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    【Live Report】 風街オデッセイ2021 – 2021年11月5日(金)、6日(土)/日本武道館

    • Report:Shutaro Tsujimoto
    • Phoro:CYANDO

    DAY2:11月6日(土)

      2日目の公演は、伊藤銀次、杉真理、鈴木茂によるナイアガラ・トライアングルの「A面で恋をして」からスタート。伊藤銀次が佐野元春パート、鈴木茂が大瀧詠一パートを務める、今夜限りのスペシャル・トライアングルだ。鈴木がステージを去ると、杉真理が「Do You Feel Me」を伊藤銀次と披露。髙水健司はこの日も“風街ばんど”の煌びやかなアンサンブルを堅実に支え、同曲ではドラマーの山木秀夫のキックが刻むゆったりとしたビートをベース・フレーズで色づけながら、息のあったコンビネーションを見せていた。

     続いて登場した安部恭弘は、自身のヒット曲「CAFE FLAMINGO」、「STILL I LOVE YOU」で会場を少しアダルトな雰囲気に変えると、自身が新人ながら松本隆に作詞を依頼した際のエピソードをMCで語った。「Still I Love You」では、カッティング・ギターの合間に挟まれるベースのスラップ・プレイが心地いいグルーヴを聴かせ、オーディエンスを揺らす。

     グレーのスーツ、ハンドマイクでステージに現われたのは、稲垣潤一だ。「バチェラー・ガール」を歌唱し終えると、“僕もドラマーの端くれとして、松本さんにはこれからもずっと叩いてほしいとお願いしてる”と、ドラマーとしての松本隆への想いを語り、大瀧詠一『A LONG VACATION』(1981年)収録の「恋するカレン」をカバー。

     続いてはアコースティック・ギターを抱えた南佳孝が現れると、「スローなブギにしてくれ(I want you)」の印象的な“Want You〜”の歌い出しで、会場からは大きな拍手が上がった。そして2曲目の「スタンダード・ナンバー」を披露すると、“豪華なゲストを!”という紹介で鈴木茂と林立夫がステージに上がり「ソバカスのある少女」の演奏が開始。鈴木茂は自身が作曲した同曲について、“作ってるときから佳孝くんの声が頭にあって”と語っていた。ボサノヴァのゆったりとしたビートに、ベースの時折ハイ・フレットを使ったオブリが挟まれ、心地いいノリを会場に伝える。南佳孝がパフォーマンスを終え去っていくと、鈴木茂のソロ・ステージに。1日目も披露した「砂の女」、「微熱少女」が熱演された。髙水健司による「微熱少年」での16分の間(ま)やウラを感じさせるベース・プレイはこの日も絶好調だ。

     続いて林立夫はステージに残ったまま、ステージに登場したのは小坂忠。“松本くんのことは、はっぴいえんどの前のエイプリルフールの時代から知っているけど、そのときから彼の頭のなかには言葉の渦があって。そして今でも言葉が溢れている”というMCを挟みながら、「しらけちまうぜ」、「流星都市」というティン・パン・アレーが演奏を手がけた和製ソウルの名曲を立て続けに披露。髙水健司は時折笑顔を見せながら、林立夫が刻む「流星都市」の16ビートのうえで軽快にベース・ラインをハズませた。

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    安部恭弘
    小坂忠

     その後、星屑スキャットの3人が煌びやかなステージングで「ミッドナイト・トレイン」を披露すると、ベースをオリジナル・プレシジョン・ベースに持ち替えた髙水健司は、堀込泰行が歌う「てぃーんず ぶるーす」の、原田真二による原曲では後藤次利がプレイした歌心溢れるベース・ラインを軽快に聴かせた。続く楽曲は、堀込泰行の兄である堀込高樹が作曲し、藤井隆に提供した「代官山エレジー」。チェックのグレー・スーツを装った藤井隆が確かな歌唱力で同曲を歌い上げると、ここでこの日の前半パートは終了となった。

    堀込泰行
    藤井隆

     後半は冨田ラボ•冨田恵一の登場からスタート。冨田はローズ・ピアノを演奏し、まずはクミコとともに「フローズン・ダイキリ」を披露した。続く畠山美由紀による「罌粟」では、ベースが間奏のブレイク部分で高音の甘いトーンを聴かせる。ハナレグミによる「眠りの森」では冨田はエレキ・ギターを手にし、ソロ・プレイも聴かせながら、同曲の軽やかな16ビートに色を足した。その後、ハナレグミのステージに堀込泰行と畠山美由紀が加わると、冨田が“この曲の歌入れのときに、松本隆さんと松任谷由実さんが来ていて緊張した”というエピソードをMCで明かしたのち、“松本隆・松任谷由実コンビ”が当時17年ぶりに手がけた名曲、「真冬物語」のイントロがスタート。3声のハーモニーの交わり、井上鑑によるキーボード・ソロ、冨田によるギター・カッティング、そのどれもが珠玉のポップ・サウンドを会場に響かせていた。

    冨田ラボ•冨田恵一(左)とクミコ(右)
    冨田ラボ•冨田恵一(左)とハナレグミ(右)

     続いては松本隆にとって下の世代ながら、80年代アイドルに精通した女性シンガーふたりによるステージ。中島愛は菅野よう子作曲でテレビアニメ『マクロスF』の挿入歌の「星間飛行」を、中川翔子は“松本・筒美”コンビによる2000年代の傑作「綺麗ア・ラ・モード」を華麗に歌い上げ、松本隆が21世紀に生み出した女性ヴォーカル曲の素晴らしさを伝えた。

     いよいよ終盤のムードが漂ってきた武道館。中川翔子がステージを去ったあとに登場したのはさかいゆうだ。彼は伸びやかな歌声を聴かせながら山下達郎による1998年のシングル「いつか晴れた日に」を披露すると、“大役ですよね、でもバンドの大船に乗った気持ちで”というMCから松田聖子の「SWEET MEMORIES」をピアノの弾き語りで歌い始める。楽曲の中盤からは“風街ばんど”による気宇壮大な演奏も加わり、ドラマチックな雰囲気が会場を包んだ。

    中島愛
    中川翔子

     この日も“風街ばんど”のメンバー紹介を兼ねたインストゥルメンタル曲が演奏されると、本篇はいよいよクライマックスに。黒い衣装に身を包んだEPOは、竹内まりやの「September」を披露し、同曲ではカッティング・ギターやホーン隊が楽曲にカラフルに彩るなか、髙水健司のベースが休符も多用したファンキーかつ歌心あるプレイで観衆の身体を揺らした。

     はっぴいえんどを除く本篇出演者のトリを務めたのは、吉田美奈子だ。彼女は力強く深い歌声で松田聖子の「瑠璃色の地球」をゴスペル風に歌い上げると、45周年イベントの際にも披露し、その大胆なアレンジにオーディエンスが度肝を抜かれたという「ガラスの林檎」で武道館の観衆を圧倒した。原曲からテンポを大きく上げ、ウォーキング・ベースが暴れ回るジャズ・ファンク・バージョンとなったこの曲を、吉田美奈子は音階を縦横無尽に駆け巡りながら見事に乗りこなし、オーディエンスからの大喝采を誘った。

    はっぴいえんど

     アンコールでステージに現われたはっぴいえんどは、2日目も前日と同じセットリストで「花いちもんめ」、「12月の雨の日」、「風をあつめて」の3曲を演奏。「花いちもんめ」が終わると、鈴木茂が“大瀧(詠一)さんが作った素晴らしい曲なんですけど、そもそもこの曲がきっかけで僕ははっぴいえんどに入ったという大切な曲です。今日はヴォーカルを鈴木慶一に!”と紹介をし、「12月の雨の日」の演奏がスタート。はっぴいえんどのデビュー当初や最後のステージにも鍵盤で参加していた鈴木慶一が大瀧詠一の大役を務めたこの日のパフォーマンスには、胸を打たれるファンも多かったのではないだろうか。鈴木慶一による、“大瀧さん許してね、僕の冥土の土産だから(笑)”という言葉も印象的だった。そしてラストの「風をあつめて」では、この日も鈴木茂がベースをプレイ。細野晴臣は50年前に歌った原曲よりも少し低いキーで柔らかな声を聴かせながら、2日間全62曲にわたるステージの最後を締め括った。

    細野晴臣
    鈴木茂

     “細野さんと松本さんが一緒になるグルーヴはほかにはないので、とにかくこの個性は大事にしたい”という、演奏後に鈴木茂が語った言葉もあったが、多くのファンにとってもその気持ちは同じだろう。今回の50周年イベントにとどまらず、5年後、10年後にも再び3人が同じステージに立つ姿を観られることを切に願ってやまない。松本隆が50年にわたって紡いできた言葉の魅力を再確認するとともに、そこには常に素晴らしい歌声と演奏、そしてリズムとグルーヴがあったのだということも強く感じさせられた2日間だった。

    ■2021年11月5日(金)/日本武道館
    セットリスト
    01.砂の女/鈴木茂、林立夫
    02.微熱少年/鈴木茂、林立夫
    03.夏色のおもいで/曽我部恵一
    04.想い出の散歩道/アグネス・チャン
    05.ポケットいっぱいの秘密/アグネス・チャン
    06.雨だれ/太田裕美
    07.木綿のハンカチーフ/太田裕美
    08.三枚の写真/森口博子
    09.リップスティック/森口博子
    10.シンプル・ラブ/大橋純子
    11.ペイパー・ムーン/大橋純子
    12.タイム・トラベル/佐藤竹善
    13.セクシャルバイオレットNo.1/B’z、亀田誠治
    14.ルビーの指環/横山剣、亀田誠治
    15.君は天然色/川崎鷹也、亀田誠治
    16.Romanticが止まらない/C-C-B
    17.Lucky Chanceをもう一度/C-C-B
    18.ハイスクールララバイ/イモ欽トリオ
    19.赤道小町ドキッ/山下久美子
    20.誘惑光線・クラッ!/早見優
    21.夢色のスプーン/武藤彩未
    22.風の谷のナウシカ/安田成美
    23.Woman“Wの悲劇”より/鈴木瑛美子
    24.瞳はダイアモンド/鈴木瑛美子
    25.バンドメンバー紹介曲
    26.初戀/斉藤由貴
    27.卒業/斉藤由貴
    28.さらばシベリア鉄道/太田裕美
    29.花いちもんめ/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、鈴木慶一
    30.12月の雨の日/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、鈴木慶一、曽我部恵一
    31.風をあつめて/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)

    ■2021年11月6日(土)/日本武道館
    セットリスト
    01.A面で恋をして/伊藤銀次、杉真理、鈴木茂
    02.Do You Feel Me/伊藤銀次・杉真理
    03.CAFE FLAMINGO/安部恭弘
    04.STILL I LOVE YOU/安部恭弘
    05.バチェラー・ガール/稲垣潤一
    06.恋するカレン/稲垣潤一
    07.スローなブギにしてくれ(I want you)/南佳孝
    08.スタンダード・ナンバー/南佳孝
    09.ソバカスのある少女/鈴木茂・林立夫
    10.砂の女/鈴木茂、林立夫
    11.微熱少年/鈴木茂、林立夫
    12.しらけちまうぜ/小坂忠
    13.流星都市/小坂忠
    14.ミッドナイト・トレイン/星屑スキャット
    15.てぃーんず ぶるーす/堀込泰行
    16.代官山エレジー/藤井隆
    17.フローズン・ダイキリ/クミコ、冨田ラボ•冨田恵一
    18.罌粟/畠山美由紀、冨田ラボ•冨田恵一
    19.眠りの森/ハナレグミ、冨田ラボ•冨田恵一
    20.真冬物語/堀込泰行、畠山美由紀、ハナレグミ、冨田ラボ•冨田恵一
    21.星間飛行/中島愛
    22.綺麗ア・ラ・モード/中川翔子
    23.いつか晴れた日に/さかいゆう
    24.SWEET MEMORIES/さかいゆう
    25.バンドメンバー紹介曲
    26.September/EPO
    27.瑠璃色の地球/吉田美奈子
    28.ガラスの林檎/吉田美奈子
    29.花いちもんめ/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、鈴木慶一
    30.12月の雨の日/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、鈴木慶一
    31.風をあつめて/はっぴいえんど(松本隆、細野晴臣、鈴木茂)、鈴木慶一

    風街オデッセイ2021
    Official HP  
    松本隆
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    ■Information

    2015年に開催された松本隆45周年記念ライブ
    “風街レジェンド2015”のブルーレイ化が決定!
    約3時間、全38曲が収録されるファン待望の内容となっている。

    ◎作品情報
    2021年12月22日(水)発売
    『松本 隆 作詞活動45周年記念オフィシャル・プロジェクト 風街レジェンド2015 live at 東京国際フォーラム ホールA』
    ブルーレイ2枚組 全38曲収録/三方背BOX/ブックレット(全100ページ)
    価格:11,000円(税込)
    品番:COXA-1286-7
    収録日:2015年8月21日(金)&22日(土)
    会場:東京国際フォーラム ホールA

    ◎問い合わせ
    日本コロムビアHP