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    『ONE PIECE 〜夢のルフィ海賊団誕生!〜』たった3和音でアニソンを再現する【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第27回

    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
    • 挿絵:長谷川カオナシ

    毎回、レトロゲームの音楽の魅力を、独自の視点で伝えるこのコーナー。今回は、本編の漫画も佳境に入ってきた『ONE PIECE』のゲームから紹介します。アニメ主題歌の「ウィーアー!」もゲーム内で使われていますが、ゲームボーイ故に鳴らせる音も限られています。そのため改めてアレンジされた曲を聴いてみると……いろいろなことが発見できました!

    楽曲を一度解体し、根幹にフォーカスし再構築する

    お世話になっております。

    今年度の奇数月は喫音堂の月です!

    いやぁまさか五老星があんなことになるなんて思いませんでしたね。

    そしていつも飄々としている黄猿があんなに感情を剥き出しにするとは……。

    あ、失礼しました。漫画『ONE PIECE』の話です。

    何しろ私が子供の頃から続いている漫画ですからね、

    最終章は目が離せません。

    長寿作品なだけあって、『ONE PIECE』も昔から多くのゲームが発売されています。

    今回は『ONE PIECE』のゲームに触れていきましょう。

    『ONE PIECE〜夢のルフィ海賊団誕生!〜』(2001年/バンプレスト)(※1)

    ゲームを開始するとまず、

    タイトル画面で当時のアニメ主題歌「ウィーアー!」(※2)のインスト・アレンジが流れます。

    主題歌が流れるとアガりますよね!

    同年にリリースされた『グランドバトル!』はPlayStationなので「ウィーアー!」の音源がそのまま流れますが、

    「夢のルフィ海賊団誕生」はゲームボーイ。

    ゲームボーイで同時に鳴らせる音数はファミコンと同じで、

    基本的には3和音+ノイズ1音となっております。

    この制約のなかで「ウィーアー!」を再現することは可能なのでしょうか?

    まずノイズ・トラックはドラムを務めます。

    音程のあるトラック1〜3があるとして、

    メロディは外せないのでそこに「トラック1」を割くことになります。

    次にベース。ベースは終始鳴っているのでここに「トラック3」を割り当てましょう。

    残るは「トラック2」のみ。

    「ウィーアー!」はドラムとベースと歌以外にも、

    ギター、ピアノ、ストリングス、シンセサイザー、ブラスの音が効果的に鳴っています。

    喫音堂第2回で取り上げたように、やはりここで「トラック2」が大活躍します。

    歌メロの裏では16分のアルペジオで伴奏をしつつ、歌が途切れたタイミングでは

    その時に一番目立つ楽器のフレーズをカバーしているのです。

    さらに、今回耳コピするに当たって、

    原曲とゲームボーイ・バージョンの両者を聴き比べてびっくりしました。

    抽象化されたゲームボーイ・バージョンにおいても、なんとベース・ラインはほぼ原曲のままなのです。

    楽器の音が多くても少なくてもそのまま採用されるベース・ライン。

    3和音化へのアレンジング技術もさることながら、

    原曲がどれだけ優れた楽曲か、ということも伺えます。

    アニメ原作のゲームというのは星の数ほど発売されています。

    最近のゲーム機であればテーマソングの音源をそのまま再生できますが、

    ファミコンやゲームボーイの時代はそうもいきません。

    楽曲を一度解体して、その根幹にフォーカスし再構築する必要があります。

    今聴き返してみても当時のサウンド・プログラマーたちの技は素晴らしいです。

    ファミコンで今思いつくものをざっと挙げてみます。

    『ゲゲゲの鬼太郎』シリーズ(バンダイ)は1986年の『妖怪大魔境』、

    当時の3期アニメのロック調のオープニングがファミコン音源に見事に落とし込まれています。

    1987年の『妖怪軍団の挑戦』はタイトル画面もさることながら、

    パスワード入力画面、フィールド画面でもアレンジ違いが用意されています。

    1988年『鉄腕アトム』(コナミ)のタイトル画面。ベース・ラインはコナミ特有のオクターブ・アプローチ

    (通称「ドゥッテレ」)を用い、これまた「アトム✕コナミ」感が素晴らしいです。

    1986年の『ドラえもん』(ハドソン)。開拓編のBGMのハドソン感の強いノリノリの主題歌アレンジは必聴です。

    一方で1990年の『ギガゾンビの逆襲』(エポック社)タイトル画面の『MOTHER』風アレンジも味わい深く、

    現代の街BGMの主題歌も原曲のベース・ラインをそのまま採用しつつ、見事にファミコン音源化しています。

    作曲をする際、楽曲の要素を一度抽象化してみることによって、

    ベース・ラインの作り方も見えてくるのかもしれません。

    それではまた再来月までご機嫌よう。

    (※1)
    ^ サウンド・デザイナーは富樫則彦先生。現在はnoriという名義でJ-POPユニット「nj」のメンバーとして活躍中。
    数多くのゲーム音楽を手掛け、なかでも
    『クレヨンしんちゃん』や『まじかる☆タルるートくん』などアニメ発の
    キャラゲーの音楽を担当されることも多々ありました。
    『ストリートファイターII』のゲームボーイ移植版の音楽なども担当されています。

    (※2)
    ^ 歌はきただにひろし先生。作曲はONE PIECEはじめ数々のアニメ作品の作曲を担当されている田中公平先生。
    初代主題歌である本曲は、ONE PIECEの顔となるよう意識して作曲されたそうです。
    その意図どおり、『ONE PIECE』のゲームではよく「ウィーアー!」のインスト・アレンジが用いられています。
    しかしこの曲、いわゆる「詞先」だったってマジかよ! スゲー!

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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