NOTES

UP

【第61回】大事なのは耳コピしたあと! 実際に役に立つ耳コピ法/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

● フレーズの引き出しを増やしたい
● もっといいベース・ライン作りたい
● 自分のスタイルを確立したい
● 会話するみたいにアドリブで弾きたい

 こういう目標を持っている人は、耳コピをしましょう。ただ、実際するべきなのは“耳コピ+α”で、このプラスアルファの部分がめっちゃ大事です。

 “耳コピをすると人真似になっちゃうから、やらないほうがいい”っていう考え方もあります。まあ、その可能性があるのはわかります。“ただ耳コピして終わり”だったら、さっき言ったような目標の達成には役立たないかな、と。

 でも、ちゃんとプラスアルファの作業をするなら、耳コピは楽器を演奏するための基本!です。なぜかというと、ある意味、音楽って言葉なんですよ。皆さん、どうやって言葉を話せるようになりましたか?

 小さい子どものときは、母国語を耳で聞いて、口真似して、っていうやり方で覚えます。これは耳コピですよね。何年かして少し喋れるようになって、さらに何年かしてやっと読み書きを習って、さらに何年もあとに文法とかを習いますよね。

 大人が外国語を学ぶ場合は、最初から読み書きや文法を使って学びますが、それでも聴きとったり話したりするのをしっかりやらないと喋れるようにはならないですよね。

 さっきも言ったように音楽は言葉なので、演奏を覚えるのも言葉を覚えるのと似ています。つまり、演奏力を身につけるには“耳コピして真似して弾く”のが一番自然なやり方なんです。ただ、もう大人なので、語学で文法も学ぶのと同じように、楽譜の読み書きとか、コードやスケールの理論とか知識も同時に学んで、自分が何をやっているか理解しながら練習したほうが効率的です。この“理解しながら”という部分がプラスアルファの作業です。ただ耳コピして終わりじゃなく、理論や知識を使ってプラスアルファの作業をすることで、いろんな応用ができるようになります。では、そのプラスアルファの作業ってどんなものかというと。

①譜面に書く

 耳コピしたら譜面に書いてください。譜面に書くことで、リズムの構造が理解しやすい、とか、譜面の読み書きに慣れる、とか、数年後に見てもフレーズを思い出せる、などのメリットがあります。また、この譜面が、このあとの作業の土台になります。

②分析する

 譜面に書いたフレーズを分析します。

A. キー、コード
 曲のキーは何か、そのフレーズのときのコードは何か、突き止めます。

B. 度数、スケール
 フレーズの音それぞれが、コードに対して何度の音なのか調べます。そしてそこから、そのフレーズで使われている(であろう)スケールを推測します。

③バリエーションを作る

A. 違うコードで弾く
 これは、例えばCm7のフレーズを耳コピしたのなら、それをDm7、D#m7、Em7 などの違うコードでも練習します。

B. 違うコード・クオリティに合うようにフレーズを変える
 コード・クオリティっていうのは、Cmaj7のmaj7の部分、C7の7の部分、Cdimのdimの部分です。つまりコードの構造というか構成音ですね。例えばCm7のフレーズを耳コピしたら、それを例えばCmaj7に合わせて弾くにはどの音を変えればいいか、いろいろ試します。この作業で、元のフレーズのバリエーションをいろいろ作ります。

C. 同じリズムで違う音使い
 そのフレーズのリズムの形はそのまま使って、そこにいろいろな音使いを当てはめてバリエーションを作ります。

D. 同じ音使いで違うリズム
 そのフレーズに出てくる音は全部使いつつ、出てくる順番やリズムの形を変えたバリエーションを作ります。

 こういう耳コピ+αの作業をすることで、ただそのフレーズが弾けるようになったっていうだけじゃなく、そのフレーズから導き出されたバリエーションの数々とか、違うキーやコードや曲調に応用するスキルが身につきます。これらが、フレーズの引き出し、ベース・ライン作りの材料、自分なりのスタイルの材料、アドリブ演奏の材料、につながっていくんですね。ぜひ、いっぱい耳コピして、プラスアルファの作業していきましょう! 石村順でした!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
HP Twitter facebook Instagram