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【BASS GEEK College】ベース愛好家のための新感覚オンライン・コミュニティの正体とは?
- Interview:Koji Kano (Bass Magazine)
- Photo:Takashi Hoshino
TRI4THをはじめとした多くのプロジェクトで活躍するベーシスト関谷友貴。そして国内外に5店舗を構えるベーシストお馴染みのベース専門店Geek IN Box代表の嵯峨駿介。
両者がタッグを組んだまったく新しいオンライン・コミュニティがBASS GEEK Collegeであり、その名のとおり“ベースギーク”へ向け、ベースにまつわる知識/技術など、ベースを深く掘り下げるコンテンツ配信を主軸としたサービスである。今回は両氏の対談を通し、BASS GEEK Collegeの実態を明らかにするとともに、その本質に迫っていきたい。
僕たちみたいなBASS GEEKたちが
満足する動画を作る条件が整った。(嵯峨)
——おふたりの出会いから教えてもらえますか?
関谷 最初はGeek IN BoxのYouTubeを観て興味が湧いて、一般のお客さんとして通販で機材を購入しました。以降ちょくちょく利用させてもらっていたんだけど、横浜に仕事で行った際、ついでにフラっとお店に遊びに行きまして。嵯峨くんを見たとき“YouTubeの人だ!”って感動した記憶があります。
嵯峨 関谷さんのことはもちろんずっと知っていましたし、お店をご贔屓にしていただいて本当にありがたいです。

——では、BASS GEEK Collegeを始動したきっかけを教えていただけますか?
嵯峨 僕はもともとレッスン事業に興味があったんです。レッスンって、ベース人口を増やすことにつながりますし、良い意味でも悪い意味でも先生が生徒に及ぼす影響力ってすごく大きいんですよね。でもそうした部分は今までに僕がアプローチできていませんでした。いつかはレッスン事業をやりたいと思っていたんだけど、僕自身がレッスンできるわけじゃない。ベース・ショップを経営するのとはわけが違うんですよね。なのでレッスン事業のアイディアは何年も保留にしていたんですけど、ある日関谷さんと呑んでいたとき、関谷さんから“レッスン生を多く抱えていて、時間が足りない”という話を聞きまして。そこで僕が“自分の時間に何かで掛け算をして、より多くの人に影響を与えられる形にしても良いのでは?”と話をしたんです。
関谷 僕はバークリー音楽大学に留学して音楽を学び、帰国してプロ活動を始めたんですけど、ベースを弾いたり作曲したりすることと同時に、僕の活動の軸には絶対的にレッスンが存在していました。そして30歳の頃から尚美ミュージックカレッジ専門学校で講師を勤めた経験や、教則本(『3年後、確実にジャズ・ベースが弾ける練習法』)を執筆した経験のおかげでレッスンについてより大きな経験値が得られたと感じていて。だから次のステップ、例えば動画で教則コンテンツを作りたいと思っていたんだけど、個人レッスンもあってなかなか踏み切れなかったんです。
ベース・マガジン×BASS GEEK College
▼ コラボ記念動画も公開!▼
嵯峨 そういう話を聞いて、“オンラインでベース・レッスンを本気でやってみたらどうですか?”と提案させていただいたんですよね。
関谷 そうそう。それで嵯峨くんに“僕のコンテンツをGeek IN Boxで販売できたりする?”とおうかがいしたのがBASS GEEK Collegeのきっかけです。嵯峨くんもレッスン事業のアイディアを持っていたので、一緒に何かできないかなって。
嵯峨 話しているうちに気分が乗ってきて“せっかくだからただのレッスン動画ではなく、もっと総合的なベースのオンライン・サービスにしましょう”と大風呂敷を広げてしまってですね。でもそれがBASS GEEK Collegeにつながりました。
——Geek IN Boxや関谷さん個人のYouTubeチャンネルもありますよね? そことはどういった違いを出しているのでしょうか?
関谷 機材についての動画は僕のYouTubeで無料で公開していますけど、それは僕自身の宣伝を兼ねた趣味的な内容なんです。でもレッスンについての動画は生徒さんのためにも無料にするべきではないと思って、作っていないんです。でも、嵯峨くんと話すなかで、有料サービスだったらレッスンの価値は担保されるし、生徒さんたちにも失礼じゃないなと思えました。レッスンは絶対にプロとしてやりたいと思っていたから、その思いを汲み取って同じ方向を向いて歩んでくれる人が嵯峨くんだったんです。
嵯峨 僕個人的にはもっとマニアックな動画を作りたいとずっと思っていたんです。でもマニアックな動画って数字が出ないので収益性が低くて、かといって事業のプロモーションにもならないからYouTubeでやるのは厳しいんですよね。それがBASS GEEK Collegeのようにお金を払ってくれるユーザーがいると可能なんです。しかも関谷さんが一緒に作ってくれる。僕たちみたいなBASS GEEKたちが満足する動画を作る条件が整ったなと思いました。“違い”という意味では、YouTubeはマス向け、BGCは“BASS GEEK向け”ということになります(笑)。
——BASS GEEK Collegeは一般的なオンライン・レッスンではないということですが、どのような点がほかのサービスと異なるのでしょうか?
関谷 まずレッスンの内容について触れると、テクニックや理論それ自体ではなく、ちゃんとアンサンブル内で良い音色でグルーヴできるようになることを大きなテーマとしています。小手先の技術ではなく、ちゃんとプロ目線から“ベースとは”という部分を紐解きたいんです。これはまさに今専門学校で教えていることで、地味な内容ではあるんだけど、これこそがベーシストとして一番理解すべきことなんですよね。
嵯峨 ひとつひとつのテーマごとに、実際にアンサンブルのなかでどう使うのかっていうリアルな部分に言及してもらえるのはとても良いなと思いました。やっぱり実際に自分の手で演奏してみて納得するなと実感しています。
関谷 基本的には嵯峨くんに生徒役を担当してもらっていることで、擬似的にグループ・レッスンを受けているような感覚になると思います。嵯峨くんは知りたいことをどんどん聞いてくれるので、皆さんのリアルな疑問が次々に説明されていくように感じられると思います。
嵯峨 レッスンを受けるなかで、僕のなかには素朴な疑問がたくさん生まれるんですけど、それって多くのベーシストにとっても似たことだと思います。そうした小さい疑問をイチイチ質問するってちょっと恥ずかしいというか、気後れする方もいると思いますけど、僕が全部質問しているので安心してください(笑)。あと、僕がBASS GEEK Collegeのレッスンのなかで特に好きな内容が音楽理論についてなんですよ。音楽理論の本って、基本的にベースが題材として扱われていないじゃないですか。五線譜があって、ピアノで説明されて、みたいな。でも、関谷さんはベースとTAB譜も使って、ベーシストに向けて理論を教えてくれるので本当にわかりやすいんですよ。

PROFILE
嵯峨駿介(さが・しゅんすけ)●1992年生まれ、秋田県出身。大手楽器店での販売、修理業務やプロ・ベーシストのローディー経験などを経たのち、海外向けの小売業に従事。その後、2015年に横浜でベース専門店Bass Shop Geek IN Boxを立ち上げ、現在は国内外にて5店舗を構えている。2020年には事業を引き継ぐ形でベーシック株式会社を設立し、代表取締役に就任した。また楽器にまつわるさまざまな情報を発信するYouTubeチャンネルも人気を博している。
関谷 僕はベースを持ちながら楽器と理論をつなげるって授業を何年かやらせてもらったんだけど、正直なかには着いて来られない人もいました。でも動画であれば繰り返し観られるし、気軽に僕に質問をくれれば何でもお答えできる。それもBASS GEEK Collegeの良い部分だと思います。もちろん理論なんて最初は知らなくて当然。何も恥ずかしいことはないし、一緒に理解を深めていければと思っています。動画内では指板図や譜面を出したり、重要な部分は字幕で強調したり、動画ならではの伝え方を工夫しています。実は動画を編集してくれるスタッフもベーシストなんですよ。話の流れを汲んで編集してくれるので助かっていますね。
嵯峨 ベース・マガジンと一緒で、関わる人たちがみんなベースのことを知っていないとベーシストが喜ぶコンテンツは作れないんですよね。
関谷 理論って勉強して満足しちゃう人も多いと思うんです。教則本を出版したときも、読んで満足してしまったり、学校の授業のように捉えられたりすることもあって。でも本来、楽器とか音楽を自由に演奏するために理論は存在しているので、そういったことも伝えていきたいです。でも、単純に動画教材を販売することがBASS GEEK Collegeの目的ではありません。BASS GEEKが集まるコミュニティだからこそ、その人達のためだけにマニアックで深いコンテンツやサービスを限定的に提供します。
どんな悩みや相談にも向き合える存在で
ありたいと思っています。(関谷)
——楽器店を経営する嵯峨さんがいることで、機材面にコミットできるのもBASS GEEK Collegeの魅力ですよね?
嵯峨 そうですね、そこはほかにはない大きな魅力だと思います。機材レビューは定番のテーマなのでGeek IN BoxのYouTubeでは何度も行なっていますが、関谷さんと一緒にやってみて楽器店側の視点とミュージシャン側の視点の違いに驚きました。そうした多角的な視点でレビューが行なわれることはとてもユニークですよね。
関谷 ミュージシャンなりの意見はもちろん、僕が使っている機材は全部紹介するし、ライヴやレコーディングでの機材知識も惜しみなく共有させていただきます! 例えば最近作っておもしろかったのが、“同じトラック内でベースだけを入れ替えたらアンサンブルはどう変わるのか?”と言う動画です。ヴィンテージ・フェンダーやモダンな5弦ベースなんかはもちろん、コントラバス、フレットレス、アップライトなども含めて手持ちのベースを全部試しました。音を比較すると同時にどのように使い分けしているのかをお話しさせていただきました。
嵯峨 プロがどうやってベースを使い分けるのかってなかなか本当のところを聞けないので、そこも含めて興味深い動画になりましたね。こうして楽器店とプロ・ベーシストが一緒に運営しているメリットとして、レッスンなどに限定しないさまざまなサービスが提供できる点がありますよね。例えばBASS GEEK Collegeで観られる動画のなかには楽器店だからこそ話せるギター業界のキャリアについての話や、ミュージシャンじゃなければ体験できない現場でのリアルな話もあります。実際のところ、ベーシススト全員が必ずしも演奏を上手になりたいわけではないと思います。そうした意味で、ベースを弾くこと以外の内容も含めた総合的なサービスを提供できることが、既存の教室やオンライン・サロンとは違う点であり、おもしろい点だと思っています。

——そもそも“BASS GEEK” Collegeということは、ベーシストのなかでも特にマニアに向けたサービスということなのでしょうか?
嵯峨 そうですね、“老若男女誰でもウェルカムです!”というよりは、どちらかと言うと何年もベースを弾いてきたなかでもう一歩踏み込みたい人や、より深い部分に興味を持っているベースオタク向けのサービスです。もちろん初心者の方も大歓迎ですけど、“とにかくベースが大好きな人たちで一緒に楽しもうぜ!”というコンセプトです。
関谷 我流で何十年も弾き続けてきた方とか、皆さん上手ではあるんですけど、理論とかフォームとか、けっこう間違った認識も持たれていて。そういう人の気付きやレベルアップにつながれば良いなと思っています。
嵯峨 実はこのサービスのターゲットは僕自身なんですよ。ベースを弾き始めて何年も経つけど、習ったことはないし知りたいことはたくさんあるし、でもレッスンに通ったり深いところを自分で学んだりするのはしんどい、みたいな。こういった前提があるので、とにかく僕が疑問に思うことやより深掘りしたいことをもとにして動画を作っています。
関谷 嵯峨くんのやりたいことがリストアップされていて、100個くらいあるんですよ(笑)。
嵯峨 “関谷さんに教えてもらえるなんてなかなかないことだぞ”と思って書き出してみたらとんでもない量でした(笑)。だから僕みたいな人にとってはすごく有用だし、だからこそサービスにも自信を持っています。Geek IN Boxが普段やっているような動画よりもっと踏み込んだ、凝ったコンテンツがあると思っていただいて問題ないです。
関谷 もちろん、疑問や悩みは人それぞれ。動画では解決できないものもあると思います。そうしたときは僕や嵯峨くんに直接質問できるシステムも用意していて、的確に回答させていただきます。

PROFILE
関谷友貴(せきや・ともたか)●踊れるジャズ・バンドTRI4THのベーシスト。2018年にメジャー・デビューし、5枚のアルバムなどをリリース。国内外のジャズ・フェスに出演し、エフェクティブで色彩豊かなウッド・ベースから繰り出されるグルーヴ感には定評がある。また音楽制作チーム“MISSING Sound Tracks”でのアーティストへの楽曲提供のほか、教則本『3年後、確実にジャズ・ベースが弾ける練習法』の出版など、活動は多岐にわたる。TRI4THのほか、津軽三味線や奄美島唄とジャズを融合させたバンド“Kurofune”のリーダーとしても活動している。
——さて、BASS GEEK Collegeが始動して数週間(取材は8月1日に実施)となりましたが、ここまでやってみた所感は?
嵯峨 ありがたいことにローンチ直後から多くの方に入会いただきました。案の定、強烈なベースオタクの方々ばかりが入会しているので、“5弦ベースってなんですか”みたいな、軽めの話題が一切ないんですよ。精鋭が集まっているから深くておもしろい。そこがすごく良いところだなと思っています。
関谷 だからこそ、そんな皆さんに喜んでいただけるコンテンツを作っていきたいんです。世の中にはプロ・ベーシストがやっている教室やサロンがたくさんあるけど、僕らにしかできないことをやっていきたいなと改めて思っています。
嵯峨 僕がこのサービスを運営するうえで、やりたかったことのひとつが実名のクローズドコミュニティだったんです。人間は匿名だとつい嫌なことも言えてしまうじゃないですか。だからメンバー同士が交流するチャットには実名で登録してもらいました。チャットを見る限り、今のところ思惑通りBASS GEEKかつ、良い人しかいないコミュニティになっているなと感じています。
関谷 あとウチに入ると会員証もお渡しているんです。オンラインだとしてもやっぱり実物のカードがあったほうが絶対におもしろいし、それをGeek IN Boxの店頭で見せると割引が受けられる特典もありますよ。
——その他、BASS GEEK Collegeで今後やっていきたいことはありますか?
嵯峨 ほかの楽器店の方や楽器ブランドの方、ベース・マガジンの編集者の方とか、普段関わることが難しい方をゲストにお呼びして動画を作りたいですね。絶対おもしろいですよ。もちろんミュージシャンの先輩たちにもたくさん出演していただきたいです。実は先日、関谷さんに“ベーシストになるためのキャリア設計”についてお話いただいたんですけど、それがとてもおもしろかったんです。
関谷 うん、あれはすごくおもしろいし、プロを目指す若い子たちにもすごく有益だと思う。それで言うと嵯峨くんが話してくれたギター系YouTuberの収益構造の話とか、楽器ビジネスの話とかもおもしろかったよね。
嵯峨 うわー、本当ですか? 実はけっこう不安だったので嬉しいです。例えばですけど“楽器屋さんを経営してみたいけど、何から始めればいいのか”というテーマであれば僕が話せることはあるし、そういうのも良いかもしれないですね。BASS GEEK Collegeでは“もっと上手くなろう”という方向だけではなく、ベースを愛する人たち全般が楽しめるものを作りたかったんです。そういう方向性のサービスってなかなかないですしね。
関谷 演奏ではなく機材を集めることに幸せを感じる人もいるわけで、どんな悩みや相談にも向き合える存在でありたいと思っています。あと僕に対してジャズやブラック・ミュージックのイメージを持つ人も多いと思うんだけど、どんなジャンルのプレイヤーももちろんウェルカム。ベースが好きだったら誰でもOKです。
嵯峨 僕らと一緒により深いベースオタクになっていきましょう。
BASS GEEK Collegeとは?
巷に溢れる既存のオンライン・レッスンとは一線を画す斬新なサービスが魅力のBASS GEEK College。ここではサービスの内容を4つのポイントから解説していく。
POINT❶ ベース知識を深く掘り下げるコンテンツ配信
奏法、音楽理論、機材関係のほか、実機を用いたベース・サウンドの聴き比べ、宅録技術、プロになるための心構えなど、両者ならではの幅広いトピックでコンテンツが展開される
POINT❷ 自身の悩みを関谷/嵯峨へ直接質問!
演奏やテクニックのほか、理論・知識にまつわること、そして機材まわりに関することなど、プレイヤーとして活動するなかで日々生じる些細な疑問を両者に直接質問ができる。
POINT❸ ライヴトーク配信の開催
不定期にて、両者を交えたベース・トークがライヴ配信される。配信中のコメントは両者が随時確認し、リアルタイムでマニアックな内容を深く語り合うことができるだろう。
POINT❹ Geek IN Box各店舗にて使える割引&買取金額UP!
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