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【ウエノコウジのBorn to Lose】 – 第05回後篇 with 古市コータロー&藤井一彦
- Interview : Ryutaro Akima
- Main Photo : Miyoshi Tsukasa
ベース・マガジンの表紙になるような、
うまい人たちの演奏には正直グッとこなかったけど、
この何ヵ月かで変わってきたね。
ウエノ 今までいろんな音楽を避けてきたから、家でいろいろ聴いてみようと思って。ベースがすごいと言われとる名曲とか。でも結局、こりゃわしにはできんないうことで(笑)。黒人の人たちはゴーストノートの使い方が上手よ。
コータロー 狙ってできるもんじゃないんだよ。勝手に鳴るもの。
ウエノ 黒くはなれんね。でもその感覚を知っとると知らんとじゃ違うと思ったから勉強したんじゃけど。
コータロー みんな勉強してるねえ。俺も自粛に入って、一彦に“ボトルネックって小指がいいの?”って聞いたの。やったことないから(笑)。
ウエノ どっちじゃろ?
一彦 小指の人は、残った指でコードとかを弾きたい人。
ウエノ なるほど!
一彦 ただ(ボトルネックの)専門家みたいな人は、薬指が多い。
コータロー 俺小指でやっちゃったよ。
一彦 小指でもいいよ。まさかの人差指もいるからね。
ウエノ 難しいよね。てか、古市コータローが藤井一彦に教わるっていうのがおもしろい。
コータロー (笑)。やってみたら、1弦から3弦まではまあまあいいんだけど、低いほうの音が出ねえよ。まだお金をいただいて弾くようなことはできない。でも気持ちいいね。
一彦 間の音でしょ。要は、全音と半音以外にもあるんだよ。
ウエノ え、あるの?
──ギターはチョーキングやアーミングもそうですけど、ピアノなどで鳴らせないピッチを出せますからね。
一彦 そう、弦だから出せるじゃん。
ウエノ ギターすごいね!
コータロー そこを味わうと、非常に楽しい。
一彦 ベースはベンドとかあんまりせんけどさ。
ウエノ でもヴィブラートすれば出るってこと?
一彦 ほんの一瞬ね。
コータロー ヴィブラートも出し方がある。ブライアン・ジョーンズみたいに大味な人もいれば、俺とかは繊細だもん。
ウエノ そんなこと考えとんの? ベースでも、小指でヴィブラートする人と人差指でする人がいて、そういうのでも違うんよ。
コータロー それはフレーズによって変わるんじゃないの?
ウエノ わしはせんけえわからん(笑)。AはAじゃけえ。ベースが揺れたらいけんってとこもある。ルートを決める楽器じゃけえ。それは言い訳かもわからんけど。
一彦 まあそりゃそうよね。
コータロー 昔ウクレレ習っててさ、その先生はベーシストだったの。で、俺はヴィブラートするのが癖になってるじゃん。それを羨ましがってた。
ウエノ なるほどね。あんた(一彦)、ギターうまいんじゃけえギターの話しんさい。
一彦 ギターの話はええよー。
コータロー 俺、ペンタトニック・スケールしかわかんない(笑)。
ウエノ わしもよ。でも例えば、Aの3コードでやるときは、ペンタでもマイナーとメジャーがあるやん。どういうところで使い分けをしとるん?
コータロー 気分ですよ。晴れてればメジャー。
ウエノ 一彦はマイナーのイメージが強い。
コータロー 夜になったら俺もマイナーにするよ(笑)。
ウエノ ハッハッハッハ!
コータロー 1フレーズのなかで組み合わせることも可能なんだけど、ロックンロールでそれをやってもあんまおもしろくない。テンポが遅かったらそういうこともできるんだけど。
ウエノ でも組み合わせ方ですよね。
コータロー メジャーで弾いてて、ほんの1音だけクッとマイナーを入れるとか。
ウエノ ああ、経過音として?
コータロー うん。露骨にやると、いかにもエセブルースみたいに勘違いされるわけですよ。
一彦 ちょっと匂わせるぐらいがね。
ウエノ この間、あるベースがうまい人に聞いたんよ。“わし、ベース・ソロってホンマ苦手なんじゃけど、どうしよる?”って。そしたら“スケール・アウト前提で、アウトする音は強調せずにやれば何でもええ”って。
コータロー そんな怖いことできないですよ。キーがEで、チャララチャララってやる分にはいいよ。でもキー=Bでやれって言われたら私は……(笑)。
ウエノ B♭とかありがちですよね。
コータロー トランペットに任せますよそんなの。やっぱバッキングがいいね。
ウエノ 結局、自分が何をカッコいいと思ってるかによって違うけえね。
コータロー バッキングがやりたくてギター弾いたんだもん。
ウエノ ホント、弾きたがらないですよね。
コータロー ソロおもしろくねえんだよ。
ウエノ 歌とバッキングですよね。俺、歌に合わせてうまくリズムを乗せようと思ったの、ここ10年じゃけえ。
一彦 遅いなあ(笑)。
コータロー そのよさもあるよ。
ウエノ 今回、家でいろんな音楽を聴いて、わし何やっとったんじゃろうと思うもん。でもわしにはわしのアイデンティティがあって。
コータロー そう、それは自分のスタイルを作ってきたから言えることであって。俺も最初っからジョージ・ベンソンみたいに弾きたかったわけじゃないし、今さらそれを羨ましがっても仕方ないじゃん。
ウエノ 誰がBreezin’や(笑)。でもうまくなりたいと思ったね。
コータロー それは正しいことじゃん。
ウエノ ベース・マガジンの表紙になるような、うまい人たちの演奏には正直グッとこなかったけど、この何ヵ月かで変わってきたね。まあわしはわし、みたいな3人じゃけどね(笑)。あんたはうまいか。
一彦 いや、ギターは特にさ、人口が多いじゃん。だからいわゆるうまいとかは諦めてる。
コータロー いやいや、俺たち……相当うまいよ!
全員 ハッハッハッハ!
ウエノ 補足さしてもらっていい? あんたらね、うまいよ(笑)。
コータロー ソロだって普段は弾かないけど、“今日は弾いてくださいよ”って言われたら、“しょうがないな”っつって、いいソロ弾くよ(笑)。
ウエノ わしだってうまい思うよ。じゃないと50歳でやっとらん。“うまさ”の意味が違うんよ。でもわしが思うホンマにうまい人って、ドンカマ(クリック)のちょっとうしろにおる。あれがわしはできん。いつもちょっとだけ前におる。
コータロー ウエノはパンクスだったからね、それはいいんじゃない。俺は間違いじゃないと思うよ。ベースが引っ張っていくのカッコいいよ。
ウエノ だけどわしもみんなにうまいって思われたいじゃない。
コータロー いい歳こいても前にいるって余計カッコいいって。
ウエノ 楽曲による。
コータロー まあ「モニカ」だったらいいけどなあ、「RAIN-DANCEがきこえる」とかだとね(笑)。
ウエノ ドラムとどっちが引っ張るかって話じゃけどね。
コータロー ベースですよ。やっぱベースとハイハットだよ。
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