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【動画&誌面対応!】SPECIAL TALK SESSION IKUO×日向秀和[歪みベーシストという生き方]
- Interview:Zine Hagihara
- Photo:Yoshika Horita
- Shoot & Edit:MINORxU
- Sound Recording:Hozumi Suzuki
INTERVIEW
アンプ直で歪んだ音を鳴らした瞬間、初期衝動を思い出したんです。
━━IKUO
──ベース・マガジンでは初対談ですが、おふたりに面識はありますか?
IKUO お互いに活動しているジャンルが違うのでなかなか知り合う場面が少なかったんですが、それこそベース・マガジンの誌面や映像でひなっちのことは知っていました。それで、たまたま空港で会ったのが初めてでしたよね?
日向 はい、長崎の空港でたまたま会ったんですよ。僕はフェスの帰りで、たしかIKUOさんがT.M. Revolutionのライヴでしたよね。
IKUO それで声をかけて話して、写真も撮って……一瞬の出来事だったんですけど、それが嬉しくてテンションが上がりました。で、次に会ったのはなんかのフェスだったと思います。
日向 そうでしたね。そのときもたまたまでした。僕ももちろんIKUOさんのことは知っていて、ベース・マガジンを読んでいたらよく載っていますし、動画とかで観たら超絶スラップを弾いていて。よく拝見させていただいております。
IKUO ありがとうございます。僕もストレイテナーやNothing’s Carved In Stoneはもちろん、昔のZAZEN BOYSの動画もよく観ていますよ。僕のいる界隈とは遠くにいるようなイメージがあるんですが、個人的にはベーシストとして遠い存在だとは思っていないんです。僕はヴィジュアル系でありながら六本木ピットイン(ジャズやフュージョン音楽の演奏が頻繁に行なわれていたライヴハウス。現在は閉店している)に出入りしていたようなセッションマンでもあってちょっと変なタイプで、すべての人がジャンル的に遠くに感じたりするんですが、そのなかでもひなっちは、僕の知らない界隈であるロック界のトップ・ベーシストだと思っています。圧倒的なロック・スター。
日向 ありがとうございます!
IKUO それはプレイ・スタイルゆえでもあると思うんです。フレーズでも音色でも主張するじゃないですか。ひなっちはピック弾きもしますが、僕は指弾きがメインなのでそこに共感することが多くて。ロックの分野でベースがアグレッシブにアプローチするところが好きですね。そういう意味でロック界の第一人者だと思っています。
日向 もう恐縮過ぎて喋れないじゃないですか……(笑)。IKUOさんは僕なんかとは住む世界が違うと思っていたので、まさか僕のことを知っているなんて思ってもいなくて。だから知っていただけていたことにびっくりしましたね。IKUOさんのプレイはYouTubeで調べて観ていたりしていて、もう本当にすごくて。スーパー技巧派の向こう側にいる人だと思っていました(笑)。
IKUO あはは。
日向 最初にお会いしたときも嬉しかったですし、IKUOさんと知り合ったことで僕の世界が広がったらいいなとか、そういうことを考えたりしていましたね。
IKUO いやいや、ありがたいです。僕は自分のバンドがヴィジュアル系でありながら、ジャズやフュージョンの演奏もして、活動としてはセッション系の録音が多くて、どのジャンルにも属していないような気がしていて。でもひなっちは自分のジャンルを確立している。そこがまさにロック・スターなんです。
──ロックと他ジャンルのハイブリッドという意味では、日向さんもブラック・ミュージックをロックに昇華するスタイルなのでIKUOさんと共通項がありますね。
日向 そうですね。自分はもともとヒップホップやR&Bを聴いて育ちましたし、ロックを演奏し始めたのはだいぶ遅かったんですよ。東京のライヴハウスに出るようになってからART-SCHOOLで木下(理樹/vo,g)くんに教わって。それまではロックは聴いていませんでした。ピックで弾くようになったのも22、23歳ぐらいからで、出どころがハイブリッドな感じになってます。ミクスチャー(ロック)はやってましたけどね、バリバリにスラップしたりして。
IKUO それは知らなかった! てっきりロックからどんどん派生していったのかと……すごいですね。それを聞くとひなっちのスタイルにも納得します。
日向 IKUOさんもかなりハイブリッドですからね。
IKUO もう、めちゃくちゃですけどね(笑)。
日向 でも、やっぱりオンリーワンな感じがしますよ。僕もオンリーワンでありたいと思っているので、IKUOさんを観ていると個性を重んじるスタイルにグッときます。
IKUO そこが一番大事ですからね。
──個性で言えば、“歪んだベース・サウンド”という要素がふたりの大きな共通点だと思うんです。
IKUO そうですね! 歪み、やっぱり好きですからね。
日向 “歪み”っていうテーマが大き過ぎて宇宙を語るぐらいに感じちゃう(笑)。
IKUO 本当にそれぐらい奥が深いですよ。僕はもともとスタンリー・クラークやジャコ・パストリアスなど、フュージョンをやっていて。要は歪んでいるベースが嫌いだったんです。ハートキーにアンプ直、みたいな。
日向 まさにクリーン・サウンドですよね。
IKUO そうそう。そのスタイルでずっとやってきて、髪は腰ぐらいまで伸ばして、メタルっぽい見た目なのに6弦ベースのリア・ピックアップ付近でロー・ミッドを重視したスタイルで弾きたいっていうタイプでした(笑)。ずっと個性を探していたんですよ。
──なるほど。
IKUO ロックをやっているのにフュージョンを弾くっていうのは“僕はほかと違います”っていうのを主張していたんだと思います。で、あるときにバンドで、ラウドネスの樋口宗孝さんにプロデュースしていただくことになって合宿レコーディングをしたんです。そのときに“なんやねん、フュージョンみたいな音出しやがって”って言われて(笑)。
日向 あはは。
IKUO ヴィジュアル系バンドがメタル系ハードロックの方向でやるってなったときに、僕のベースがそれだったらダメだって言われて、樋口さんがピーヴィーのすごく重いチューブ・アンプを借りてきて“これで弾けや”と。アンプ直で鳴らしたらもうブリブリに歪むわけですよ。すごくびっくりして。それからは“ああ、歪みカッコいいな”って……もともとジョン・エントウィッスル、ビリー・シーン、ゲディ・リーとかが好きではあったので、その瞬間に初期衝動を思い出して、そこから僕のベースはずっと歪んでいます。
日向 すごいきっかけですね。
IKUO ビリー・シーンを知ったときはかなり衝撃で、それを思い出した感じ。
日向 コンプ感が特徴的で、あの歪みの感覚は本当にすごいですよね。
IKUO そうそう。で、今ではどの現場に行っても歪みサウンドっていう僕のスタイルで勝負するようになりました。