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麻酔作用【高松浩史の音色探索 その箱の中は地獄より深い】– 第3回
生粋のエフェクター・フリークとして知られる高松浩史による、以前本誌にて掲載していた当連載がBM Webにて復活! マニアックなものからビギナー向けのお勉強企画まで、豊富な機材知識を持つ高松がエフェクターを語り尽くします。第3回は人気国産ペダル・ブランドKarDiaNより、ベーシストにオススメの万能オーバードライブをピックアップ!
KarDiaN CHCl3 CHLOROFORM “ADD CBF”
Bass Magazine Webをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。高松浩史です。
10月に入り、ガクッと気温も下がってきました。皆さま、体調など崩されておりませんでしょうか。
さて、第3回目は、最近お気に入りのオーバードライブ・ペダルを紹介しようと思います。それがコチラ。
KarDiaN CHCl3 CHLOROFORM “ADD CBF”です(※以下、クロロホルムと呼びます)。
このクロロホルムという機種はKarDiaNブランドのデビュー作、最初にリリースされた3機種のうちのひとつです。約6年使用していますが、今でもKarDiaN製品のなかで一番好きな機種です。
基本的にKarDiaNさんが作るペダルはレンジが広く取られていて、ベースでも問題なく良い感じになる機種が多い印象です。それは低音域がしっかり残る、といった単純な話ではなく、なんというか、“音の密度がしっかりしている”、“中低域がドッシリしている”といった表現が近いかもしれません。音が太く感じるんですよね。
このクロロホルムという機種は、そういった“音の太さ”が顕著に出ているというか。とにかくベースとの相性がばっちりです。プレゼンスの煌びやかさはあるのに、少しクシュっとしているような、不思議なバランスです。
個人的に、このペダルはブースターからロー・ゲイン・ドライブで使用したときの音が好きで、実際にクリーンに対して、強くピッキングしたときにほんの少し歪むようなセッティングで使用することが多いです。
僕のYouTubeチャンネルでも取り扱ったことがあるので、ぜひ以下の動画を観てみてください。
で、僕の所有しているクロロホルムは改造をしてもらっています(※上の動画は改造前に撮影したものなので、未改造の状態です)。
その内容は、
・クリーン・ミックスを追加。
・そのミックスされたクリーン側にローパス・フィルター(ハイカット・フィルター)を追加。
・クリーンのヴォリューム(ハイ・カットした際にヴォリュームが落ちるため)を追加。
以下のような感じ。
現在は冒頭の写真のように、筐体下側に収まっているようです。確かにこの位置はアクセスしやすいですよね。ノブも小さくて良いですね。
僕はもともと、クリーン・ミックス(原音ブレンドとも言いますね)があまり好きではありませんでした。特にハイゲインなディストーションやファズなどにクリーン・ミックスをすると、クリーンとエフェクト音がうまく混ざらず、ふたつの音が鳴っているように聴こえてしまうし、クリーン・ミックスをすることによってそのエフェクトが弱く聴こえる(例えばディストーションやファズであれば“歪んでいる感じ”が薄くなるというか……)ような感覚があったためです。
そこで考えたのが、“高音域をカットしたクリーンを混ぜる→クリーンにハイカット・フィルターをかける“という手法でした。それをKarDiaNさんに提案したところ、快く改造をしていただき、ばっちり仕上げていただきました(最初はC10H12N2O “SEROTONIN”という機種でお願いしたと思います)。
それが今ではレギュラー化されて、“ADD CBF”という名前になったそうです。とても効果的な手法なので、こうして広まって嬉しいです。
ただ、この改造、土台はなんでも良いというわけではなく、もともとのエフェクターがしっかりしているからこそだなとも思います。
そして、この機種をなぜ最近気に入っているかというと、非公式(KarDiaNさんに、パーツ的にも大丈夫であることは確認済み)なのですが、18Vで駆動したときの音がかなり良いことに気づいたためです。電圧が上がることで中高域辺りのハリが増し、音の潰れ感、割れ感も減ります。
また、ゲインも下がるので、よりブースターやローゲイン・オーバードライブとして使用しやすくなりました。今僕が所有しているなかで、ローゲイン・オーバードライブとしては一番お気に入りかもしれません!
以上、KarDiaN CHCl3 CHLOROFORM “ADD CBF”のご紹介でした。是非お店などで弾いてみてください。
それでは、今回はこのへんで。ご覧いただきありがとうございました!
◎Profile
たかまつ・ひろふみ●栃木県出身。2002年に高校の同級生だった小林祐介(vo,g)とともに前身バンドを結成する。2005年からTHE NOVEMBERSとしての活動を開始し現在までに8枚のフル・アルバムなどを発表している。2021年からは京(vo)、yukihiro(d)を中心としたプロジェクトPetit Brabancon、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのメンバーとしても活躍している。その他、Lillies and Remains、圭、健康のサポート・ベーシストも務めている。
◎Information
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