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新井和輝(King Gnu)が語るベース・キャリアの全貌【インタビュー後篇】
- Interview:Shutaro Tsujimoto(Bass Magazine)
- Photo:Kosuke Ito
CHAPTER 6
NewJeansとの共演と
プレイヤーとしての揺るぎない信念
それぞれの場所でそれぞれの曲に対する
アプローチをするっていう
マインドは変わってないです。
──改めて10月のNewJeansのライヴの話も聞かせてもらえますか? 実はあのとき僕も会場で観ていたんですよ。そもそも、どういう経緯で呼ばれたんですか?
ギターの磯貝くんから、あるとき“10月6日と7日空いてる?”って連絡が来て。でもちょうどKing Gnuのアルバム制作シーズンと重なってたので“制作中なんだよね……ライヴのお誘い?”って聞いたら、“うん、NewJeansの”って(笑)。ちょうどそのとき奥さんが横にいて、“NewJeansのサポートの話が来たんだけど”って言ったら、奥さんが“絶対やって!”って(笑)。
──あの日のバンド・アレンジはすごくグルーヴィで素晴らしかったですし、評判も相当良かったですよね。
基本的なアレンジは指定されていたんですけど、とにかくバンドでやってショボいって言われたくなかったので、かなり気合いを入れてやりました。「Ditto」で使ったハンドクラップとか、俺が自分の家でクラップを録音して作ったサンプルですし(笑)。あとElektronのドラムマシンのハイハットとスネアを抽出して、何度も原曲を聴きながらサウンドを再現したりもしましたね。
──これ絶対NewJeansを好きな人たちがやってるなっていう、原曲へのリスペクトがすごく感じられたというか。
やっぱりそれは感じさせないといけないし……とはいえある程度指定されたバンド・アレンジがあるので、そのなかで打ち込みで作られた原曲の要素をどこまで盛り込めるかっていうのはすごく考えましたよ。結果的にいろんな人に褒めてもらえたので、また呼んでくれたら嬉しいですね。
──確か「OMG」だったと思うんですけど、スラップを入れたり、かなり派手なベース・プレイをやってましたよね。
送られてきたバンド・アレンジの参考音源だと、「OMG」原曲の808っぽい音で入ってるシンベのフレーズがMIDIでそのままエレベのスラップに置き換えられてたんですけど、それだとスラップ・フレーズとしては不自然だったので、かなりフレーズを変えましたね。ここは俺なりの読み取りをけっこう入れたというか。あ、あとNewJeansのライヴは遊が観に来てくれたんですけど、遊はこのときのSoyの出音がすごく良かったからKing Gnuのライヴでもそのイメージで電子ドラムをやりたいと思ったらしいんですよ。それが5大ドーム・ツアーでの電ドラの導入につながっていて。
──King Gnuにもつながってくるんですね。さて、ここまでいろいろと聞いてきましたが、King Gnuでの多忙なスケジュールを送りながらもベーシストとしてさまざまな場所に参加していく活動スタイルは、新井さんのどういうスタンスから来るものなのか教えてもらえますか?
マインドセットは昔からあんまり変わっていないんですよね。やっぱりバンドが先にあってサポートの声がかかったんじゃなくて、もともといろんなミュージシャンとやっているなかでバンドが始まったという順序だから、そこの垣根が俺のなかではまったくないというか。演奏に関しても、それぞれの場所でそれぞれの曲に対するアプローチをするっていうマインドは変わってなくて。それこそ今でも教会に行ったり、佐瀬悠輔(tp)くんとかとジャズのギグでも弾かせてもらってるし。今でもそういうミュージシャンとしてのアティチュードみたいなものを保とうとはしてるんです。バンドマンではあるけど、あくまでもミュージシャンというか。バンドに対するアンチテーゼっていう気持ちはまったくなくて、ただ、いちベーシストとしてのプライオリティを保ちたいみたいな気持ちですね。
──ミュージシャンとしてのそういう在り方は音楽シーン、ベース・シーンにも新しい風を吹かせていると思います。ひと昔前なら、やっぱりバンドマンはバンドマンだったと思いますし。特にこの規模のバンドでは前例がないんじゃないかと。
自分で言うのもなんだけど、最近はさすがに五大ドーム・アーティストにはなっちゃってるから、気軽に声がかけづらいっていろんな人に言われたりもして(笑)。でも俺的にはそんなの関係なく、一応場所は選ばせてもらうけど、呼んでくれたらできるものはやりたいなって感じです。いろんな人とやるのはシンプルにおもしろいし、もちろんバンドでのプレイにも還元されることだと思っているので。
◎Profile
あらい・かずき●1992年生まれ、東京都出身。大学時代に勢喜遊(d)を通じ、常田大希(g,vo)、井口理(vo)と前身バンドSrv.Vinciとしての活動を開始。2017年4月のKing Gnu始動以降も、さまざまなアーティストのライヴやレコーディングに参加し活動の幅を広げている。King Gnuとしては2023年11月29日に約4年ぶりとなる新作アルバム『THE GREATEST UNKNOWN』をリリース。2024年1月から3月にかけては全9公演、約38万人を動員した全国5大ドーム・ツアー“King Gnu Dome Tour「THE GREATEST UNKNOWN」”を開催、4月からはアジア諸国4都市7公演をまわる初のアジア・ツアーを行なった。2024年9月25日(水)には、5大ドーム・ツアーの東京ドーム公演の模様を収めた初の映像作品『King Gnu Dome Tour THE GREATEST UNKNOWN at TOKYO DOME』を発売。また、11月27日(水)には『THE GREATEST UNKNOWN』のアナログ盤がリリースされた。2025年2月からはファンクラブツアー「KING GNU LIVEHOUSE TOUR 2025 CLUB GNU EDITION」を開催する。
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◎本記事が掲載されている号
『ベース・マガジン2024年5月号(SPRING)』では本記事に加え、新井が『THE GREATEST UNKNOWN』や5大ドーム・ツアーなど最新モードについて語るインタビューのほか、ドラマーの勢喜遊とのリズム体対談、フロントマンの常田大希が語る新井の魅力、愛器紹介、ディスコグラフィなども掲載! さまざまな角度から “King Gnuの低音論”に迫る、全40ページにわたる総力特集となっています。
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■Featured Bassist
新井和輝(King Gnu)
King Gnuの低音論――最強バンドの深淵に宿る、ローエンドの哲学
<コンテンツ>
Interview1 新井和輝〜『THE GREATEST UNKNOWN』とは何だったのか
Interview2 新井和輝 × 勢喜遊〜リズム・セクションが明かすKing Gnuのライヴ哲学
Interview3 常田大希〜コンポーザーが語る“King Gnuのボトム”
Interview4 新井和輝〜ロング・インタビューで辿る、ベース・キャリアの全貌
Playing Analysis King Gnuのベース・ライン〜エレキ・ベース篇/シンセ・ベース篇
Discography 参加作品で辿る新井和輝の軌跡
Kazuki’s Gear 新井和輝の愛器を徹底解剖
Selected Scores ベース・スコア「一途 (ALBUM ver.)」、「硝子窓」