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3ピース・バンドにおける実践度をさらに高めた、UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也の新シグネイチャー・モデルが登場!
- Interview & Text:Bass Magazine
- Artist Photo:Viola Kam (V'z Twinkle) Equipments Photo:Takashi Hoshino
◎INTERVIEW with 田淵智也
ここでは田淵に独占インタビューを敢行。サゴニューマテリアルギターとの出会いから、Tabuchi Mk-Ⅱに込められた想いやこだわりまで自らの言葉で語ってもらった。
“今狙っている音って、竿から考えるとどうなる?”
っていう考えから作り始めたのがMk-Ⅱです。
━━まず、サゴニューマテリアルギターズ(以下、サゴ)との出会いを聞かせてください。
2012年ぐらいだったと思うんですけど、当時のUNISON SQUARE GARDEN(以下UNISON)の楽器スタッフにサゴと付き合いのある方がいて。兵庫の工房なので、近くでライヴがあるときに遊びに来ていただきました。それまでの僕はJBタイプ・ベース(編註:プロデューサーの故佐久間正英が田淵のために監修して製作したNothing But The Guitar製で、2010年頃からメイン器として使用していた)を弾いていて、そのときに“ウチでJBタイプを一本作ってみない?”と言ってもらって、そこからの付き合いです。
━━2014年に発表されたSago Classic Style J4 -Tabuchi Custom-(Mk-1)と、今回のTabuchi Mk-Ⅱで、サゴ製のシグネイチャー・モデルは2本目となりますが、サゴに対する信頼も強固なものになっているのでは?
僕は“人との付き合い”をわりと大事にしていて、楽器に関する信頼もさることながら、すごく応援もしてくれるし、人柄も好きだなと思っています。僕は機材類にはあまり詳しくないし執着もないので、いろんな提案をしてくれるぶん、いろんなことがスムーズに動きます。使い始めた頃、バンド・スタッフやメンバー的にも“良い音が出ている”っていう実感があったので、自分にとってのベストなものを一緒に作っている感じですね。Mk-Ⅱは去年の秋ぐらいからのツアーで弾いています。レコーディングでも全曲これです。
━━そのときの田淵さんに必要なことを提案してくれるんですね。
そうですね。僕は、サゴはもちろんバンド・スタッフからの助言や提案にそのまま乗っかるところがあって(笑)。今までのシステムは、Mk-1を前提として、それに合わせたアンプやペダル類を考えていくやり方でした。途中でアンプ・ヘッドをアンペグからアギュラーのDB-751に変えたり、足下の接続順を考え直してみたり、要はUNISONにおいてのサウンドの最適解に向けてカスタマイズし続けていて、そのなかで“今狙っている音って、竿から考えるとどうなるかな?”っていう考えから作り始めたのがMk-Ⅱです。
━━ Mk-1は“中域のヌケの良さ”がポイントでしたが、それは今回も同様ですか?
僕は少ない知識のなかで半分当てずっぽうで“中域”という言葉を使っているんですけど……自分なりに説明すると、自分のプレイ・スタイルやベース・ラインの作り方として、3ピースという最低限の編成で鳴らしているときにその部分が聴こえないと音楽としての良さが減ってしまうんじゃないかと思っていて。UNISONでは重低音でゴリゴリやる感じでもないし……オブリのギターも鍵盤もいないので、“何か彩りを加えるには”って考えてきた結果、メロディとの絡みを重要視するベース・スタイルになりました。なので、ベース・ラインがよく動いている感じがわかるようにミドル・レンジが大事になってくるのかなって、今のところは思っています。この考え方は今回のモデルにも反映されていますね。
━━なるほど。指板材についてはエボニーに代わってリッチライトを採用していますが、演奏するうえでサウンドの変化はどのように感じますか?
材については詳しくないので、ネック・指板・ボディのどれが影響しているのかがわからないんですが、音が締まった感じがするんですよ。昔使っていたJBタイプはドンシャリ気味のサウンドだったので、1本目に作ったプロトタイプはミドル・レンジが出るものを目指したんですけど、今思うとそれでもまだドンシャリに近かったかもしれません。それに対して今目指しているサウンドはもっと“こんもり”しているというか、ミッドに寄っていてヌケのある感じで、それはアンプ・ヘッドをアギュラーに替えてサウンドがクリアになったときに気づきました。Mk-Ⅱは、ある程度はロー感が犠牲になっても“真ん中に集まった締まりのある音”を目指したんですよね。
━━なるほど。ピックアップはノードストランド製Big Single 4で、幅広なソープバー・タイプによるアグレッシブな倍音もヌケ感にひと役買っていそうです。
それについても、狙っているものに一番近いということで提案に乗った形でした。ギャリっとした高音成分みたいなところはプリアンプでも全然作れるので、竿自体をミドルに寄せる狙いでしたけど、僕としては指板なのかピックアップなのか、なにがどう影響しているのかはわからなくても、その方向に向けてアプローチしてくれたんだなって思っています。
━━シングルコイル・ピックアップを2基搭載していながらも、コントロールは1ヴォリューム、1トーンという潔い構成なのが男らしいです。
製品版では2ヴォリュームにしてもいいんじゃない?っていう話をした記憶もあるんですけど、単純に僕のプレイ・スタイルには必要なかったっていうことですね。1種類のサウンドしか出さないつもりでやっているので。あとは、絞ったままになったりするのがイヤなんです。手癖が悪くてすぐにツマミとか触っちゃうんですよ。片方のヴォリュームを絞ったまま次の曲が始まって“なんかちょっとスカっとしてんな”っていうことが軽減されるんじゃないかな(笑)。
━━でも、“ロックなベーシスト”な感じがして、カッコいいなと思います!
都合のいい解釈をしてくれる(笑)! 僕も“2個だけのほうがシンプルでカッコいいじゃないですか!”っておもしろがっていたところもあります。
━━ Transparent Akaneというボディ・カラーについては、ダークなトーンだったMk-1に比べて、派手な印象になりましたね。
僕は何かを選ぶときは黒だったり、ダーク目なものを選びがちで、それは服とかもそうなんです。それでライヴの衣装も黒いTシャツが多かったので、黒に黒だと地味だなっていう周りの意見がありまして。“明るい色でもいいんじゃない?”って言われたときは“ええ、イヤだな〜”って思っていたんですけど、確かにちょっと地味だったしなと気づいて。それから赤ということになったんですけど、それもストレート過ぎてイヤで、そこから少し色味を落としていって、この色は“茜色”って言うんですかね、赤色のなかでも落ち着きのあるものに行き着きました。周りから“赤いのいいじゃん!”って言われて、“本当ですか〜?”って僕もだんだんほだされてきて(笑)、徐々にしっくりきたところです。
━━ヘッドがナチュラルとブラックの2トーンになっているのもおもしろいですよね。
こういう風に細かいところで凝っているのが僕はけっこう好きで、めっちゃいい!ってアイディアに乗っかったんだと思います。やっぱり、ストレートなものじゃなくて、ひとひねりあるものじゃないと居心地が悪くて。このヘッドはひと目見ただけで“田淵のベースだ”ってわかるフックになっているし、自分も気に入っています。
━━このベースは、どういうベーシストに手にとってほしいですか?
僕は楽器や音に対する知識には自信がないですが、“僕みたいな音を出したかったら、これですぐに真似できるよ”っていう気持ちはあって。そういう人がどれくらいいるのかはわからないですけど、そういう人に手に取ってほしいですね。でも、結局はどんなベースを使っていても、その人の個性は音に影響すると思うし、なによりも“弾いているときのカッコよさがすべて”で、そういう部分を大事にしてほしいなとも思います。
━━では最後に、2本のシグネイチャー・ベースを製作した田淵さんから見た、サゴというブランドの魅力について聞かせてください。
どのメーカーもきっとそうだとは思うんですけど、僕が会ったなかでは楽器に対する熱や、音楽に対する愛みたいなものがすごくある人、メーカーだと思っています。もちろんビジネス面のことも忘れずにいるんですが、プレイヤーに対する向き合い方で伝わるんですよね。僕自身は“音楽に関わる人が幸せになってほしい”っていう人生のテーマがあるんですけど、サゴに対してもそう思っています。
◎Profile
たぶち・ともや●1985年4月26日、東京都出身。2004年に斎藤宏介(vo,g)鈴木貴雄(d)とともにUNISON SQUARE GARDENを結成し、バンドのほとんどの楽曲の作詞・作曲を行なう。2008年にメジャー・デビュー。これまで通算7枚のアルバムなどをリリースした。また、バンド外の活動として、数々のアーティストへの楽曲提供およびベーシストとしての客演など、多方面で活躍する。バンドは2019年で結成15周年を迎えた。
◎INFORMATION
UNISON SQUARE GARDEN HP Twitter YouTube
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