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    例の映画を観て参りまして。『ドクターマリオ』雑談ときどきベース【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】- 第14回

    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)
    • 挿絵:長谷川カオナシ

    2022年にメジャー・デビュー10周年を迎えたクリープハイプ。今回は、今話題のあの映画と関係する、落ちものパズル・ゲームの音楽を紹介していきます。

    豊かな構成展開で、聴覚面からもゲームを盛り上げる!

    お世話になっております。

    ついに私も観て参りましたよ!

    『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。

    いやぁ素晴らしい映画でした。

    私が子供の頃から没入していた2D横スクロールの世界。

    30余年分の想像を遥かに超える高解像度の色彩と立体感が、

    ジェットコースターのようなスピードで駆け抜けてゆきました。

    流れゆく景色の中には懐かしきシンボル達が散りばめられています。

     “WRECKING CREW”のワッペンをあちこちに着けたオジサン。

    知ってるよ、名前は違っても君は君だ。

    「But our princess is in another castle!」

    これお前らの流行語だったんか。

    大猿と戦うのは赤い鉄骨の上に限るよな!

    虹色の道は敢えてコースアウトすべきだし、

    名も無きヒーローの出発点は「JUMP MAN」だった。

    そして何より物語を盛り上げるサウンド・トラックはもちろん、

    私たちがかつて冒険の中で聴いてきたメロディです。

    今回はマリオが主役のゲームをやっていきましょう。

    『ドクターマリオ(1990年/任天堂)』(1990年/任天堂)(※1)

    私が物心ついた頃から家にあったROMです

    なん十年も活躍しているゲームの主役というものは、いろいろな職を経験するようです。

    本作のマリオは医師。

    彼の投げるカプセルでウイルスを消していくという、落ちものパズル・ゲームです。

    このゲームではプレイ中のBGMを「FEVER」と「CHILL」の2曲から選択できます。

    ほかにあるのは、タイトル、ステージ・セレクト、エンディング・デモの曲。

    トータルの曲数はなかなか少なめですよね。

    これでゲームは盛り上がるのでしょうか?

    しっかり盛り上がります。

    有名な楽曲「FEVER」を見てみましょう!

    ……とは言ってもここに譜面を載せるわけにはいきませんから、

    最初の18小節、メインテーマの階名を書き出してみましょうか!

    いかがでしょうか。

    チンプンカンプンですよね。

    同じメロディの箇所は同じ色でマークしてみました。

    こうしてみると、かなり法則的な構成になっているのがわかります。

    反復という手法は、何かを聴き手に印象付けるのに効果的です。

    また、背景には拍数を書きました。

    奇数小節はメロディが3拍で止んでいるケースが多いですね。

    前の小節と足すと7拍歌って1拍休むようなリズムです。

    お休みの1拍にはビリビリ音が入ったり、ただの沈黙にしてみたり、

    「ドーン」というキメを入れてみたりと様々な遊び心がこもっています。

    さらにこの後も別のメロディになったり、ベース・ソロ的なパートがあったり、

    ブレイクの続くパートがあったりと、展開が多いです。

    “落ちものパズル・ゲーム”というものは、

    画面の視覚的な変化に乏しいもの(※2)です。

    ドクターマリオのBGMは1曲の中に豊かな構成展開を盛り込むことにより、

    聴覚面から見事にゲームを盛り上げています!

    さて、今回はファミコンのドクターマリオを喫音していきました。

    いつまでも遊び心は持っていきたいものですね!

    それではまた来月まで御機嫌よう。

    (※1)
    ^ 音楽は田中宏和先生。喫音堂第9回でも触れたように、『MOTHER』や『レッキングクルー』などビデオゲーム黎明期からさまざまなゲームの作曲を手がけて来られました。 今回取り上げた「FEVER」の【なんかスゲー音】は本当に田中先生らしい“スゲー音”だなと思います。 私、今回は件の映画を観る前に録り始めたんですけど、 映画を観た今は「『レッキングクルー』にしても良かったかもなあ」とちょっと思いました。

    (※2)
    ^ やや乱暴に表現しましたが、パズルゲームの画面において一番大事なのは見やすさです。 また『ドクターマリオ』はメイン・ウィンドウ外でもカプセルを投げるマリオのアニメーションがあったり、歩き回るウィルスがダメージによって転げ回ったりと、 視覚的に退屈させない演出がいろいろと盛り込まれています。

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2023年3月29日に新作EP『だからそれは真実』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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