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    INTERVIEW – 日向秀和[Nothing’s Carved In Stone]

    • Interview:Koji Kano

    正直、今後はアクティヴ・タイプのプレイヤーとして僕を捉えてもらって構わない。

    左から、日向、生形真一(g)、村松拓(vo,g)、大喜多崇規(d)。

    ━━使用している5弦モデル、レイクランド製SL55-94Deluxeは、ベース本体で細かく音を作り込めるモデルですが、各ツマミのセッティングなど、どのように設定していますか?

     けっこう自由にやっていますね。曲によってトーンとかトレブルをゼロにしちゃったりとか、スラップのときだとハイにピークを持っていて、ミドルを思いきりカットしちゃたり。ピックアップのフロントとリアのバランスでもだいぶ変わってくるので、おもしろい楽器だと思います。基本的には粒立ちが良くてコンプがかかっているような、ミドルを上げ目のセッティングでやっていますね。でもやっぱり、ベースだけで音を作り込めるのっていいですよね。今は自分のモデルで作っている最中で、完成が楽しみです。

    ━━これまで使用してきたJB/PBタイプとは機能的にもサウンド的にもまったく異なるキャラクターを持つ楽器だと思いますが、使用するエフェクターはどのように試行錯誤していますか?

     使うエフェクター類は変えてないですね。でもエフェクターのノリは変わってくるし、そもそもアクティヴは出力が高いから特定のペダルだとレベルがめちゃ上がっちゃったりすることもあるので、そのあたりは気をつけています。実際にプレイしながらコントロールしている感じですね。本当は5弦ベース用にプリアンプをもう一個用意することを考えるべきかもしれないだけど、それも大変だしな……。

    ━━現状ですら、あのボード・サイズですからね。

     そうなんだよね。だから基本的にはベース本体のコントロールでゲインを絞っています。でもフルテンじゃないくらいのほうがパワー感が出過ぎずにコントロールしやすいんですよ。フルにするとマッチョ過ぎちゃうから、ちょっと曇ってるくらいのほうが扱いやすいかな。

    ひなっちが使用する5弦モデル、レイクランド製ショアライン・シリーズの55-94Deluxe。ボディはスワンプ・アッシュのバック材にキルト・メイプルのトップ材の組み合わせ、ネックと指板はともにメイプルという木材構成だ。ピックアップはオリジナル製のMM-J Configで、プリアンプにも同じくオリジナル製のLH-3 3band Preampを搭載する。豊富なコントロールを備え、ベース単体で多彩な音作りを可能とする一本だ。現在はひなっちのシグネイチャー・モデルも製作中とのこと。続報に期待したい。

    ━━「Dear Future」のミュージック・ビデオでは、アクティヴ・タイプの4弦モデル、レイクランド製SL44-94Deluxeをプレイしています。これも新しいモデルですよね。

     実はこの曲、レコーディングではいつものPJタイプ(SL44-64/R PJ Hinatch Signature Bass)を使ったんです。SL44-94Deluxeも試してはいるんですけどね。

    「Dear Future」Music Video

    ━━そうだったんですね。PJタイプを使用した理由は?

     スラップのハイ抜けを出すためですね。今の若い子達のスラップって、めちゃくちゃハイが抜けてくるじゃないですか? 僕には中学2年になる倅がいるんですけど、ベースを始めて毎日頑張っていて。それで倅がコピーしている最近の音楽をよく耳にするんですけど、スラップのハイ抜けが“サンプルなのか!?”ってくらいにえげつないなって。

    ━━息子さんからのインスパイアだったんですね。

     そう(笑)。でもそういうサウンドのほうがわかりやすいんだろうなって思うんです。あと今の若いベーシストって、めちゃくちゃスライドを入れていて、なるほどなと。倅のプレイからはいろいろと影響を受けていますよ(笑)。

    ━━今作ではひなっちさんのトレードマークでもあるブラックのJBタイプ“SL44-60/R Hinatch Signature Bass”や、PBタイプの“SL44-64/R Hinatch Signature Bassといった各シグネイチャー・モデルは使用しなかったんですか? 

     「Bright Night」では黒いJBを使いましたけど、PBタイプは登場機会がなかったですね。正直、今後はアクティヴ・タイプのプレイヤーとして僕を捉えてもらって構わないという感じです。レイクランドのアクティヴは本当に良くて、グルーヴも作りやすいんですよね。でもJBとかPBじゃないと出せない音っていうのは間違いなくあって、たとえば「Out of Control」なんてアクティヴとは全然マッチしませんから。そのへんの兼ね合いを模索しつつも楽しんでいる最中です。

    ━━4弦でのプレイだと、「SUNRISE」はドラム・ビートとともに表情を変えていく緻密なフレージングを展開していますが、サビでの休符の効いたスラップ・リフなど、まさにひなっちさんのルーツである“ブラック・ミュージック”を感じさせるファンキーなプレイで構成されていますね。

     まさに。わかりやすく言うと、プリンスをロックに落としたかったんですよ。結果、プリンスの感じとロックの感じの両バランスがいい塩梅でミックスできたと思いますね。サビのスラップは、あれ以上弾いちゃうと雰囲気が出ないけど、あれより弾かないと寂しいっていう、絶妙なラインを狙ったフレーズですね。

    ━━サビのスラップは、プルの粒立ちがパキッと表れた心地良いサウンドですね。

     この曲もPJで録ったんですけど、PJのスラップ音って今だからこそ新しいなって個人的に思っているんですよ。JBのスラップもすごく好きなんだけど、世の中の流れ的に、今はPJぐらいハイがピーキーなほうがハマるような気がしていて。イメージとしては、音が近くて艶っぽいスラップというか……今ふと思ったんですけど、僕のPJをピックアップもアクティヴにして歪みの方向に持っていったらおもしろいかもしれませんね。昔使っていたアメデラ(フェンダーのアメリカン・デラックス・プレシジョン・ベース)なんてけっこう歪むんだけど、それがめっちゃいい音で好きでしたから。

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