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REVIEW -『thaw』くるり

  • Text:Takahisa Kondoh

『thaw』くるり

メンバーの個性を帰納させるバンドマンの理想像

1997年から2020年に制作された未発表曲を収録するコンセプト・アルバム。これまで、形態を変化させながら常に進化を続けた彼らであるが、時を経て日の目を見た楽曲群と対峙すると、このバンドが持つ一貫性を痛感させられる。例えば⑨は、作曲当時の潮流であったグランジ的なサウンドを纏っていながら、肝となるのは岸田繁が紡ぐハーモニーだ。そして、その根幹を太く揺るぎないものにしているのが佐藤征史のベースであり、④のように、力強いビートとしなやかさを共存させたプレイは、その真骨頂。共演するメンバーの個性を楽曲に帰納させる佐藤の立ち振る舞いは、バンドマンのひとつの理想像だ。(近藤隆久)

◎作品情報
『thaw』
くるり
Speedstar/VICL-65396
発売中 ¥2,700 全15曲

参加ミュージシャン
【佐藤征史(b,contrabass,etc)】岸田繁(vo,g,etc)、ファンファン(trumpet)、大村達身(g)、吉田省念(g,cello)、世武裕子(p,org)、ルイス・ターナー/カーウィン・エリス(p)、森信行/クリフ・アーモンド/川本真太郎/BOBO/田中佑司/朝倉真司(d)