NOTES
アドリブ演奏で使えるボキャブラリーを増やしていくために、耳コピしたフレーズのバリエーション作ろう! という企画の続 きです(前々回、前回もご覧ください)。
今回は、耳コピしたフレーズのリズムの形は生かしつつ、“違うコードに合うバリエーション”を作ってみましょう。これは、例えばもとのフレーズがマイナー・コードのフレーズだとしたら、それをメジャー・コードで使えるようにするにはどの音をどう変えたらいいのか、ということです。
前回は、こんなフレーズを耳コピしたという設定でした。今回も例としてこれを使います。
度数を分析したらマイナー・ペンタと経過音だったので、コードはCmとかCm7あたりだろうと推測しました。
違うコードに合うようフレーズを組み替える
では、このフレーズを、例えばC、C6、C△7などのメジャー系コードに合うように組み替えます。まずは、リズムの形だけじゃなく音の動き方も、できるだけもとのフレーズの形を保ったまま、最小限の音の変化で作ってみます。
メジャー・コードに合うように、ということで、もとフレーズ2拍目の7(セブンス、短7度)を半音下げて6(長6度)に、2小節 4拍目の7を半音上げて△7(メジャー・セブンス、長7度)に、♭3 (短3度)を半音上げて3(長3度)にと、3音変更してみました。これで一応メジャーコードに合う音づかいになります (メジャー・コードの場合、4度の音は長い音価で使うと長3度とぶつかるのでやめたほうが無難ですが、1小節4拍目のように短い音価で使う分にはまったく問題ありません)。
ただ、もちろんこれがフレーズとして良いかどうかは別問題で、それはこのフレーズが特定の曲や場面に合うのかという問題でもあるし、自分が好きか嫌いかという好みやセンスの問題でもあります。なので、この作業は素敵なフレーズを作るのが目的というよりは、あくまでも違うコードに合わせる場合どの音をどう変えればいいかという経験値を上げるのが主な目的です。
では今度は、リズムの形だけを生かしつつ、好きな音づかいでメジャー・コードに合うバリエーションを作ってみましょう。例えばこんなフレーズができます。
同じように、例えばCsus4、C7、C7(♭13)など、いろんなコードに合うように自分で音を組み替えてみてください。
コード進行に合わせたフレーズに組み替える
今度は、何らかのコード進行のなかでこのリズムの形を使ってみましょう。例えば、よくある
C – Am7 – Dm7 – G7
I – VIm – IIm – V7
という形にこのリズムを当てはめて音づかいを考えてみましょう。
ここではシンプルなコード・トーンで作ってみました。1小節4拍目のE♭と2小節2拍目のF♯は、Cメジャー・スケールの音でもないし、それぞれのコード・トーンでもありませんが、次のルートに半音でアプローチする経過音として使っています。譜面下部に書いたように、そのときのコードに対する度数とキーに対する度数、両方を理解しておくといいです。
前回と今回のトレーニングをやると、もちろんコードやスケールなど音づかいを学んでいけるんですが、もうひとつ大事なのは “リズムの形の強さ”を学んでほしいということですね。実は、普通のフレーズ作りでもアドリブ演奏でも、説得力があるフレーズ・印象的なフレーズを作るには、“音づかい”以上に“リズムの形”が大事なんですね。別の言い方をすると、リズムの形が一貫していれば音づかいを変えても一貫性が感じられます。
ということで、この作業を習慣にするとフレーズ作りにも慣れていくし、身につけたボキャブラリーはアドリブの材料になるし、最終的にはアドリブでリアルタイムにフレーズを展開していくスキルにもつながっていきます。どんどん耳コピして、分析して、バリエーション作って、アドリブに慣れていきましょう! 石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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