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フェンダー“バレット・ベース”【Kroi 関将典のベース偏愛録:見た目で選んで何が悪い!】第2回

  • Text & Photo (Bass) : Masanori Seki (Kroi)
  • Photo (Main Image) : Kohei Watanabe
  • Design (Main Image) : Hirotaka Sudo

「見た目で選んで何が悪い!」を合言葉に、Kroiの関将典が自身のベース・コレクションから“人と被らない”個性派ベース偏愛を語る連載の第2回。今回は、1980年代に短期間だけ生産された《Fender / Bullet Bass Deluxe》が登場。「チープで不器用な作りにこそ惹かれてしまう」——関さんがそんな“バレット・ベース愛”をたっぷり語ります(編集部)。

◎第1回はこちら

第2回:Fender / Bullet Bass Deluxe

第2回に紹介させていただくのは、1980年代のわずか3年ほどの間だけフェンダーが販売していた“Bullet Bass”(バレット・ベース)です!

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe
Fender / Bullet Bass Deluxe

ムスタング・ベースやミュージック・マスターに続いて作られていたステューデント・モデルで、一見プレシジョン・ベースのようでいて、ショート・スケール、ムスタング・ベース・タイプのピックアップ、テレキャス・ヘッドという独特な仕様のベースです。

自分の持っている個体はそのバレット・ベースの“デラックス”というモデル(Bullet Bass B34)で、ショート・スケールではなくロング・スケールになります。

2年前くらいにライヴで大阪に行った際に、心斎橋の三木楽器さんで購入させていただきました。

ロング・スケールでムスタング・タイプのピックアップが乗っているモデルはありそうでなかなかない仕様なので、このベースの大きな個性のひとつだと思います。(“なぜないのか?”ということですね。笑)

オリジナルのピックガード(白・1プライ)が経年劣化で変形してしまっていたので、原宿にある松下工房さんで現在のピックガードを制作してもらいました。

もともとがステューデント・モデルということもあり、塗装も液垂れしている部分があったり、ネックサイドもかなり角ばっていたりとチープさは散見できますが、現代となってはそれがまた良い味を出しているなと思います。

サウンドはよく言えば、ムスタング・ベース・タイプのピックアップということもあり個性的なチープさもありつつ、プレベのようなミドルのキャラクターも兼ね備えています。

個人の意見を正直に言えば、ジャパビンやビザールなどにあるローファイさやチープな部分を“良し”と思える感覚とは違ったチープさがあります(笑)。

細かく見てきましょう。まずはヘッドです。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ヘッド表
関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ヘッド裏

ヘッドはOPBのようなテレキャス・ヘッドを採用しています。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ヘッド表

ロゴに星があしらわれていてポップな雰囲気になってます。

次にネックです。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ネック

ネック材はメイプル。前述の通り、エッジがエッジエッジしています。角に丸みがなく握り心地は良くないです。握ったらすぐにチープな印象を持たれると思います。

そしてボディ。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ボディ・表
関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ボディ・裏

ボディ材は何でしょう……? 小ぶりなプレベといった形で、厚みも薄く、ピックガードはコントロール部あたりが少し内側に入っており、不細工になっててかわいいです。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ピックアップ

ピックアップはムスタング・タイプのスプリット・タイプ。

関が所有するFender / Bullet Bass Deluxe ボディ

わかりづらいかもですが、このようにあちこちに塗装の液ダレが見受けられます。ステューデント・モデルなので納得ですが、にしても雑ですね(笑)。

“バレット”はギターも存在しています。

再販などはされず、のちにバレットという名前だけ、日本のスクワイヤーで使われるような形になりました。

ムスタングや、ミュージック・マスターなどのステューデント・モデルはいまだなお多くの用途で使用されていますし、その形を広く浸透させていますが、同じステューデント・モデルでも影が薄く、再販や他メーカーが同仕様のモデルを作らないのには、ムスタングなどほど見た目やサウンドに個性がなかったり、さまざまな要因があると思います。

でも、だからこそフェンダーが80年代にだけ販売をしていたという点、お世辞にも成功したシリーズとは言えないかもしれませんが、少なからずそれも経ての今という点などに、強くロマンを感じます。

自分はプレベもミュージック・マスターも持ち合わせているため、今後レコーディングなどにおいて“バレットをどうしても使いたい”と思う場面はないかもしれませんが、今後も再販の可能性はなさそうですし、ステューデント・モデルということもあり状態が良い個体も少ないので、大切にしたいと思ってます。

さて、いかがだったでしょうか?

個人的な感想も多々ありましたが、バレット・ベースを紹介させていただきました。

やりきれないけれど、どこか愛らしい、そんなベースだなと自分は思います。

ほかのベースにはない愛着がある1本です。

Profile

Kroi 関将典 プロフィール
関将典

◎Profile
せき・まさのり●1994年9月20日生まれ、茨城県出身。R&B、ファンク、ソウル、ロック、ヒップホップなど、あらゆる音楽ジャンルからの影響を昇華したミクスチャーな音楽性を提示する5人組バンドKroiのベーシスト。バンドは2018年2月に結成され、同年10月にシングル「Suck a Lemmon」でデビュー、2021年6月には1stアルバム『LENS』でメジャー・デビューを果たした。2024年1月20日には初の日本武道館ワンマン・ライヴを成功させる。2024年6月に3rdアルバム『Unspoiled』をリリース。Kroi公式FC「ふぁんく らぶ」では、自身のベースを動画で語る“せきまさのりのベースってそんなに必要ですか?”を更新中。

◎Information
Kroi HP X Instagram 
公式FC ふぁんく らぶ
関将典 Instagram