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    “星にでも願ってろ” ファミコン風音源打ち込みRTA【クリープハイプ長谷川カオナシのレトロゲーム喫音堂】-番外編-

    • 文:長谷川カオナシ
    • バナードット絵:石田芙月(株式会社.AC)

    毎回レトロゲームの音楽を取り上げ、その魅力をクリープハイプの長谷川カオナシが独自の視点で伝える連載『レトロゲーム喫音堂』。今回は、番外編をお送りします……!!

    アルバム・リリース記念!
    「星にでも願ってろ」をファミコン音源風にアレンジ

    お世話になっております。レトロゲーム喫音堂、長谷川カオナシです。

    今年度の奇数月は喫音堂の月……なのですが、我々クリープハイプは今月、7枚目のアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースいたしました。

    今回はそれを記念して、特別企画をさせて頂こうと思います。

    題して、”星にでも願ってろ”ファミコン風音源打ち込みRTA※1

    本アルバムに収録されている、私長谷川が作詞歌唱を担当した「星にでも願ってろ」という楽曲。
    それをファミコン音源風に打ち込んでいこうと思います。

    「星にでも願ってろ」はアニメ『ぽちゃーズ(※2)』のエンディングテーマとして使用していただいており、ショートバージョンが存在します。今回はその尺のぶんを打ち込んでみましょう。

    使用するのはDAWソフトは、CUBASEの「AI」というもの。シンセサイザーはMASSIVE。このシンセサイザーのデフォルトの音色がなんとなくファミコンっぽいので、喫音堂の実演パートの伴奏を打ち込む際に愛用しています。

    このNOT PRESET LOADEDの音がファミコンっぽい

    ドラム・トラックはKONTAKTの「STUDIO DRUMMER」。ドラム・キットの音価を極端に下げ、さらにエフェクターで歪ませることで、ファミコンで表現されるノイズ・トラックのニュアンスに近づけます。

    HOLDとDECAYを絞り、音の長さを短くする

    準備が整ったらまずはトラックを作りましょう。

    KONTAKTのドラム・トラックがひとつ。
    MASSIVEはメロディ・トラック、サブメロディ・トラック、ベース・トラックの3つ。

    私はここまでを「喫音堂」用としてプリセットで保存してあります。

    プリセット「喫音堂」をロードするとこの画面からスタート

    この連載では何度も触れて来たことですが、ファミコンで同時に鳴らせる音の数はノイズ含めて4和音が最大。したがって、今作ったトラックはすべて単音で打ち込まねばなりません。引き算の発想が大事になって来ますね。

    さて打ち込み開始です!

    まずはメロディから打ち込みました。ゲームの楽曲を打ち込む際は原曲を繰り返し聴きながら少しずつ打ち込んでいきますが、今回は自分で書いた曲なのですごくラクですね。毎回こうだったら良いのに。

    作業開始から2分35秒ほど経過

    続いてベース。「星にでも願ってろ」は、ロカビリーを意識してアレンジしていったので、特にサビのベース・ラインは1度と5度の繰り返しから成っています。

    レコーディングの際はエレアコ・ベースを用いて、スラップのゴーストノートも積極的に鳴らしました。

    このトラックでその再現は難しいので、単純に実音だけを打ち込んでいきます。

    作業開始から4分50秒ほど経過

    サビが打ち込み終わったら次はドラム・トラック。

    基本的にはキック・スネア・キック・スネアという、こちらもシンプルなラインです。普段ならハイハットの刻みやシンバルも打ち込むところですが、ルール上、ドラム・トラックで2音同時に鳴らすわけにはいきません。

    バス・ドラムとスネアだけで表現していきます。

    作業開始から8分ほど経過

    最後にサブメロディのトラック。ここが一番工夫の必要なポイントです。
    メロディのハモりやバッキング、オブリガートをただの単音で担わなければなりません。マメにモニタリングしながらフレーズを考えていきます。

    メロディが鳴っている際はそのハモりを、途切れたタイミングではオブリガートをする、という構成にしました。(作業開始から15分15秒ほど経過)

    全体像が見えてきたらまたモニタリング。何度か曲を再生して、違和感のある箇所やもう少しおもしろくできそうな箇所を微調整していきます。

    また、MASSIVEのトラックごとにそれぞれ若干のエフェクトをかけて音色の差別化を図ったりもします。気が済んだところで完成です!

    作業開始から24分ほど経過

    サブメロディの立ち回りを考えるのに時間を要した形ですね。

    バンド・サウンドの曲をファミコン風にアレンジしていくというのは、骨組み以外の音をそぎ落としていく作業が主でした。

    打ち込んでみて気づいたのは、それでもベース・トラックはほぼ原曲通りだということ。

    ベースは元が基本的に単音で構成されているので、“そぎ落とし”の割りを食わないようですね。楽曲においてそれほど大事なポジションだということが再確認できました。

    さて、今回は普段とは違う形の企画をやってみましたが、いかがでしたでしょうか。
    おもしろがっていただけたら幸いです!

    それではまた次回までご機嫌よう。

    (※1)
    ^リアルタイムアタックの略。

    (※2)
    ^フジテレビとDLEの共同制作によるショートコント・アニメーション。
    そろ谷監督によるカワイイキャラクターとやや毒のあるセリフ回しがクセになります。
    全キャラの声優を担当している寺澤百花さんの演技も素敵です!

    ◎Profile
    はせがわ・かおなし●1987年9月23日生まれ。小学生でピアノとヴァイオリンを手にし、高校1年でベースを始める。クリープハイプは2001年に尾崎世界観(vo,g)を中心に結成。2009年に長谷川、小川幸慈(g)、小泉拓(d)を擁した現編成となる。2012年にメジャー・デビューし、2014年には日本武道館にてライヴを行なう。2024年12月4日に7枚目のアルバム『こんなところに居たのかやっと見つけたよ』をリリースした。長谷川はティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズのグッズ収集家でもある。

    ◎Information
    長谷川カオナシ
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    クリープハイプ
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