NOTES
ペンタに音を追加してブルージィにしてみましょう。
いきなりですが、ex.1Aのリフと、それを少しだけ変化させたex.1Bを弾き比べてみましょう。少しバウンスした16分の感じで弾いてみます。
音づかいが2ヵ所微妙に違うだけなんだけど、フレーズの印象がけっこう変わりますよね?
ex.1Aはメジャー・ペンタだけでできたフレーズで、なんか陽気な感じがします。
前回、“ペンタ単体で使うとちょっと牧歌的/童謡っぽく聴こえてしまうこともあるので、ペンタを核としつつ文脈に沿った音を付け足すことが多い”と言いました。牧歌的だったり明るい感じ自体が悪いわけではなくて、それが合う曲調だったら全然メジャー・ペンタをそのまま使います。でも、ちょっと明るすぎるかなと感じる場合、たとえばex.1Bみたいにしてみると、全体的に明るい感じは残りつつも、違うニュアンスが出てきます。
Ex.1Bはどこをどう変えているかというと、まずex.1Aの1拍目、16分4つ目のDの音(=2度)を、E♭音(=短3度)に変えています。それから、ex.1Aの4拍目の16分3つ目からのE音(=長3度)からD音という動きを、E♭音(=短3度)からD音にスライドする形に変えて、リズムも少し変えています。この2回出てくるE♭=短3度の音はメジャー・ペンタにはない音です。つまり、Ex.1Bみたいな音づかいのフレーズを弾くとき、僕はメジャー・ペンタに短3度(m3)を追加したシェイプをイメージして弾いてます。これを使うことで、ex.1Aが無邪気に明るい感じだったのに比べて、ex.1Bはただ明るいだけじゃない別のニュアンスが感じられます。
でも、このフレーズにコードをつけるとしたらCとかC6とかC7とかですけど、そういうメジャー系のコードでマイナー3度を使うのはなんなのか?と。例えばex.2みたいなフレーズであればD音からE音への経過音としてE♭音を使っていると考えることもできます。
しかし、ex.1Bの場合はそういう発想ではなくて、ある特定のフィールを出したくてE♭音を使っています。それはブルース・フィールです。E♭→Eナチュラル→Gと上がるところも、E♭→D→Cと下がるところもブルージィですよね。その2ヵ所をつなげて弾いてもいい感じにブルージィなフレーズになります(ex.3)。
メジャーの響きのなかでマイナー3度を使った歌い方をするのは、ブルージィな表現の大きな特徴のひとつです。ブルージィな、と言う代わりに“ロックな”とか“ソウルフルな”とか“ファンキーな”と言ってもよくて、まあブラック・ミュージックとそれに影響を受けた音楽全般でガンガン使われてる表現ですね。
アーティキュレーションも大事です。E♭→Eナチュラルと上がるところは両方ピッキングしてもいいけど、スライドすることでブルージィ感が増します。ハンマリングでもチョーキングでもいいです。E♭→Dと下がるところも、ここではスライドにしていますが、プリングとかでもいいわけです。
個人的にブルージィなのが大好きなので、僕はこういう音づかいは多用しています。皆さんもぜひ自分のフレーズに取り入れてみてください。石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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