NOTES
今年もよろしくお願いします。新年1発目ということで、皆さんの今年の目標になるようなテーマを考えてみました。ちょっと禅問答みたいなテーマですが、“弾かないところを弾け!”です。
“弾かないところ”って何か? いわゆる“弾くところ”、っていうのは“音を出すところ”です。ここは、誰でもタイミングとか指の動かし方とかを気をつけますよね。今回着目したいのは、それ以外のところです。
“ああ、つまり休符のことだな”って思った人もいると思います。僕の本でも休符についてまるまる1章を割いて説明していて(『ベーシストのリズム感向上メカニズム』p.127~ Training 3 『休符の取り扱い方』)、確かに休符はめちゃくちゃ大切です。ただ、“弾かない部分”って休符のほかにもあるんですね。それも含めて、“弾かないところ”も“弾くところ”と同じくらい大事! ということを、ここでは3つのポイントに分けて説明します。
弾かないところ① 音を切るところ
まずは、音の切り際ですね。鳴っている音を切るタイミング、言い換えると、休符が始まるタイミングのことです。音の切り際が音価(音の長さ)を決めます。当然、これはグルーヴとかフレーズのニュアンスを大きく左右するので、これをどれだけコントロールできているかがめちゃくちゃ大事ですね。なんとなく漠然と音を切っているとダメです。
あと、譜面にした場合はいわゆる休符としては書かないけれど、スタッカートに関しても同じです。スタッカートをどこで切るかでグルーヴが全然変わってきます。
ということで、音を出すところだけじゃなくて音を切るところにも気を配る、これがひとつめのポイントです。
弾かないところ② 休符/ブレイクの間
次は、長い休符とかブレイクの間をどう捉えるかです。つまり、何拍か休符が続くような場合や、何小節もベースがいないブレイクのところですね。ここを、休符っていう名前のとおり休んじゃったらダメです。じゃあ拍をカウントしていればいいかというと、それだけだと機械的でグルーヴがないので、もっと音楽的にアプローチしたいですね。たとえば長めのブレイクの場合は、ベース・ラインとかメロディ・ラインを口ずんだり脳内でイメージするのもいいし、それに比べたら短いとしても何拍か休符が続く場合は、ほかの楽器のフレーズなどを口ずさんだりイメージしたりしてその隙間を埋めて、次の音を出すところまでつなげるのが大事です。そうしないと、次の音を出すタイミングがズレたり、その直後のリズムが崩れたりしがちです。とにかく音を出してない間もグルーヴを途切れさせないのが大事ですね。
それと、前々回(第67回)の動画でカウントの重要性について話しましたが、今回のテーマで言えば、カウントの前から最後の音を切るところまでのすべてを演奏する意識が大事です。音を出してない間も演奏し続ける意識、これがふたつめのポイントです。
弾かないところ③ 音を伸ばしているところ
そしてもうひとつが、音を伸ばしているところの感じ方です。どんな音符でも長さを意識するのは大事なんですが、ここで言いたいのは比較的長い音符のことです。全音符とか、遅めのテンポでの2分音符とかですね。曲調で言うと特にバラードなんかで大事になってくるポイントですけど、アップ・テンポの曲で何小節か白玉が続くような場合でも同じです。これも、先ほどの長めの休符と同じで、音を伸ばしている間にただ拍をカウントするんじゃなくて、その曲のグルーヴを途切れさせないことが大事です。音を伸ばしてる間もグルーヴし続ける、これが3番目のポイントです。
もし、音を出すところ以外も演奏する、っていうことを今まで意識していなかったなら、当面は“弾かないところを演奏する”ことにピントを当てた練習をしたほうがいいです。ただ、最終的には弾くところと弾かないところを別のものとして分けて扱うんじゃなくて、どちらも含んだ連続したひとつの流れとして演奏する意識が大事ですね。
石村順でした。
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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