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『ロマンシング サ・ガ3』珠玉の雪ステージBGM【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第23回
- バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
- 挿絵:長谷川カオナシ
毎回、レトロゲームの音楽の魅力を、独自の視点で伝えるこのコーナー。今回は、名作として根強い人気を誇る、『ロマサガ』シリーズから楽曲をピックアップしました。
楽器の音色やコード進行で、雪や冬の雰囲気を作り出す
お世話になっております。
今年の冬は暖かい日があると思えば突然寒い日が来たりと
気候が安定しませんね。
東京でも雪の降る日がありました。
ゲームの世界にも、昔から“雪ステージ”というものがあります。
アクションゲームでは足元の滑る高難易度のステージ。
RPGでは敵が氷属性の攻撃をしてくるステージ。
そしてそのBGMは、専用のものが用意されているケースが多かったです。
今日はなかでも私の最も好きな“雪ステージ”のBGMを喫音していきます。
『ロマンシング サ・ガ3』(1995年/スクウェア)(※1)
名作RPGシリーズ『ロマサガ』。
プレイヤーはゲームを始めるに当たって、
8名の主人公から1名を選択します。
この8名にはそれぞれ専用BGMが用意されており、
選択した主人公に応じて街BGMが変化するという仕様が特徴的です。
ただ、一部の街には、選択した主人公に関わらず、
その街固有のBGMが流れるものもあります。
それこそが「私が町長です」でお馴染みのキドラント。
……ではなく、そのご近所の『ポドールイ』という雪国です。
街に足を踏み入れたプレイヤーの視界に広がるのは、雪化粧した建物の印象的な景色。
そしてグロッケンの響きの特徴的なBGMが耳に入って来ます。
個人の感想ですが、さまざまなゲームの雪ステージのBGMには
鈴やグロッケンといった“金属”の響きの音色がよく用いられている印象があります。
童謡なんかでも、クリスマスソングといえばこんな感触の音色ですよね。
コードの流れも大変美しいです。
最初の2小節はC→Bm→Am→Gという進行。
Cは明るい響きの和音ですが、メロディが「ミ」「シ」流れるので
Emという悲しい響きの和音の要素も香ります。
その緊張感のある響きから、徐々に下降してGという優しい響きのコードに
落ち着いていく流れになっています。
次の2小節は若干ややこしいですがC→Bm→Am→A→B7sus4→Bという進行。
注目したいのはAm→Aの流れとB7sus4→Bの流れです。
この曲のキーはト長調なので、本来ド#の音とレ#の音は登場しませんが、
AとBの時には流れ上例外的に登場しています。
この“例外”感が曲の流れの中で特に効いています。
ポドールイの曲は2つのメロディ・パートで構成されています。
前半8小節はグロッケンのメロディ。
後半9小節はクラリネット的な木管楽器のメロディ。
いずれも伴奏はストリングス中心のゆったりとしたものですが、
後半の9小節にはチェロがさりげなく登場し、ベースの役割を担います。
チェロの居ない前半は冬の夜道の心細さを感じさせられるし、
低音が登場する後半の安定した響きからは、街の灯の暖かさのようなものを感じます。
この低音の“出し入れ”が楽曲にもたらす効果は
ベーシストとして無視できません。
シンプルな構成だからこそひとつひとつのアプローチが輝く、
大変美しい曲ですね。
それではまた来月までご機嫌よう。
(※1)
^
音楽はイトケンこと伊藤賢治先生。喫音堂第10回では
同じく伊藤賢治先生の『ロマサガ2』の戦闘曲について書きましたので
そちらもご参照いただけると幸いです!
◎Profile
はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。
◎Information
長谷川カオナシ
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クリープハイプ
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