秘訣とは?
うーん……どんなバンドも何かしらの苦労があったり、問題があったり、揉めごとが起きたりすると思うんですけど、私たちはみんな何より“バンドがやりたい”っていう純粋な気持ちが一番にあるので、そういう苦難があったとして、みんなで修復しようとするエネルギーがウチのバンドにはあるんだと思います。
――そんななか、今作『DIARY KEY』には特別な思いも込められているのでしょうか?
正直、20周年だからこれを作ったのではなくて、たまたまできたタイミングが今だったんです。結果的にすごく良かったなと思うんですけど、コロナでライヴがとんだり、スタジオに集まることができない時期があったりして、久しぶりに制作を始めるタイミングでみんなでスタジオに入ったとき、ベタな言い方なんですけど、すごく楽しかったんですよね。
――バンドをやる楽しさを改めて実感したと。
はい。何かこう、大きい音でみんなでジャーンって演奏することがすごく楽しかったので、そういう気持ちがすごく強く表現されたアルバムかなって思います。コロナがあってよかったとは決して思わないですけど、結果的にはそれがあったからこそ生まれた要素もある作品かもしれませんね。
――今作は一曲目「DIARY KEY」でのインパクト大の強烈なベース・ソロから始まりますね。
小出(祐介/vo,g)から、“アルバムの一曲目はベースとドラムから始まる曲したい”と言われたこともあって、3ピースとしてのアンサンブルを醍醐味にした曲になりましたね。ベースとドラムから始まって、あとからギターが乗ってくる組み立てになったので、“じゃあベースはカッコいい音から始めないとな”って、自分がカッコいいと思う音で曲をスタートさせました。
――プレベ特有のいなたさに歪みを足したサウンドですね。音作りはどのように?
フェンダーのプレベにEarthQuaker DevicesのWestwood(オーバードライブ)をかけて音作りしました。最近このペダルがお気に入りなんです。
――サビでは一転してハイ・ポジションでルートを弾くことで、楽曲全体にメリハリが出ていますよね。
サビのアタマのコードがE♭ということもあって、Eが使えないため結果的に高いところから始まったというのはあります。前作だと3ピースになったことで、音数の少なさを埋めようと一生懸命になり過ぎて、そこに意識をとらわれてしまったんですけど、今作はそこにとらわれず、“3人で音を出せばいいじゃん”っていうシンプルな意識で、ルート弾きすることにも抵抗なくプレイできました。だから今作はわりとそういうプレイの曲が多くなったなっていうイメージもあるんです。
――「動くベロ」は、カッティング・ギター一本と4つ打ちのドラムというシンプルな構成のなかで、オモテとウラの隙間を狙ったようなフレーズが楽曲の鍵になっているように感じます。これも3ピースの醍醐味のひとつだなと思いました。
そうですね。この曲は特にシンプルな構成になっていて、しっかりライヴで再現できることを考えつつ、最低限の音で曲を組み立てていったんです。ベースに関してはオモテとウラがちぐはぐになるような、合わせすぎないようなフレーズにしています。
――この曲は指で弾いてますよね?
はい。前作や前々作は指弾きがすごく多かったんですけど、そこで培った指弾きの自信というか、そういうものがここで出たかなと思います。
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