NOTES
BASS MAGAZINE Web『石村順の低音よろず相談所 ~Jun’s Bass Clinic~』の第7回。今回のテーマは“1フィンガー”です。
指弾きは“2フィンガーで、オルタネイト(人差指と中指を交互に使う)でやるもの”と思い込んでいませんか?
ベースで指弾きといえば2フィンガーが主流だと思うのですが、歴史的に見ると、ポピュラー音楽のベースは、もともと1フィンガーが主流だったんですよ。
エレクトリック・ベースが出てくる以前、1900年代から1940年代ぐらいまでは、ベースといえばコントラバス。その頃に最先端で流行っていたジャズのウォーキング・ベースは基本的に1フィンガーで弾きます。
そしてエレベの場合、エレベの歴史における初期の伝説的ベーシストといえばジェームス・ジェマーソン。彼はR&Bやソウルのベースに革命を起こしたベーシストですが、あのすごくファンキーで複雑なベース・ラインを1フィンガーで弾いていたそうです。
フレーズも音色もグルーヴも素晴らしいので、まだ聴いたことがないならぜひ聴いてほしいのですが、いろいろなジャンルに影響を与えたジャズのウォーキング・ベースや、僕を含め多くのベーシスト に影響を与えたジェームス・ジェマーソンのことを考慮するなら、1フィンガーで弾くことは、むしろベースの基本と言ってもいいかもしれません。
ちなみにピック弾きの場合、曲調やテンポ的に“ここはオルタネイト・ピッキングではなくて全部ダウン・ピッキングのほうが合うな”ってこと、ありますよね?
これは、“ダウン・ピッキングだけのほうがリズムも音色も安定しやすい”っていうことなんです。そしてその理由は、“1種類の動きしかないから”です。
一方、オルタネイト・ピッキングはダウン・ピッキングとアップ・ピッキングの2種類の動きの組み合わせなので、リズムも音色も、やはり安定しにくいんですね。
もちろん理想を言えば、ダウン・ピッキングであろうとオルタネイト・ピッキングであろうと、ピッキングが安定していて、同じようなニュアンス、そして同じような音色で弾けるほうが望ましいのですが、それはけっこう高いレベルの目標ですよね。
指弾きもこれに似てます。
2フィンガーは人差指(i)と中指(m)のふたつの動きの組み合わせなので、リズムも音色もやはり安定しにくいんです。ピック弾きでいうとオルタネイト・ピッキングと同じですね。
その点、1フィンガーは、(i)だけ(もしくは(m)だけ)なので、1種類の動きとなり安定しやすいです。
ピック弾きで言うとダウン・ピッキングのみ、ということです。
もちろん、1フィンガーであれ、2フィンガーであれ、さらに3フィンガーであっても、安定して同じニュアンスで演奏するのを目標にすべきですが、その基本は1フィンガーにあります。
2フィンガーは、i君とmさんとの“二人三脚”なんです。とはいえ、同じ掌から生えているけれど、i君とmさんは別人です。例えば“i君はこれが得意だけどmさんはそれが苦手”といったことが起こりえます。
二人三脚の練習って、ふたりの歩幅やタイミングを合わせる練習ですよね。でも例えば、そのうちのひとりが“一定の歩幅では歩けません”という状態だとしたら、そもそも二人三脚の練習する前に、まずそれぞれひとりで一定の歩幅で歩けるようにしようってことになるでしょう?
指弾きもそれと一緒なんです。まずは(i)、それから(m)、個別に練習するのです。
2フィンガーのコンビネーションに取り組むのはそのあとです。
というわけで、安定した指弾きができるようになるために、まず1フィンガーでいろんな基礎練や曲にチャレンジして、それぞれの指を鍛えていきましょう!
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ではまた~! 石村順でした!
石村順
◎Profile
いしむらじゅん●元LOVE CIRCUS、元NEW PONTA BOX。日食なつこ、ポルノグラフィティ、東京エスムジカ、K、JUJU、すみれ、大江千里、松山千春、宇崎竜童、石川ひとみ、種ともこ、近藤房之助、豊永利行、Machico、紘毅、城南海、西田あい、つるの剛士、SUIKA、Le Velvets、葡萄畑など、多数のライブや録音に参加している。ロングセラー『ベーシストのリズム感向上メカニズム グルーヴを鍛える10のコンセプトとトレーニング』の著者。Aloha Bass Coachingではベース・レッスンのほか全楽器対象のリズム・レッスンを行なっている。
◎Information
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