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    【第75回】時間と労力を節約する“間違えない譜面”を作れ!  石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

    • Text:Jun Ishimura

    今回は前回の続きで、曲に取りかかる前に“間違えない譜面”を作ろう、という話です。譜面を作るのは時間と手間がかかりますが、1度ちゃんと作ればその後の時間と手間を減らせます。譜面がないと、バンドでリハするとき、次のリハ(とか本番)まで間が開いたとき、久しぶりに弾くときなどに、“あれ、ここどうするんだっけ”という再確認に時間を取られがちです。適切に書いた譜面があると、この時間と労力の無駄を省けます。

    ここでは、サポートの仕事やセッションやバンドなどでコード譜をもらったときの話をします。

    書き込み前の譜面

    曲の枠組みを確認

    ベース・ラインに取りかかる前に、まず曲の枠組みを把握します。

    の枠組み1━━全体像、曲の構成

    まず最初に、イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、みたいな構成を確認します。その各セクションの小節数も把握します。(四角A、四角Bのような)リハーサル・マークの位置と名前はバンド内で統一しましょう。

    全体像、曲の構成を把握する

    曲の枠組み2━━反復記号

    そして、リピート・マークやD.C.(ダ・カーポ)、D.S.(ダル・セーニョ)、コーダなどの出発点と移動先を確認します。僕はそこまで譜面に強いわけでもないので蛍光ペンでマーキングします。見栄えは良くないけど、曲の構成を間違えるほうが100倍カッコ悪いかな、と。

    例えば、リピートはオレンジ、ダル・セーニョ関係はピンク、コーダ関係はブルー、みたいな感じで、つながっている記号同士を同じ色にするのと、それを曲ごとにコロコロ変えずにルールを決めておくと間違えにくいです。全部赤ペンで書く人もいますが、ステージ上で赤いライトが当たると見えづらいので蛍光ペンのほうがいいです。

    一般的にダ・カーポやダル・セーニョで戻ったあとのリピート・マークはリピートせずにストレートで次に行きますが、ポピュラー音楽の現場ではリピートすることもあるので、確認して書き込みます。

    • 反復記号1

    曲の枠組み3━━曲の始まり方、終わり方

    曲のアタマはカウント始まりか、ドラム・フィル始まりか、ギター始まりか。それを書いておきます。例えばドラム・フィルの場合、何拍のフィルなのかも書いておきます。

    曲の終わり方も、リタルダンドするのかしないのか、最後の音は伸ばすのか切るのか、みたいなことを書きます。

    • 曲始まり1

    曲の枠組み4━━ベースの出入り

    ベースが入る場所に“IN”、ベースが抜ける場所があるなら“OUT”と書きます。再び戻ってくる場所には“IN”と書きます。

    ベースの出入りを確認

    曲の枠組み5━━ダイナミクスの変化

    Aメロはメゾ・ピアノで、Bメロはメゾ・フォルテ、サビ前にクレッシェンドしてサビはフォルテ、みたいな曲のダイナミクスの流れ、どこが一番盛り上がるのか、などを確認します。

    ダイナミクスの変化はどうなっている?

    細部の確認

    次に、フレーズそのものや、細かいニュアンスといったディティールを確認します。

    • ベース・ライン

    ディティール1━━ベース・ライン

    ベース・ラインが書いていない場合は耳コピします。といっても、リフとかキメはしっかり書きますが、そうじゃないところはセクションの最初にリズムの形を書いてあとは省く、ということも多いです。

    ディティール2━━シンコペーション

    リズムがクってる(シンコペーションしてる)ところを把握します。8分でクうのか、16分でクうのかっていう区別も大事です。

    ディティール3━━テンポの変化

    リタルダンド、アッチェランド、フェルマータ、ア・テンポなど、テンポの変化に関する指示も、書いてなければ書く。そのうえで蛍光ペンで目立たせます。例えば、どの音からリタルダンドが始まるか、みたいなことも重要なので、書く位置に気をつけます。

    ディティール4━━アーティキュレーション

    フレーズのスタッカート、テヌート、ハンマリング、スライドなどのアーティキュレーションを書き込みます。

    ディティール5━━指揮者を見るところ

    フェルマータ後にア・テンポするときや、リタルダンドの具合、最後の音を切るときなど、誰を見て合わせるのかを確認します。オーケストラとかだと指揮者を見るわけですが、バンドの場合はその瞬間に誰が指揮者の役になるかはケース・バイ・ケースで、ヴォーカルのブレスやジャンプに合わせたり、バンマスのキューに合わせたり、ドラマーの動きに合わせたり。なので、誰を見るべきかを明確にして、書いておきます。

    こんな感じで、“曲を演奏するのに必要な情報”をわかりやすく書き込んだ譜面を作ることで
    ①演奏ミス
    ②無駄な再確認
    ③曲を覚える所要時間

    を減らせます。

    以上はあくまでも僕のやり方なので、自分に合った書き方を見つけてください。石村順でした!

    石村順
    ◎Profile
    いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

    ◎Information
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