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    “どでかいネズミが生まれそうです” – 1995fx / Ravenous【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】第22回

    • Text : Hirofumi Takamatsu

    生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史(The Novembers/Petit Brabancon)による連載【その箱の中は地獄より深い】。マニアも唸るディープな分析から、ビギナー向けの実践的な解説まで、エフェクターの奥深い世界を独自の視点で掘り下げます。

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    第22回:どでかいネズミが生まれそうです

    前回前々回は読者の方々より質問を募り、それに回答していくという回でした。

    改めましてご質問いただいた方々、ありがとうございました。

    普段はこうして、僕が一方的に書いた文章をご覧いただいている状況、いわば一方通行なコンテンツでしたが、今回の試みで読者の方々とコミュニケーションをとることができたような気がしていて、とても楽しかったです。

    いただいたご質問も、僕なりに誠実に楽しく回答させていただきました。

    また次の機会も必ず設けますので、今のうちから僕に聞いてみたいことを考えておいていただけると幸いです。

    さて、今回は通常営業です。まずはお写真をどうぞ。

    こちら、いつもお世話になっている1995fxの杉本氏より送っていただいたペダルです。

    一台(上写真)は、1995fxの新製品であるRavenousに“クリーンミックス”(原音ブレンド)をつけていただいたもの、もう一台(下写真)は僕が“こういうのがほしいな”とアイディアを出して、形にしていただいた試作機です。

    後者の試作機についてはまだ詳しいレビューなどは出来ないのですが、今回はRavenousについての感想と、普段“製品開発のお手伝い”をするときにどんなことをしているのかをご紹介できたら。

    1995fx製Ravenousについて

    ご存知の方も多いかもしれませんが、ディストーションにPro-coのRATという有名な機種があって、Ravenousはそこからインスパイアされて作られたそうです。

    もしかしたらどこかでお話ししたことがあるかと思いますが、僕は以前いろんな年代のRATを試していた時期がありました(結局少し古めのRAT2が好みだというところに落ち着きました)。

    そのくらい好きな機種なので、今回の新製品も楽しみにしていました。

    そして実際にRavenousを弾いてみると、確かにRATのあの感じがあります。

    ハイのギャリギャリとした部分や、歪みの粒の粗さなどは特徴をとらえています。

    ただ、RATより圧倒的に扱いやすいです。

    RATってどうしても低音域はすっぽりなくなってしまうのですが、Ravenousはそこがしっかり残っている。なんだったらBASSコントロールでさらにブーストもできる……。

    あと、RATってアタックが少し鈍るというか、くしゃっとする感じがあるのですが、そこもしっかり改善されていますね。本当に使いやすくて驚きました。

    今回、“クリーンミックス付き”ではない通常仕様のRavenousも送っていただけたのですが、それでも充分とても良いです!

    ただ、クリーンミックスがあるとミッドの芯の部分などは補えるので、やはり安定感は出ますね。ゲインを上げていくとファズっぽくなるのですが、そういうアグレッシブな音もすごくいい感じです。

    製品開発のお手伝い

    さて、杉本氏は新製品ができるとクリーンミックスを付けて送ってくれるのですが、今回は基板の一部がソケット式になっていて、パーツを入れ替えられるようになっていました。

    基板ソケット部の写真。写真提供:1995fx

    もともとは“より僕好みに使いやすいように”という配慮かと思うのですが、とても良い製品なのでせっかくなら新製品として出せたらどうかなと思っています。

    ということで、せっかくなので製品開発のお手伝いをさせていただく際の作業や考え方なども書いてみます。

    作業といってもひたすらトライアンドエラーですが……。

    パーツをつけては換え、つけては換えを繰り返し……そういった地道な作業を経てどのパーツを使用するかを決めます。これが結構大変な作業で、試していると沼にハマってくるというか、だんだんわからなくなってくるんですよね。

    “あ、これはさっき好みじゃないと思っていたのに、今聞いたら良い感じだな……”とか、逆に“本当にこれで良いのか?”とか……。なので、あらかじめしっかりとしたビジョンが必要になります。そのあたりはベースの音作りと同じですよね。

    そしてRavenousの場合、それは“BASS”コントロールの周波数帯域を調整するパーツでした。

    音作りの際に自分のなかにルールというかポリシーがあって、たとえば今回、“Ravenousをベース向けにアレンジするとしたら?”というテーマであったので、まずはオリジナルの良さを潰さないことを意識しました。

    そのうえで“この周波数ポイントで効いてくれると良いな”というところを探り……好きなポイントが決まったら、そこ(今回だったらBASSの周波数)を変化させたことによって音のバランスがどうなったかをチェックしつつ、気になった点などを伝えて、一度送り返すという流れです。

    今はちょうどここの段階で、新たにこういう機能はつけられるか、など提案させていただいています。

    基本的にはこれの繰り返しで、杉本氏と僕のふたりが納得できる状態になるまで続けます。

    もう一台の試作機については、とりあえず作っていただいた状態で、ここからもっとこうしたい、という点をなるべく具体的にお伝えして、改良していくというところです。

    現状でもかなり良い感じなので、ここから楽しみですね!

    どちらも無事に製品化できれば良いのですが……!

    杉本くん、頑張りましょう!

    ◎Profile
    たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からThe Novembersとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。Petit Brabanconは8月7日に2nd EP『Seven Garbage Born of Hatred』を発表している。

    ◎Information
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