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【追悼】ブライアン・ウィルソンが語った、キャロル・ケイとのベース録音【BM Throwback】
ブライアン・ウィルソンが亡くなった。米国時間6月11日(日本時間12日)、家族が公式サイトで発表した。享年82。
ベース・マガジンWEBでは、その偉大な功績を偲び、本誌アーカイブのなかからブライアンの言葉を紹介したい。ここでは、幻の名作『スマイル』を2004年に発表した際のインタビューからの一節を取り上げる。ビーチ・ボーイズの制作における、キャロル・ケイとのベース・レコーディングでの共同作業について語られている。

私がプレイすべき音を書き記し
キャロル・ケイがそれを弾いただけだ
——『スマイル』のマスターをこんなにも長く眠らせておくことになったのはなぜですか?
音楽自体もヴァン・ダイク・パークスの歌詞も、時代を先取りしすぎていると判断したせいだよ。だから結果的にリリースを2004年まで遅らせることになった。
——発表された音源は、レコーディング開始当時のオリジナル・セッションが主体ですか? それとも最近になってからの再録音ですか?
その両方だよ。私は現在自分のバンドを持っている。そこでオリジナル・テープの録音を活かすとともに、新しいトラックも少し作ることにした。『スマイル』の(オリジナルの)曲作りとレコーディングは第二楽章までだったので、2004年になってから第三楽章を書き加えたということだ。
——アルバム自体はあなたの単独プロデュース作品ですか?
私が自分でプロデュースしたが、ダリアン(サハナジャ、キーボーディスト兼ブライアンの音楽セクレタリー)の助けも借りた。
——あなたがキャロル・ケイのようなセッション・プレイヤーとの二人三脚で活動を続けてきたことはつとに有名ですが、セッション・ミュージシャンを起用するようになったのはいつ頃のことですか?
65年頃からだ。キャロルは私が採用した初のベーシストだった。その後レイ・ボールマンや、アップライト・ベースをプレイするライル・リッツなどが関わってきた。誰もがよくやってくれたよ(註:実際にボールマンがビーチ・ボーイズのセッションでプレイしていたのは、ケイがギターからベースへコンバートされるよりも前のことである)。
——キャロルとの初のセッションに関して、何か特別な思い出はありませんか?
ないね。覚えているのは彼女がピックを使ってプレイしていたということだけだ。「カリフォルニア・ガールズ」のメイン・ベーシストは彼女だからね。これは彼女が参加したなかでも初期のセッションでレコーディングされたものだ。彼女はとてもいい仕事をしてくれた。作品の仕上がりが素晴らしいよ。
——数々のセッション・プレイヤーを採用してきたあなたですが、彼らと組む際には特定のベーシストのプレイを要求したんですか? 例えばキャロルの場合、決め手となったのはトーンですか? それともアタックですか?
音を正確にプレイしてくれるのであれば、彼女のプレイ・スタイルなどいっさい気にならなかったね。こだわったのはその点だけだ。
——しかし、例えばピック弾きのプレイヤーと指弾きのプレイヤーとでは明らかにトーンに差が出るでしょう。そういう意味で、それぞれのベーシストのサウンドの判定基準をお聞きしたいんですよ。
……私がサウンドにこだわったのは、ブースに入ってミキシングに当たるときだけだったね。
——……では、キャロルにはどの程度の指示を与えたんですか?
私がプレイすべき音を書き記し、彼女がそれを弾いた。それだけだ。そのとき私が“頼むから指定された音をすべてプレイしてくれ”と要求したところ、彼女は私の望んだとおりの演奏をしてくれた。しかし、私の割り振ったコード上にミスが発覚することもたまにあったよ。
そんなとき私は即座にブースから出て、ミュージシャンに変更を告げた。“訂正すべき箇所があった。どうかこのように修正してプレイしてくれないか”と言えば、彼らはちゃんとちゃんと指示どおり変更を加えた演奏をしてくれた。
——あなたはセッション・ミュージシャン全員に譜面どおりの正確なプレイを要求していたんですか?
ああ、そうだよ。私はその点には厳しかったからね。どんなプレイヤーにも、“どうか記譜してあるとおりにプレイして欲しい”と依頼したよ。
——あなたの言いつけに背いて譜面から逸脱する者はいませんでしたか?
(ほくそ笑んで)いない。どのミュージシャンも忠実なプレイをしてくれた。
——腕のいいセッション・ミュージシャンたちのプレイの力量を考慮して、ベース・ラインの書き方を変えようとは思いませんでしたか?
いや、あまりそういった考えは浮かばなかった。知ってのとおり、常にベースはシンプルにまとめるよう心がけてきたよ。
INTERVIEW : Karl Coryat
(↓インタビュー後篇につづく)

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