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    INTERVIEW − 石川紅奈

    • Interview:Shutaro Tsujimoto
    • Photo:Takashi Yashima

    ジャズ・シーンに新風を吹き込む
    歌うウッド・ベーシストのルーツ

    コロナ禍にアップロードされたマイケル・ジャクソン「Off The Wall」のウッド・ベース弾き語りパフォーマンス映像がジャズ界では異例の160万回超再生を記録するなど、シーンに突如現われ話題をさらっている新星、石川紅奈。流麗なベース・プレイと透き通った歌声、そしてその気品漂う佇まいから発される独特の世界観に魅了される音楽ファンは日本にとどまらず、YouTubeのコメント欄にも国外から数多くのコメントが寄せられている。さらには壷阪健登(k)とのポップス・ユニットsorayaでも活躍するなど、シーンを横断する新世代ベーシストとして注目を集める筆頭だ。そんな石川が3月22日、ジャズの名門レーベル“Verve(ヴァーヴ)”よりメジャー・デビュー作となる『Kurena』をリリースした。彼女のベーシスト&ヴォーカリスト、そして作編曲家としての才能が遺憾なく発揮された今作の制作背景についてはベース・マガジン5月号(4月19日発売)のインタビューで存分に語ってもらう予定だが、Bass Magazine Webではその前日譚として、彼女がいかにして音楽の道へと踏み込み、現在の音楽スタイルに辿り着いたのかを探るべく、そのルーツやこれまでの歩みを聞いてみた。

    自分がジャズを演奏するなんて思ってもなかったです。

    ━━まずは石川さんがベースに興味を持ったきっかけから聞かせてください。

     父が趣味でエレキ・ベースを持っていたのがきっかけです。本格的に弾き始めたのは高校からですが、中学生頃から遊びで触るようになりました。好きだったスティーヴィー・ワンダーの曲を聴きながら、父から“ベースの音はこうやって探して、こうやって弾くんだよ”といったことを教えてもらってました。

    ━━本格的に弾き始めるようになったのは高校からですか? ベースは独学で学んでいったのでしょうか?

     はい。ジャズ・バンド部に入ったのですが、先輩たちもみんな独学で、我流の伝統を伝えていくみたいな野生味のある部活でした(笑)。主には耳コピの練習をやりながら、たまに教則本を読んだりしていました。

    ━━ロックやパンクなら珍しくないですが、ジャズを独学で学ぶとなると、どのような感じだったのでしょう?

     顧問の先生がいろいろとCDを貸してくれたので、それを聴いて同じように弾く練習をやっていました。あとは、例えば「枯葉」のような有名な曲のコード進行に沿って自分でベース・ラインを書く練習です。いくつかパターンを書いていくことで、段々と自分でもラインを作れるようになっていきました。

    ━━五線譜の読み方や書き方も部活で学んだんですか?

     はい。先生に教えてもらいながら、耳コピしたものやアドリブのラインを書く練習をとにかくやっていましたね。

    『Kurena』
    ヴァーヴ/ユニバーサル
    UCCJ-2221

    ━━高校に入った頃にはすでにジャズへの興味は芽生えていたんですか?

     高校に入る前は聴いていなくて、部活に入ってからですね。

    ━━それまで好きだった音楽を挙げるとすると?

     スティーヴィー・ワンダーが大好きで、あとはジャクソン5とかモータウンをたくさん聴いてました。邦楽だと東京事変や椎名林檎さんが好きでしたね。

    ━━ジャズが好きになったきっかけを覚えていますか?

     もともとは自分がジャズを聴くようになることも予想してなかったし、演奏するなんて思ってもなかったです。部活に入った頃は“アドリブで演奏するんだよ”とか言われても、“そんな風にして成立するの?”みたいな気持ちがあったのですが、ライヴ映像などを観ているうちに二度と同じ演奏がないことや、演奏している全員がエネルギーをぶつけ合っている感じがカッコいいなと思ってどんどんジャズを好きになっていきました。

    ━━最初はウッドではなくエレキ・ベースから入ったと思いますが、エレキ・ベース奏者ではどんなベーシストが好きでしたか?

     モータウンが好きだったので、やっぱりジェームス・ジェマーソンです。あとは顧問の先生の影響で、ジャコ・パストリアスがすごく好きでした。部活の伝統で、ジャコパスの「Portrait Of Tracy」を代々ベーシストは弾けるようにする、みたいなのがあって。でも、あのハーモニクスだけの曲を全部耳コピするのはやっぱり無理があるので、途中まで頑張ったらあとは楽譜を渡してもらえました(笑)。あれは本当に難しかったです……。

    ━━弾き方は先輩たちが教えてくれるんですか?

     教えてくれますが、先輩たち自身も独学なので、“とにかく見て覚える”みたいな感じでした。

    ━━ちなみに高校は音楽を学ぶための学校ではなく、普通の高校ですよね?(笑)

     はい。普通の学校ですが、その部活だけちょっと浮いてる感じで(笑)。おもしろい部活でしたね。

    「Off The Wall」パフォーマンス映像

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