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【ベーシストのライフワーク】第一回 − 吉田一郎不可触世界

華やかな舞台で活躍するプロ・ベーシストたちは、普段私生活ではどういった“趣味=ライフワーク”をして過ごしているのだろうか。連載企画『ベーシストのライフワーク』では、普段は覗くことのできないプライベートな一面を、ベーシスト本人自らの言葉で語ってもらう。記念すべき第一回目のベーシストは、ソロ・アーティストとしての活動のほか、TK from 凜として時雨やLiSAなど多数のトップ・アーティストのサポートをこなす吉田一郎不可触世界が登場だ。コロナ渦をきっかけに始めたという“農業”の魅力をたっぷり語ってもらった。

集合体恐怖症のベーシストでも農業はできるのか。

 ときは2020年の晩春、コロナでライヴがすべて中止になった。体力とヒマを持て余した俺(重度の集合体恐怖症)は、この際だからと開き直って溜まりに溜まった“死ぬまでにやることリスト”を食いつぶしていくことにした。

 釣り・ゴルフ・陶芸・編み物・漬物造り・ビール醸造・自家製麺・etc……。雑多なリストから今日取り上げるのは農業だ。
 そのなかでも今回は、栽培キットを使った椎茸栽培、カイワレ大根の自宅栽培、畑を借りての夏野菜栽培について、集合体恐怖症患者の見地で報告する。

 椎茸について(写真①参照)。栽培キットが届き、説明書どおりに円柱状のホダ木(このキットではおがくずのブロック)を充分に水に浸す。霧吹きで1日3回ほど水をやりながら早くも4日で収穫開始。
 プツプツ小さい丸がものすごい早さで規則正しく大きくなっていくさまは、集合体恐怖症持ちの人間にはかなりきつい。収穫後は市販品と見た目・味ともにまったく変わらず美味。

写真①
写真②

 かいわれ大根(写真②参照)。プラスチックのトレーにクッキングペーパーを何枚か敷く。タネが重ならないように撒いて水を多めにかけて暗いところに放置。この時点ではギリギリセーフだが翌日に発芽してグロ化。茶色のタネの皮を破って小さな目がプツプツ出ているさまを思い出すだけで背中が痒くなるが市販品より辛味が強く美味。

 夏野菜。ナス、トマト、キュウリなどを植える。まず畑を借りた。15平米くらいの小さな畑だ。肥料を撒いて耕してマルチ(畑でよく見る黒いビニールシートの呼称)を敷き詰めて苗を植える。

 トマトの苗の横にはバジルの種を撒く。トマトは乾燥を好むのでバジルにぐんぐん水を吸わせる寸法だ。これを“コンパニオンプラント”なんて言ったりして、こういうテクニックがほかにもいろいろあっておもしろい。

 肥料も何種類もあり、植える野菜の種類によって土を酸性/アルカリ性どちらにするかなどコツがいろいろあって沼だ。ハマる。楽しいが熱中症になりかける。危ない。

 結果、ナスは採れすぎ(写真③参照)。多すぎて脳が集合体と認識。キュウリはあっという間にデカくなりすぎたため、試しにベース・マガジンと並べてみた(写真④参照)。すべて美味だがトマトは特に美味。抜群。バジルもめちゃうま。

写真③
写真④

総評:集合体よりも夏の暑さのほうが怖い。肥料のやりすぎはゴーストノートの入れすぎと一緒でダメ。

【Profile】
よしだいちろうふかしょくせかい●1982年12月14日生まれ、長野県出身。中学生でベースを手にし、ソウル/ファンクに傾倒したのちにプログレにも大きな影響を受ける。自身がベース・ヴォーカルを務める3ピース・バンド12939dbを経て、2007年にZAZEN BOYSに加入(2017年12月に脱退)。TK from 凜として時雨、Aimer、坂本真綾など多数のアーティストのサポートも手がけている。2015年2月より“吉田一郎不可触世界”名義でソロ活動を開始し、2015年に『あぱんだ』、2020年5月に『えぴせし』という2枚のアルバムをリリースしている。

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