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【第93回】パーム・ミュート+親指弾きで太い音を出す、逆転の発想 石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜
- Text:Jun Ishimura
“親指弾きの音が小さい、太くない”と悩んでる皆さん。僕がやった解決方法をご紹介します。
曲によって、コントラバスっぽい音色とか、古いR&B/ソウルみたいな音色を出したいときってありますよね。
もちろん、プレベにフラット・ワウンド弦を張って弦高を高めにしてブリッジ付近をスポンジとかでミュートすれば、そういう方向性の音になります。でも、ほかの音色を出したい場合もあるし、セッティングを変えた楽器に持ち替えるのも無理っていう場合もありますよね。そういうときに使える奏法が、“パーム・ミュート+親指弾き”です。ブリッジのあたりを手のひらの横でミュートしつつ親指で弾く奏法ですね。よく使われる奏法だと思います。
個人的にはけっこうこの奏法が好きなんですが、昔、悩みがありました。それは、パーム・ミュート+親指弾きにすると音量が小さい、でも音量を上げたくて強く弾くとイメージと違うアグレッシブな音色になってしまう、という悩みです。当時は、親指を当てる角度がいけないのかな? とかいろいろ試行錯誤したけど、なかなか解決できませんでした。でも、いったんわかってみると、実は原因はとてもシンプルでした。
それは、普段の指弾きの弾き方が強すぎたんですね。つまり、親指弾きの音量が絶対的に小さかったわけではなくて、むしろ指弾きの音量が相対的に大きすぎるぎたわけです。まず基本的な指弾きをガッツリ強く弾いているから基本の音量が大きい。それと比べて、パーム・ミュート+親指弾きはそもそもミュートしているから音量が下がる。しかも、ラウンド・ワウンドのギラギラした音ではなくてコントラバスとか古いR&Bみたいなコモり気味の音を出したいから比較的ソフトめにピッキングすると、さらに音量が下がる。と、こういうことになっているわけです。小さい音量で弾きたい場合はこれでもいいけど、盛り上がっている曲や場面でこの音色が欲しい場合に困るんですね。
この状況を機材レベルで解決するなら、パーム・ミュート+親指の弾き方はソフトなまま、この奏法のときだけクリーン・ブースターで音量を上げるとか、コンプを強めにかけて音量を揃えるとか、いくつか手はあります。手っ取り早いし、これはこれで良いと思います。 ただ、僕の場合は、時間は多少かかるけど自分の手のレベルで解決することにしました。具体的には、親指弾きの弾き方は変えずに、普段の指弾きをそれまでの強すぎる弾き方から力を抜いたソフトな弾き方に変えていったんです。指弾きの基本の音量が下がって、パーム・ミュート+親指でソフトに弾いている音量と同じくらいになりました。
これで親指弾きにすると音が小さくなってしまう問題は解決したわけですが、このままだと両方の音量が小さいので、アンプの音量を上げます。この音量でそれまでの強すぎる弾き方をすると爆音すぎてヤバいので、もうその弾き方は使わないようにします。例えば、それまでの強すぎる弾き方での音量がこの楽器から自然に出る最大音量・フォルテッシシモだとすると、フォルテッシモとかフォルテッシシモは使わないようにする、ということです。普段の音量をメゾピアノくらいにしておけば、ピアニッシモからフォルテくらいの幅で充分ダイナミックな演奏ができます。
こういう、“時間がかかる系、根本的な弾き方を変える系”の取り組みは正直めんどくさいです。でも、個人的には指弾きをソフトな弾き方に変えたことでメリットがいっぱいありました。小さめに一定の音量で弾くっていう繊細なコントロールを身につけるのは時間がかかりましたが、ダイナミクスの幅も音色の幅も広がって、疲れにくくなって、リズムも良くなりました。普段から必要以上にリキんで弾いてるかも、と思う人は、ぜひ長い目で見てじっくり取り組んで、リラックスした弾き方を身につけていくことをお薦めします。
石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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