プランのご案内
  • NOTES

    UP

    【ベース初心者のための知識“キホンのキ”】第12回 – スケールって何? どう使う? 〜スケール基本篇〜

    • Text:Makoto Kawabe

    ここでは、“ベースを始めたい!”、“ベースを始めました!”、“聴くのは好きだけど僕/私でもできるの?”というビギナーのみなさんに《知っておくと便利な基礎知識》を紹介します。第12回目のテーマは“ベーシストが知っておくべきスケールの知識”です。

    はじめに

    前回はコードでしたので次はスケールです。“ミクソリディアン・スケール”とか“ハーモニック・マイナー・スケール”とか、小難しいネーミングのスケールがたくさんあるので、拒絶反応を示す人も少なくないかもしれませんが、意味と構造を知ると実はそれほど難しくありません。

    解説者の腕の見せどころなのかも……なんて自らハードルを上げてしまいましたが、今回は難しい話に入る前の基礎篇という感じで、基本的なスケールについてのみ解説していきますね。

    スケールとは何か?

    ベースは任意の弦/ポジションを押さえることで音の高さを変えられますが、それぞれの音の高さには12種類の音名がついています(当連載第3回参照)。これら12種類の音は闇雲に並べて弾いてもメロディ感のある音楽にはなりません。そこで、12種類のなかからメロディのよりどころとなる音を選別するわけですが、この選別した音の並べ方を“スケール(音階)”と言います。

    スケールは通常7音構成で、もっともポピュラーなのが“メジャー・スケール(長音階)”です。音の並べ方(各音のインターバル)がひとつでも違うとスケール名も変わり、違うスケールになってしまうのでひとつも間違えられません!

    ……などと脅すようですが、安心してください。多少間違っても思い切りよく元気に演奏することのほうが大事です(笑)。

    スケールは並べ始めの音がトニック(主音)となり、スケール名の冒頭にこの“主音”をつけて表記します。C音から並べたメジャー・スケールは“Cメジャー・スケール”、F♯音から並べれば“F♯メジャー・スケール”です。

    また絶対的な音の高さを示す“音名”に対して、各音の相対的な音の高さを示すのが“階名”です。日本ではメジャー・スケールの主音を“ド”とした“ドレミファソラシ”で表記することが一般的です。

    ※“P5th”、“M3rd”などの意味については、前回をチェック!

    というわけで、まわりくどい説明になりましたが、みなさんがよく知っているドレミファソラシの音の配列が“メジャー・スケール”ということです。

    Cメジャー・スケールとF♯メジャー・スケールは、それぞれの構成音の実音は異なりますが階名ではどちらも“ドレミファソラシ”で表現され、ベースの指板上での配置も同じです。なのでベースの場合は(初めのうちは)スケールを上図のような指板上のブロック形状で覚えるのがいいと思います。

    スケールとは何か:視点を変えると?

    当連載の前回のテーマは“コードについて”でしたが、コードは三和音を基本として音を積み重ね、各音のインターバルによって異なるコード・ネームが与えられていました。例えばメジャー・セブンスは、Root、M3rd、P5th、M7thの4音で構成されていましたが、メジャー・スケールの構成音はRoot、M2nd、M3rd、P4th、P5th、M6th、M7thの7音で構成されています。あれ? メジャー・スケールはメジャー・セブンスのコード・トーンにM2nd、P4th、M6thを加えただけですね。つまり、M2nd、P4th、M6thはそれぞれM9th、P11th、M13thとオクターヴ違いの同音程であり、スケールとは“コード・トーンをテンション・ノートで補完したもの”とも表現できるわけです。

    スケールはコードに2nd、4th、6thを加えてコード・トーンの隙間を埋めた音列と同じ。
    コードに3つのテンション・ノートを乗せるとスケールと同じ構成音になる。
    例えばメジャー・スケールのスケール・ノートは
    メジャー・セブンスの各コード・トーンと3つのナチュラル・テンションだ。

    コードとスケールはニワトリと卵の関係にも似ていますが、ひとつのスケールから導き出されるコードはひとつしかないのに対して、その逆はひとつではありません。コードから特定のスケールを導き出すには、コードが使用されている楽曲内での各コードの役割を判別するなどの作業=“コード解析(アナライズ)”が必要です。コード解析についてはまた別の機会に解説しますが、少なくともアンサンブルのなかでは自分の好きなスケールを自由に弾いていい場面はほとんどない、と覚えておいてください(笑)。

    ベーシストにとってスケールとは?

    “スケールはコードよりも難解”と苦手意識を持つ人も多いかもしれませんが、実際のところベースの演奏をするうえでは“どんなときにスケールの知識が必要?”という疑問もあるかと思います。先述のように、スケールの知識が最大限に生かされるのはコード進行のみが明示されている楽曲でベース・ラインを作るときです。

    以下のようなコード進行を例に挙げてみましょう。コードが明示されていればルート弾きは問題ないですね(Ex.1)。コードの知識があればそれぞれの小節でコード・トーンを使ったベース・ラインも構築できるでしょう(Ex.2)。ではコード・トーン以外を使ったアプローチはどうでしょうか?

    ふたつの音をスムーズにつなげるパッシング・ノート(経過音)を使う術はありますが(Ex.3)、コード・トーンとパッシング・ノートだけでは自由なフレーズは作りにくいですね。ここで初めてスケールが活用されます(Ex.4)。コード解析によって各小節における適切なスケールを見出し、ベース・ラインに活用できるわけです。

    キーがAメジャーなので、A、D、Eの各コードに対してAイオニアン・スケール、Dリディアン・スケール、Eミクソリディアン・スケールと判断でき、それぞれのスケール・ノート(スケール構成音)を活用してベース・ラインを構築している(キーの判別方法や各コードに対するスケールの判別方法は次回以降に解説します)。

    コード解析の知識がなければスケールは使えないかというと、そんなこともありません。セッションなどではシンプルなコード進行でアドリブ・ソロを弾くこともあるし、スケールを弾くことでメロディが浮かんだり、楽曲のアイディアが生まれたりもします。スケールを弾くことでフィンガリングが忙しくなるので運指練習にも最適です。いきなり多くのスケールを覚えるのは大変なので、重要なスケールから少しずつ覚えていきましょう。

    各メジャー・コードに対してRoot/M3rd/P4th/P5thと同じモチーフを当てはめており、一聴すると問題ないようにも聴こえるが、2小節のG音はAメジャー・キーにないので、メロディやハーモニーに対して違和感が生じる可能性が高い。ただし、譜例がブルースを基調とした楽曲であれば各メジャー・コードともミクソリディアン・スケールが適当とも判断できるので、あながち間違ったアプローチと断定されるものではない(ブルースについては次回以降に解説します)。

    メジャー/マイナー・スケールの重要性 キーとは何か?

    先述のメジャー・スケールとともに重要なのがマイナー・スケール(短音階)です。マイナー・スケールは“ラシドレミファソラ”、つまりメジャー・スケールを6番目(“ドレミファソラシド”のラ)から並べ直しただけのものです。そして、なぜこのふたつのスケールが重要なのかといえば、ポピュラー音楽の多くがこのふたつのスケールをもとに作られているからです。

    楽曲のもとになっているスケールと主音を提示するのが“キー(調)”で、Cメジャー・スケールに基づいて作られた楽曲のキーは“Cメジャー・キー(ハ長調)”、Aマイナー・スケールに基づいて作られた楽曲のキーは“Aマイナー・キー(イ短調)”となります(会話上では”キー”が略されることが多いです)。また、Cメジャー・キー(CDEFGABの各音)とAマイナー・キー(ABCDEFGの各音)のように同じ音名で構成されるキーを“平行調”といいます。同じ音で構成されているとはいえ、主音が異なるのでまったく雰囲気の違う楽曲に仕上がります。

    ちなみに、マイナー・スケールの正式名称は“ナチュラル・マイナー・スケール(自然的短音階)”です。簡易的に“ナチュラル・マイナー・スケール”を“マイナー・スケール”と表記することが多いですが、実はマイナー・スケールには“ハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階)”と“メロディック・マイナー・スケール(旋律的短音階)”の合計3種類があります。なぜ3種類あるのか、具体的にどう使い分けるのか、は別の機会に説明しますね。

    また、“ドレミファソラシとラシドレミファソがあるならレやファから始まるキーやスケールはないのか?”という疑問を持たれる人もいるかもしれません。いい質問です(笑)……あります! でも、長くなるのでこれについてもまた別の機会にしましょう。

    ペンタトニック・スケールを覚えよう

    “ペンタトニック・スケール”とは5音で構成されるスケールです。なかでも利用頻度が高いのがメジャー・ペンタトニック・スケールと、マイナー・ペンタトニック・スケールです。それぞれメジャー・ペンタ、マイナー・ペンタと略されることも多いですね。どちらも階名上の“ファ”と“シ”を除いた“ドレミソラ”のスケールで、半音で隣り合う音がないことが特徴です。ある程度適当に弾いても濁りが少なくそれなりのメロディができるので重宝するわけですが、ペンタトニック・スケールの重要性や活用方法はココでは語り切れないのでまた別の機会に。とりあえずはブロック形状で覚えておいてください。

    メジャー・ペンタトニック・スケールはファ(4番目)とシ(7番目)を抜いたスケールなので“ヨナ抜き”などと呼ばれますが、マイナー・ペンタトニック・スケールは“ニロ(2番目と6番目)抜き”であり、4番目と7番目ではないので注意しましょう。

    ちなみに、マイナー・スケールのレ(4番目)とソ(7番目)を抜くと“平調子”という箏(こと)の調弦に用いられる極めて和風の音階になり、メジャー・スケールをニロ抜きすると沖縄の音楽に用いられる琉球音階になります。ペンタトニック・スケールは日本の民謡をはじめ自然発生的に生まれた各国の伝統音楽や民族音楽にも多く表われており、人々の暮らしに根づいた音楽の源ともいえますね。

    最後に

    今回はスケールを学ぶうえで欠かせないメジャー/マイナー・スケール、メジャー/マイナー・ペンタトニック・スケールの4種類について解説しましたが、マイナー・スケールはメジャー・スケールの順番違いで、両ペンタは2音抜いただけなので、実質メジャー・スケールひとつしか扱ってないようなものですね!

    ……なんて、“カロリーゼロ理論”みたいですが、実際のところ何種類もあるスケールのほとんどは順番違いや組み合わせ違いなので、法則性や成り立ちを知っていれば覚えられてしまうものばかりなんです。暗記が苦手な人でも大丈夫! ということで続きはまた今度!

    ■連載一覧はこちらから。