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BADASS ROOKIE〜BMイチ押しのNEWCOMER〜 – 田中慧[yonawo]

  • Interview:Shutaro Tsujimoto

不織布マスクをブリッジ側の弦に巻き付けて弾きました。

――「tonight」は基本的にドラムが同じリズムを繰り返し刻むなか、ベースはそれに寄り添いながらも少しずつフレーズに変化を持たせ、メロディアスに聴かせています。どんなプレイを狙いましたか?

 “シンプルなドラムの上でいかにしれっと遊べるか”みたいなことは頭の隅にあった気がします。

「tonight」(Official Audio)

――また「tonight」は全篇英語詞の楽曲ですが、日本語詞と英語詞の曲で、楽曲の持つリズムのグルーヴなどに違いを感じますか?

 日本語詞の曲に比べると英語詞の曲はより一層リズムの要素が重視される気がしています。ベースのアプローチに変化があるかは自覚はないですが、ノリで弾いちゃおうみたいなマインドはあるかもです。

――「日照雨」ではシンセ・ベースをプレイしていますが、シンベを使おうという判断はどこから来ることが多いですか?

 曲の雰囲気を見て決めてます。あとは荒谷が作るデモの段階ですでにシンセ・ベースが入っている曲などはそのままいくことが多いです。

「日照雨」(Official Audio)

――「ダンス」ではエレキ・ベースでありながら、サブ・ロー成分も感じるような、深い低音を鳴らしています。この曲のように打ち込み的なビートが楽曲の土台にあるとき、ベースを載せる際に意識することはありますか?

 この曲はドラムのずっしりとしたグルーヴ感で楽曲をリードするイメージで演奏しました。なるべく有機的に絡み合うよう、いつもより気を引き締めてプレイするようにしています。

「ダンス」(Official Audio)

――「sunset」や「hanasanai」では、パーム・ミュートをした親指弾きをしていますか?

 「sunset」では全篇に渡って不織布マスクをブリッジ側の弦に巻き付けて弾きました。1番Aメロ部分には、親指でピッキングして演奏している部分もありますね。

「sunset」(Official Audio)

――今作のレコーディングでは、どのようなベースを使いましたか?

 「tokyo feat. 鈴木真海子, Skaai」、「After Party」、「yugi」、「sunset」、「hanasanai」、「tonight」ではアトリエZ製のBabyZ、「ダンス」ではフェンダージャパンのプレベ、「Lonely」、「涙もがれ」、「Yesterday」では1972年製のフェンダー・ジャズ・ベースとプリアンプにUniversal Audio製LA-610 MkIIを使用しました。ジャズ・ベースはnever young beachの巽(啓伍)さんにお借りしたものです。

――アンプに関してはどうですか?

「hanasanai」、「tonight」ではリアンプをした際にアンペグのMICRO-VRを使いました。すべての曲で、ラインではAcme Audio Motown D.I. WB-3(DI)を使っています。

――ライヴなどでメインで使用しているのはプレシジョン・ベースですか?

 はい。これはレーベルの担当に借りているものなんです。当時自分が使っていたベースがスクワイヤーのBronco Bassだったんですけど、もう少しベースらしい重厚感がバンドに必要になり、急遽借りまして。それをそのまま今日まで使用しています。

田中がライヴでのメイン器として使用するフェンダージャパン製のプレシジョン・ベース。今作のレコーディングでは「ダンス」で使用された。

――いわゆる“プレベらしい音”から、ミュート感のある暖かみのあるトーン、ウルトラ・ロー的な低音など、アルバムを通してベースの音作りが多彩だった点がすごく聴きごたえがありました。このあたりは、ミックスを担当した阿南智史さん(編注:never young beachの元ギタリスト)のアイディアも大きいのでしょうか。

 プレベらしい音に関しては、自分がプレベのトーンをかなり絞った“モワッとした音”が好みなのもありますけど、ウルトラ・ローなどの深い低音のアプローチは斉藤や阿南さんの手腕によるものだと思います。今回の制作では、阿南さんや斉藤と一緒にベースのフレーズを考えたりもしたし、自分の引き出しにないようなフレーズに挑戦できたことも良かったです。ベーシストとしての表現の幅が広げられたかなと思います。

――その分、苦労した点もあったんじゃないですか?

 動きの多いメロディアスなフレーズを弾くことがわりと多くて、そういうプレイはあまり得意ではなかったので少し苦労しましたね。パソコンと睨めっこしながら繰り返し練習しました(笑)。

――さて、最後に今後の目標を教えてください。

 ありがたいことにフジロックとサマーソニックには出演することができたので、次はライジングサンに出たいですね。

MY ROOTS ALBUMS

『AM
アークティック・モンキーズ

上に挙げたニックの魅力が満載なアルバムだと思います。

『Dummy』
ポーティスヘッド

自分がブリストル・サウンドが好きになるきっかけになった1枚です。

『Champagne People』
ベニー・シングス

19歳のときに働いていた洋食屋でよく流していました。ちょっとチープなポップさがたまらないです。

Profile
たなか・さとし●yonawoのベーシスト。yonawoは2017年に田中、荒谷翔大(vo)斉藤雄哉(g)、野元喬文(d)の4人組として福岡で結成。田中はバンド結成とともにベースを始めた。“寝る前に聴きたいベッドタイムサウンド”を特徴にバンドは結成から間もなく支持を集め、2019年11月にAtlantic Japanよりメジャー・デビューを果たす。その後、2020年4月には初の全国流通盤となるミニ・アルバム『LOBSTER』を、同年11月には1stフル・アルバム『明日は当然来ないでしょ』を発表、全国5都市で開催された初のワンマン・ツアーは全公演ソールドアウトとなった。2021年8月には亀田誠治、冨田恵一(冨田ラボ)によるプロデュース曲を収録した2ndフル・アルバム『遙かいま』をドロップ。直後に出演したFUJI ROCK FESTIVAL‘21や、翌年のSUMMER SONIC 2022など全国各地のフェスにも多数出演を果たす。2022年11月9日に3rdフル・アルバム『Yonawo House』をリリースした。
◎Information
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田中慧:Twitter Instagram