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【第2回】クリックの音色選びでリズムの精度が高まる?/石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜

  • Text:Jun Ishimura

BASS MAGAZINE Web『石村順の低音よろず相談所 〜Jun’s Bass Clinic〜』、第2回です。今回のテーマは“リズムの精度を高めたいなら、クリックの音色を選ぼう”です。

リズム練のお供といえば、メトロノームですよね。電子メトロノームやアプリを使っている人も多いと思います。また、“ピッ”と鳴る電子メトロノームの音など、クリックの音色にはいろんな種類があります。

そのなかで、もしリズムの精度を高めたくて音色も選べる環境にいるのなら、“昔ながらのメトロノームの音色=機械式メトロノームの音”を使うのがベターです。それはなぜでしょうか?

ここで、リズム練をゲームに例えたいと思います。

このゲーム、地面に“象の足跡”と“カモシカの足跡”が並んでいます。それを正確に踏んでいく、というゲームです。踏み外すとハズレです。

“象の足跡”は初級篇。

“象の足跡”では、Aの場所でも、Bの場所でも、そしてCの場所で踏んでも“アタリ”です。足跡の面積が広いので、少々雑に踏んでも“アタリ”なんです。一方、“カモシカの足跡”は難易度がアップします。Aはアタリですが、BとCはハズレです。つまり、より正確に踏まなくてはいけません。

“象の足跡”は、アタリが多いので楽しいですが、やってもやっても精度は上がりません。一方、もしあなたがリズムの精度を高めたいと思っているのであれば、“カモシカの足跡”にチャレンジしなければいけないのです。

話は戻りますが、電子メトロノームの“ピッ”という音、実は鳴っている時間が結構長いんです。

上段が機械式のメトロノームですが、波形を見てみると、音の出た瞬間が最も音が大きく、すぐに減衰して小さい音になります。時間軸を拡大してみるとよくわかると思います。

逆に、下段の“ピッ”という電子メトロノームの音は、音が鳴ってから最大音量になり、しばらくそのままになっています。つまり機械式メトロノームのほうが、発音のタイミングがはっきりしていて、音が短いんです。

ここで先ほどの話を思い出してください。“ピッ”という電子メトロノームの音は“象の足跡”、機械式メトロノームの音は“カモシカの足跡”です。

練習を録音して聴き返すのがオススメなのですが、“ピッ”という電子メトロノームの音で練習していると、自分の弾いた音がA/B/C、どの位置でも大体合って聴こえてしまいます。一方、機械式メトロノームでやると、“Aは合っている/BとCはずれている”と気づきやすいんですね。

試しにAのタイミングで機械式メトロノームの音を鳴らします。そしてCのタイミングにずらした音を重ねます。すると……バラけて聴こえますよね?

また、“ピッ”という音を鳴らして、Cの場所でずらした音を重ねると、ちょっと微妙にズレが聴きづらいですよね。シビアなリズム練習では、鋭い音を使ったほうが、ズレに気づくことできるのです。

機械式メトロノーム以外の音だと、スティックやハイハットの音もアタックが短いです。ハイハットの音は余韻が長いですが、アタックの音は鋭いのです。逆に、電子メトロノームの音に限らず、例えば、シェイカーのようなざっくりした音は、シビアなリズム練にはオススメしません。

ビギナーの方や、楽しく楽器を弾きたい方は、電子メトロノームの“ピッ”という音でまったく問題ありません。ただ、“自分のリズムの精度を高めるためにクリックを使う”という方は気をつけてみてください。

リズム練に役立つクリックの使い方、まだまだポイントがあるので、いずれ話したいと思います。というわけで、クリックの音色の違い、練習に活かしてください!

それではまた次回!

石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。

◎Information
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