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    INTERVIEW − 穴見真吾[緑黄色社会]

    • Interview:Shutaro Tsujimoto
    • Photo(Live):Azusa Takada

    “緑黄色社会でドロップDをやる日が来るとは……”っていう。

    ━━「ミチヲユケ」の話も聞かせてください。ベース的には、Aメロの強く歪んだ音作りはインパクト大ですし、Bメロは高速ウォーキング・ベースという、聴きどころ満載の曲ですね。

     Bメロのウォーキング・ベースは、アレンジャーの川口圭太さんに引っ張ってもらった部分が大きいです。最初のアレンジではピアノだけジャズっぽくて、あとは8ビートで作ってたのを、“全部ピアノに合わせてジャズっぽくしちゃえばいいんじゃない?”というアイディアを川口さんがくださって。

    「ミチヲユケ」(Music Video)

    ━━アレンジャーさんと仕事をすることで、ベーシストとしても学ぶことはかなり多そうですね。

     めちゃくちゃ多いです。自分にないものを持っている方と一緒に作業するというのは、すごい経験ですね。それ1本で食べてる人の気迫というか、破壊力ってすごい。“何でそれ思いついた……?”みたいな。ほかの曲だと、「さもなくば誰がやる」も川口さんに入ってもらったんですけど、この曲ではドロップDチューニングかつタッピングのあるフレーズ案が送られてきて(笑)。僕、『地獄のメカニカル・トレーニング・フレーズ』(著/MASAKI)をやっていた時期とかもあるので、そういうテクニカルなプレイも好きなんですけどね、家でそのデモを聴いたときは“マジか”と思って大爆笑しちゃいました。“緑黄色社会でドロップDをやる日が来るとは……”っていう。

    ━━そうだったんですね(笑)。でも最近はテクニックを押し出した音楽がいろんなジャンルで増えてきているので、そういう今の感覚にしっくりきましたよ。

     それは嬉しいです。この曲は例のベース・フレーズがカッコよすぎて、ちょっと食らいましたね(笑)。

    ━━「Don!!」の話も聞きたいです。穴見さんは作曲と編曲を担当していますが、これはモータウン愛を感じる曲ですね。

     モータウンはうちの両親がよく聴いていたので、そういう影響がかなり出てると思います。

    ━━サビはスプリームス「You Can’t Hurry In Love」的なビートで、間奏もスティーヴィー・ワンダーを彷彿する演奏になっています。

     特に間奏は、マジでそれは意識しました(笑)。ベース・フレーズ自体は覚えやすいので、そういう意味でもベーシストの皆さんにコピーしてほしい曲ですね。

    ━━モータウンといえば、やっぱりジェームス・ジェマーソンは好きですか?

     大好きです。ずっと人差指だけで弾く練習とかもしていましたし。ジェマーソンが弾いている曲って、ジャクソン5とか、マーヴィン・ゲイの「Ain’t No Mountain High Enough」とか本当に最高ですし、とにかく曲自体がいいものが多い。曲が良くて、それに引っ張られてベース・ラインも名フレーズとして残ってるっていうのは、本当に理想的なことだなって思います。

    ━━ところで、今作を聴いていて穴見さんはダブル・ストップでフックを作るプレイが巧みだなと感じました。「あうん」の“言葉にしなくても響きあう”という歌詞の箇所(2:05〜)や、「陽はまた昇るから」のAメロの折り返し(0:26)など、印象的です。

     今言われて気づきました。でも、確かにわりと初期から2音を一緒に弾くようなプレイは多いかもしれないです。入り口がレッチリのフリーだったので、その影響は大きいのかも。フリーって平気でルートをハズしてコードを弾いたりするじゃないですか? だからこういう音数の少ない場面が来ると、僕の細胞が“2音にしろ!と言ってくるのかもしれない(笑)。

    ━━今作のレコーディングではどんなベースを使ったんですか?

     1968年製のプレベが一番多くて、「Starry Drama」「ジブンセイフク」「うそつき」「湿気っている」「White Rabbit」「Slow dance」の6曲で弾いています。その次が「あうん」「ミチヲユケ」「陽はまた昇るから」「さもなくば誰がやる」で使った1966年製のジャズベ。「Don!!」では1959年製のプレベ、「ピンクブルー」では1967年製のムスタングを弾きました。

    「うそつき」(Music Video)

    ━━プレベとジャズベはどのような基準で使い分けましたか?

     やっぱりプレべのほうが位相がいいというか、音が目の前に来る感じがあります。音色自体はポコっとしているけど力強いロックな感じなので、疾走感のある曲ではプレベを使うことが多いですね。逆にジャズベは「あうん」「ミチヲユケ」とか、ブラック・ミュージック的なフィールがある曲で使うことが多いですね。プレベだと、どうしても表情というか抑揚が付けづらいので、押し引きを作りたいときはジャズベを使うっていう発想ですね。

    ━━「ピンクブルー」ではなぜ、ムスタング・ベースを使うことに?

     これは普通っぽくない音で録りたいなと思ったんです。この曲はオケの感じも全体的にフワッとしていて、80’sのニューウェイヴ感みたいなものを目指していたので。これ、アンプのセッティングもおもしろいんですよ。ヘッドがアンペグのSVT-VRで、キャビネットがSVT-810Eなんですけど、810(SVT-810E)の下のスピーカー4つを毛布で包む、という方法で録ったんです。

    「ピンクブルー」(Music Video)

    ━━ボワっとさせずにデッドな音で録る、みたいなイメージでしょうか? 

     大体そういう意図ですね。鮮明な音で録るというか。ミュートするためにドラムに毛布を入れるイメージに近いと思います。

    ━━マイクはどこに設置するんですか?

     マイクは上段のキャビネットの前です。あとSVT-VRはゲインのツマミがないので、歪ませようと思ったらヴォリュームをかなり上げなきゃいけないんですけど、この方法を使えば、ヴォリュームのツマミでアンプで歪ませることもできて。これは以前LiSAさんの「マコトシヤカ」という曲のレコーディングでベースを弾かせてもらったんですけど、その現場でエンジニアさんに教えてもらった録り方なんです。今回は「Starry Drama」「Slow dance」でもこの方法を使いましたね。

    ANAMI’S LIVE GEAR

    BASSES

    2018年に入手した1970年製フェンダー・ジャズ・ベース。“上質な即戦力のジャズベ、と表現するのが近いです。ちょうど良い立ち上がりの速さ、レンジの広さ、状態の良さも含め優秀なベースです。あとブロック・ポジションが最高にカッコいいです!”
    2022年に入手したフェンダー・プレイヤープラスのプレシジョン・ベース。1970年製のジャズ・ベースとともにライヴでのメイン器として使用している。“音が速いし、表情が付けやすい。どんな会場でも抜けてくる感じがあります”。
    2021年に入手したモジュラス製VJ4。ライヴでは半音下げチューニング用として使用している。“2013年から探していた憧れの楽器です。ベース単体で聴いた音ではこれ一番好みです”。

    AMPS

    オレンジのアンプ・セット。上段からAD200MKⅢ(アンプ・ヘッド)、OBC410(キャビネット)、OBC115(キャビネット)。今作のレコーディングでも使用した。「ミチヲユケ」などで聴ける歪みサウンドは、“オレンジのゲインは12時にして、THERMIONIC CULTUREのCulture Vulture(ラックマウント型ディストーション)で作ったライン音を混ぜて作りました”とのこと。
    AD200MKⅢのセッティング
    今作のレコーディングでは使用していないが、2023年からライヴ用として導入したマークベースのアンプ・セット。上段からLittle Mark Vintage(アンプ・ヘッド)、MB58R 104 ENERGY(キャビネット)、MB58R 151 ENERGY(キャビネット)。
    DIのPueblo Audio製OLLA、ワイアレス受信機のSHURE製ULXD4もセットされている。
    Little Mark Vintageのセッティング
    DIはPueblo Audio製OLLAを使用。

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