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    【連載:ダークグラスな事情】Vol.5 奥野翔太

    • Photo(Gear):Takashi Yashima

    モダンなサウンドと豊富な機能を持ち合わせた製品群で、現代のベース・ギア・シーンの中核を担うダークグラスエレクトロニクス。『ダークグラスな事情』は、プロ・ベーシストが愛用するダークグラス製品の魅力を自らの言葉で語る連載企画だ。第5回目となる今回は、3ピース・ピアノ・バンドWEAVERにて活動したのち、現在は山本彩、春畑道哉、雨宮天などをはじめとした多くのアーティスト・サポートを手がける奥野翔太が登場! “歌モノでも的確に役割を果たしてくれる”と語る、3種のダークグラス・ペダルについて語ってくれた。

    使用モデル
    Microtubes B7K Ultra(プリアンプ/ディストーション)
    Hyper Luminal(コンプレッサー)
    Alpha ・ Omicron(ディストーション)

    ベースの居場所として“ここが欲しい”っていうのをメーカー側がわかってくれている。

    奥野が最初に入手したダークグラス・ペダルMicrotubes B7K Ultra。常時ディストーション・チャンネルをオンにした状態で使用され、DRIVEを2時方向までブーストさせることで、クランチ気味のドライブ感を演出するとのことだ。EQはほぼフラットに設定されている。ミニ・スイッチはそれぞれ、ATTACK:フラット、GRUNT:フラット、LO MIDS:250Hz、HI MIDS:3kHzを選択している。

     ダークグラスに出会うまで、いわゆる“持っていれば間違えない”みたいに言われている歪みやプリアンプの定番機を使っていたんだけど、当時の僕のバンド(WEAVER/2023年解散)にはうまくハマらなくて。WEAVERはピアノ・バンドだったこともあり、一般的なロック・バンドのベーシストとは歪み事情が違うというか、ギターがいないぶん、ベースの立ち位置が難しかったんです。それで踏みっぱなしで使えるプリアンプ兼歪みペダルを探しているなか、先輩ベーシストに紹介してもらったのがダークグラスのB7K Ultraでした。

     B7K Ultraは欲しい帯域が常に存在してくれるなかで、各ツマミの調整でおもしろさが足されていくところがすごく好みで、すぐに音作りのメインになりました。ベースの居場所として“ここが欲しい”っていうのをメーカー側がわかってくれているというか、僕のフィーリングにピッタリだったんです。軽く歪ませたベーシックな音色として、常時かけっぱなしで使っています。ダークグラスはEQの設定ポイントが腰高だと聞きましたが、歌モノの現場で活動している僕にはちょうどいいというか、欲しい部分がキュッと詰まっている感じで、物足りないと思うことはないですね。

     クリーン・トーンをより太く、そしてその上に歪み成分が抜け感として加わるようなイメージで設定していて、EQのミニ・スイッチはLO MIDSが250Hz、HI MIDSが3kHzを選択しています。250Hzはロー感に身を持たせたいときに有効な、ベーシストとして一番コントロールしたい帯域だし、3kHzはスラップのときとか、アタックでキラッと抜けてくるところなので、そこに照準を合わせているんです。メロディを弾くときにも効果的な帯域なので、僕のようにハイポジでメロディを弾くスタイルの人には最適なスイッチだと思います。

    原音の上にコンプの要素をナチュラルに足す使い方ができる。

    ダークグラスのコンプレッサー・ペダルHyper Luminal。3種類の代表的なコンプレッサーのキャラクターを、完全なアナログ回路でモデリングした一台で、奥野はSolid State LogicのBus Compressorをモデルとした“BUS”モードを選択している。その他、ドライ音とのミックス・バランスはウェット寄りに、コンプレッションのレベルは弱めにセッティングされている。

     次に手に入れたペダルがHyper Luminalで、3年くらい前ですかね。コンプもいろいろなモデルを試したんですけど、意外とコンプって機種ごとにキャラクターはさまざま。そのなかでこれはベーシストとして気持ちいい部分を突いてくれる点が本当に使い勝手がよくて。コンプの種類も3つから選べるし、各モードでキャラクターがはっきりしているんですよね。筐体が小さい点もお気に入りです。

     3種類のうち、基本的にはSolid State LogicのBus Compressor をモデルとした“BUS”を選択しています。キラッとした感触が絶妙なんですよね。Hyper LuminalにはBLENDが付いているのも使いやすくて、これがあることでちょうど良い塩梅を探りやすい。僕は強く弾いたときにかかってくれるぐらいの、音量感を出して粒を揃える目的で軽めに設定しています。16分フレーズやスラップが多い曲ではかけっぱなしで使うこともあります。アンサンブル全体との兼ね合いを考慮して、PAさんと話すなかで今の設定に落ち着きました。

     Hyper Luminalはキャラクターの色付けがまったくないモデルではないけど、かけることによってサウンドをワンランク上げてくれるし、原音の上にコンプの要素をナチュラルに足す使い方ができる。コンプってどうしてもツマミが多くなりがちですけど、これは直感的で使いやすい点も魅力ですよね。

    “ベースってこうあるべきだよね”って部分を明確に表現してくれる。

    最近入手したというAlpha · Omicron。B7K Ultraと重ねがけすることで飛び道具的に使用するという。本機は“α”と“Ω”の2種の歪み回路を備えるが、奥野は(取材時には)αに振り切っている点が特徴と言える。低域をブーストして迫力を演出する“GROWL”スイッチはオフ、ハイ・ミッドをブーストしてプレゼンス感やギラつき感を表現する“BITE”スイッチはオンの状態で使用している。

     ベーシックな音色としてかけっぱなしのB7K Ultraがあり、ベースが目立つ部分で音量を上げたり、ちょっと派手な音にしたいときに重ねがけするのがAlpha · Omicron。B7K Ultraの上に重ねることで、音量と歪み感をブーストさせています。B7K Ultraをもう一台買って、歪みのセッティングを変えて併用することも考えたんだけど、違うダークグラスのキャラクターが欲しかったし、Alpha · Omicronは過激な歪みを作り出すこともできる。そういうところでこれを選びました。

     (写真では)歪みは“α”に振り切っていますけど、フレーズとか曲によって位置は変えています。このツマミはベースで印象的なフレーズを聴かせたいとき、ソロっぽく弾きたいときにいい塩梅で歪みを調整できるんです。また上のシャリシャリした帯域や、歪み成分が伸びるように、そしてより派手に聴こえるようにBITEスイッチはオンにしていて、このスイッチが絶妙なんですよ。GROWLスイッチもすごく良いんだけど、アンサンブルに混じった際の質感を考慮して基本オフにしています。

     僕の音はこれら3つのダークグラスでできあがっているし、いつでも自分の音が作れるという安心感があります。僕のプレイスタイルにも合っているし、歌モノでも的確に役割を果たしてくれる。なぜ“「ダークグラス=メタル」ってイメージなんだろう?”って思うくらい、ジャンルを問わず使いやすいブランドですよ。ソリッドでハイファイなサウンドが好み人には絶対オススメのブランドです。

     ダークグラスのエフェクターは初心者の方が使っても欲しい帯域をしっかり出してくれるように設計されていて、“ベースってこうあるべきだよね”って部分を明確に表現してくれる。そして今の若い子達が音源で聴いているベースの音って、ダークグラスであることが増えていると思うんです。僕らの若い頃はそれが(Tech 21製)サンズアンプ(ベース・ドライバーDI)だったように、今はダークグラスの時代になっている。そして実機を使えば“憧れの音”を簡単に作ることができる。ダークグラスはそういうひとつの時代を創出したブランドだと思っています。

    Specifications

    Microtubes B7K Ultra

    ●コントロール:マスター、ブレンド、レベル、ドライブ、ベース、ロー・ミッド、ハイ・ミッド、トレブル、アタック・スイッチ、グラント・スイッチ、ロー・ミッド・3ウェイ・スイッチ、ハイ・ミッド・3ウェイ・スイッチ、グラウンド/リフト・スイッチ、ディストーション・スイッチ、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット、ダイレクト・アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:125(W)×57(D)×96(H)mm
    ●重量:430g

    【価格】オープンプライス(本記事での紹介モデルは廃盤/現行モデルはMicrotubes B7K Ultra V2 with Aux In)

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    Specifications

    Hyper Luminal

    ●コントロール:ブレンド、タイム、アウトプット、コンプレッション、レシオ・センサー、モード・センサー、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:75(W)×45(D)×111(H)mm
    ●重量:250g

    【価格】オープンプライス

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    Specifications

    Alpha·Omicron

    ●コントロール:ブレンド、レベル、ドライブ、モッド、グロウル・スイッチ、バイト・スイッチ、バイパス・スイッチ
    ●入出力端子:インプット、アウトプット
    ●電源:DC9Vアダプター
    ●外形寸法:75(W)×45(D)×111(H)mm
    ●重量:250g

    【価格】オープンプライス

    お問い合わせ:キョーリツコーポレーション  Mail:support@kyoritsu-group.co.jp  メーカー・サイト

    ◎Profile
    おくの・しょうた●1988年8月18日生まれ、兵庫県出身。2004年に高校の同級生とWEAVERを結成。2007年に現在の編成となり、3ピース・ピアノ・バンドとして神戸を拠点に活動を展開する。2009年にダウンロード・シングル「白朝夢」でメジャー・デビュー。精力的な活動を続けるなかで2014年1月末からは半年間のロンドンへ留学も経験する。WEAVERは2022年10月21日にラスト・アルバム『WEAVER』をリリースし、2023年2月に解散した。奥野は山本彩や春畑道哉をはじめとしたさまざまなアーティスト・サポートのほか、ソロ活動も精力的に展開している。

    ◎Information
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