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BM DISC REVIEW – BASSMAN’S LIBRARY – 2023 FEBRUARY
2023年2月にリリースされたアルバムから、注目作品のディスク・レビューを公開。
『スリー』ザ・ワイナリー・ドッグス
ベテランたちの直感が生んだヘヴィな熱量
MR.BIGのビリー・シーンと同バンドを脱退したリッチー・コッツェン、元ドリーム・シアターのマイク・ポートノイのトリオによる8年ぶりの3rd作。リッチーの自宅スタジオでジャム・セッションをしながら直感的に作り上げられた本作は、彼らのハードロック由来のサウンドが充分に表現されつつ、どこかスモーキーさやポップさ、キャッチーさなど幅広い音楽性が感じられる。ビリーのプレイは、初っ端から鋭いギターとのユニゾン・プレイが駆け抜ける①、どっしり重いサウンドでバス・ドラムとともにボトムを支えつつ、随所で入る細かいオブリにハッとさせられる⑤、全体的に余白たっぷりにプレイする⑨などパワフルかつ円熟味溢れる上質なものだ。(座間友哉)
◎作品情報
『スリー』
ザ・ワイナリー・ドッグス
ソニー/SICX-30163
¥2,750 全10曲
◎参加ミュージシャン
【ビリー・シーン(b)】リッチー・コッツェン(vo,g)、マイク・ポートノイ(d)
『tear』reGretGirl
メロディを加速させる表情豊かな低音フレーズ
飛ぶ鳥を落とす勢いでシーンを駆け上がる3人組のメジャー2nd作。彼らの持ち味でもある、センチメンタルな世界観を駆け抜ける爽快なギターロック・サウンドを存分に堪能できるが、その“キャッチーさ”の根底には十九川宗裕の低音が存在することを改めて実感する。ルートに軸足を置きつつ、随所に入る繊細なフィルで楽曲を彩る①、軽快なシャッフル・ビートの⑤での、アンサンブルを前進させるウォーキング・フレーズやハイ・ポジションでのメロディアスな音使い、特にベースの動きが顕著な⑦では、指板を旋回するかのようなリード・フレーズを聴かせながら、唐突にダブル・ストップを入れ込むなど、挑戦的な姿勢も垣間見える。(加納幸児)
◎作品情報
『tear』
reGretGirl
コロムビア/COCP-41983(通常盤)
¥3,080 全12曲
◎参加ミュージシャン
【十九川宗裕(b)】平部雅洋(vo,g)、前田将司(d)
『フード・フォー・ワームス』シェイム
ファンキーに迫るポスト・パンク5人組の3rd作
現在のUKロックのトレンドのひとつと言えるポスト・パンク。サウンドの王道を鳴らしながら、サウス・ロンドンの5人組はワウ・ギターのいなたい音色が逆に新鮮な②をはじめ、ファンキーな曲も交え、個性をアピール。オルタネイト・ピッキングも使いながら、ドライブした音色でソリッドにリズムを刻むジョシュ・フィアンティのベース・プレイもファンキーな曲では大胆にハネる。ギターのカッティングと絡み合う④、ギターの単音リフの裏でグルーヴを作る⑧のベース・リフは聴きどころのひとつだろう。威勢のいいシンガロングは、Oiパンクを連想させるところも。チャーリー・スティーンの歌声も含め、野郎臭さもシェイムの大きな魅力だ。(山口智男)
◎作品情報
『フード・フォー・ワームス』
シェイム
ビッグ・ナッシング/DOC324JCD
¥2,750 全10曲
◎参加ミュージシャン
【ジョシュ・ファイアンティ(b)】チャーリー・スティーン(vo)、ショーン・コイル・スミス/エディ・グリーン(g)、チャーリー・フォーブス(d)
『ジャッジメント・デイ』 LOVEBITES
新体制が掲げる、技術と重厚さが織りなす美しいメタル
ベーシスト・famiを迎えた新体制の狼煙、①の荘厳なイントロが気高さと貫禄を掲げる。疾走感と美メロが錯綜していく②の緊張感を捲し立てるベース・ラインはフックで入ってくるスラップ含めて絶品。乱れ打つドラムと刻まれるギター、そこに追随するベース、最初から最後まで隙を見せずに突っ走る、重心低めながらも疾走感に溢れるアンサンブルが際立つ作品。歪んだベースの煽りで始まるパンキッシュな⑤、日本的な泣きメロディの⑥、砲撃のごとく鳴らされるキックに打ちのめされる⑧など、楽曲強度の高さに感服。荒ぶるハイトーン・ヴォーカルも華麗なシュレッド・ギターも見事、技術と重厚さが織りなす緻密に構築された美しいメタル・アルバム。(冬将軍)
◎作品情報
『ジャッジメント・デイ』
LOVEBITES
ビクター/ VICL-65777(通常盤)
¥3,300 全10曲
◎参加ミュージシャン
【fami(b)】asami(vo)、miyako(g,k)、midori(g)、haruna(d)
『Goodbye』東京塩麹
多彩なリズムが描く人力ミニマル・ミュージック
スティーヴ・ライヒが“素晴らしい生バンド”と評した8人組による3rd作。インディ・ロックからエレクトロニック、ポスト・クラシカルなど、ジャンルの壁を軽やかに横断しながら独自のミニマル・ミュージックを展開する本作で、ベースは直線的なルート弾きと変拍子のコントラストで聴かせる②、変則的なフレーズと巧みな音価調整がトリッキーな③、絶妙に計算されたゴーストノートが快感な⑫など、さまざまな角度から刺激的なリズム・パターンを提供する。引き締まったスラップで緊張感を走らせる①、ピアノ、アコギとのトリオでベースが歌いまくる④と、リズム楽器にとどまらないアプローチを堪能できるのも魅力。(辻本秀太郎)
◎作品情報
『Goodbye』
東京塩麹
SPACE SHOWER MUSIC/配信リリース
全12曲
◎参加ミュージシャン
【初見元基(b)】額田大志(k)、渡辺南友(tp)、渡健人(d)、中山慧介(p)、渡辺菜月(tb)、テラ(g)、タカラマハヤ(per)