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BADASS ROOKIE〜BMイチ押しのNEWCOMER〜 – りょうと[ヤングスキニー]
- Photo(Live):Subaru Uemura
- Interview:Shutaro Tsujimoto
「本当はね、」は歌詞から“焦り”を感じたので、倍テンにしてウォーキング・ベースにしました。
━━ここからはプレイについて聞いていきます。「ヒモと愛」は2番Aメロから歌メロの合間でオブリが入り、2番Bメロからはスラップも登場するなど、ベース・アプローチが変化していくのが印象的です。ここにはどういう意図がありましたか?
この曲の歌詞は基本的に男性側の目線で書かれているのですが、2番では女性の気持ちがうかがえる“「なら今は私が食べさせてあげるからね」”という歌詞が入っています。この“からね”の部分から女性の期待と不安を感じました。自分のことしか考えていない男性と将来のことを考えてる女性の気持ちの差やぎこちなさをフレーズに落とし込もうと思い、オブリやスラップのフレーズを入れました。
━━ギター・ソロでは、ギターを支えつつも、途中でギターとユニゾンになるアイディアがユニークだと思いました。
ここはゴンザレスとギター・ソロにするかベース・ソロにするかを話した結果、ふたりとも動くフレーズにしてみようとなり、最初は別々で、途中ユニゾンをして2本のひもが絡み合ってまた解けていくようなイメージで作りました。
━━「好きじゃないよ」で、ベースは最初は音を切らずに大きいリズムで入り、間奏後はキックに合わせた休符を強調したフレーズ、Cメロからはより細かく刻んだリズムになっていますが、まわりの楽器との兼ね合いを意識してのプレイでしょうか?
そうですね。ベースとドラムが入る前はキーボードが白玉で大きくリズムを取っていますが、ベースとドラムが入ってからはキーボードも刻んだリズムを取っています。ここでベースも刻むと急な変化が出てしまうため、曲を通して徐々に、自然に感情が盛り上がっていくよう、ベースはCメロから8分でリズムを刻むアプローチをしました。
━━バラード曲だからこそ意識したこと、難しかったことなどはありますか?
「好きじゃないよ」は王道バラードで、ベースは目立つフレーズではなく、支えるフレーズを意識しました。難しかったのは、その“支えるフレーズ”でいかに抑揚をつけるかや、どのようにグルーヴを出すか。ドラムのしおんと楽曲への理解や認識を深めることで、ノリやフレージングをより良いものにしようと試みました。
━━「本当はね、」はAメロのベース・フレーズがすごくポップで、一度聴いたら覚えてしまいますね。
このフレーズはスピッツの「愛のことば」を参考にしました。最初は何もフレーズが思い浮かばなかったのですが「愛のことば」をたまたま聴いたときに、このパターンが合うんじゃないかなと思って。試してみたところハマったので、そこに細かいフレーズを入れて作りました。
━━サビ前でウォーキング・ベースが出てくるアイディアはどのように得ましたか?
作った当時、何かしらの曲にウォーキングを入れたいなと考えていて。「本当はね、」は歌詞から“焦り”を感じたので、倍テンにしてウォーキング・ベースにしました。曲の展開としてもリズム体が倍テンになることで、わかりやすく変化をつけることができたと思います。
━━「コインランドリー」のような静かにグルーヴするタイプの曲では、プレイするうえで何を意識しましたか?
この曲はドラムとのグルーヴを出すのがとても難しく、とにかく苦戦しました……。後ノリでハネることを意識していますが、ハネるベースが苦手なことを痛感したので、これは今後の課題ですね。
━━この曲ではベース・ソロも登場しますね。
この曲は何度もアレンジが変わっているんですけど、当初のキーボードが入る前のギターが中心のアレンジではこの部分はギター・ソロだったんです。そこからアレンジャーさんが入り、キーボード主体のチルな雰囲気に曲調が大きく変わったことで、“ベース・ソロのほうが合っている”と満場一致になりまして。フレーズは僕が教わっているベーシストさんにチルでジャジィなフレーズの作り方を教えてもらい、相談しながら作りました。
━━「夜のままで」はベースの位相が右に振ってあるのがおもしろかったです。フレーズに関してはスライドのニュアンスが前に出ているのも印象的です。
ウワモノのフレーズがキラキラしていて音数が少ない分、ベースでウワモノを邪魔せずいかに音圧を出すかを意識しました。スライドを使って伸びのある揺れるフレーズを作ることで、音圧の問題も解決できました。
━━今回ベースに関して難産だった曲を挙げるとすると?
「本当はね、」「夜のままで」「コインランドリー」です。「本当はね、」は最初まったくフレーズが思い浮かばず、メンバー全員で曲のイメージが定まらず悩んでいたこともありました。そのなかでスピッツの「愛のことば」、マカロニえんぴつの「ブルーベリー・ナイツ」などからインスピレーションを受けたことが打開につながりました。
━━「夜のままで」「コインランドリー」で難しかった点は?
「夜のままで」もベース・フレーズがなかなか思い浮かばず、作ったフレーズもレコーディング当日にメンバーに却下されたため、時間がないなかでフレーズを絞り出しました。「コインランドリー」はデモ段階から二転三転したり、チル系の曲を聴いてこなかったこともあり着想が湧かず、かなり悩み、ソロの部分も難航しました。その分いろいろなフレーズを試して、勉強になることも多かったです。
━━今作の制作を通して、ベーシストとしてどんなところが成長したと思いますか?
前作の2ndミニ・アルバム(『演じるくらいなら、ありのままでいいけどね』)と比べてもジャンルがさまざまなので、いろんなアンプやベースを使うことで各楽曲に合う音作りをするよう工夫しました。その際、自分がイメージしていた音に対して、楽曲の雰囲気やほかの楽器との兼ね合いで“歪ませたほうが合っている”とエンジニアさんに言ってもらったり、自分にはなかった知識や発想を教えてもらい、ベーシストとしての引き出しが増えたことが成長した部分だと思います!
━━今後の目標を教えてください。
ベーシストとして、曲調に惑わされず自分なりのフレーズを作れるようにいろいろな楽曲に触れたり、グルーヴをもっと出せるよう、ドラムとふたりでノリを合わせる練習をしていきたいです。また音楽理論を勉強して楽曲に対してより良いアプローチをできるようにしていきたいです。
MY ROOTS ALBUMS
『orbital period』
BUMP OF CHICKEN
このアルバムの最初の3曲は、電子音が裏で鳴っていてとてもおもしろいアルバムだなと思います。BUMP OF CHICKENは小学校5年生の頃から聴いていて僕のルーツになっているのですが、特にこのアルバムの曲をよく聴いています。
『シンクロニシティーン』
相対性理論
相対性理論の独創的な世界観が好きで、その世界観を作り出しているのは存在感のあるベースだと思っています。それに憧れて、ヤングスキニーの楽曲でベース・ラインを考えるときにも意識しています。特に「ミス・パラレルワールド」「ペペロンチーノ・キャンディ」のベース・ラインには影響を受けています。
『DocumentaLy』
サカナクション
草刈さんが演奏するキャッチーで踊れるベース・ラインは自分には到底真似できないし、サカナクションにマッチしていて好きです。特に「アイデンティティ」のAメロのベース・ラインには、こんなフレーズがあるんだと衝撃を受けました。
◎Profile
りょうと●2001年7月2日生まれ、東京都出身。友人の薦めで中学3年生からベースを弾き始める。2020年9月、TikTokやYouTubeでシンガー・ソングライターとして活動していたかやゆー(vo,g)が中心となり結成したヤングスキニーに加入し、2021年5月に1stミニ・アルバム『嘘だらけの日常の中で』、同年12月に2ndミニ・アルバム『演じるくらいなら、ありのままでいいけどね』を発表。2022年10月にリリースした2ndシングル「本当はね、」がSNSで拡散され、YouTubeの再生回数は公開から3ヵ月で700万回を突破するなど10代を中心に大きな反響を呼んだ。2023年2月に配信シングル「らしく」でSPEEDSTAR RECORDSよりメジャー・デビュー。3月15日に1stフル・アルバム『歌にしてしまえば、どんなことでも許されると思っていた』をリリースした。
◎Information
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