PLAYER
“ルート弾きっていうフレーズ”というか。
そのカッコよさって、俺はやっぱりすごく信じている。
━━今作での使用機材は?
ベースは、「Flashback, Francesca」が5弦ジャズ・ベース、「電影回帰」がフレットレス、「strawberry」がリッケン、「風、花」と「ステレオジュブナイル」がL’s TRUSTのPBタイプ。あとはいつものジャズベですね。リッケンは1970年代くらいのもので、ずっと所有はしていて、wowakaのときにも何回か使えないかなと思った瞬間はあったんですけど、そのときはハマらなくて、今回初めてでした。アンプは、「Flashback, Francesca」「Flight Simulator」「ステレオジュブナイル」「風、花」「3分29秒」が自分が所有しているアンペグのB-15Nで、ほかの曲はB-15Rを借りて使いました。B-15Rのほうが輪郭があってもっちりしている感じで、B-15Nはもうガリッと行く感じです。DIはミレニアを使っていて、apiのTranZformer LXとB7Kは基本的に踏みっぱなし。曲によってはプラスで歪ませたりしているんですけど、その歪ませた音をTDCのDIからラインで拾って、それをアンプに送ってマイク録りの音を混ぜるということもしています。あとはリアンプで地獄みたいに歪ませた音を録っておいて、曲のなかで、音色自体というよりはベースの存在感を少し上げたいときに、そのリアンプの音を混ぜたりもしていますね。
━━「ゲノゲノゲ」のエンディングでは、最後のフレーズだけ歪みを足していますか?
あそこは確かに歪んで聴こえますよね。でも歪みを足してはいなくて。この曲はAメロとかは細かくスタッカートで弾いているんですけど、一番最後はテヌートになるしグリスも入ってくるので、歪みが聴き取りやすいのかもしれないですね。サステインの部分がそこで初めて出てくるのかなと。
━━「ゲノゲノゲ」はすごい曲ですね。バッキングなのかジャムなのかっていう雰囲気で。まさにリード・ベースというかベース・ソロ的なオブリのフレーズも入ってきます。
変な曲ですよね(笑)。サビが1コードで押し切る感じがすごくカッコいいなと思って。シノダにも1コードの部分はベースが動いてほしいみたいなことは言われたんですよ。自分としても、今回はアプローチとして、いわゆる“ベースっぽい曲”もけっこうあったので、なんとなく、この曲くらいはやっておきたいみたいな気持ちになって(笑)。
━━お前らが聴きたいのはコレだろと(笑)。
そんなに振りかざす感じじゃないですけど(笑)。自分としても気持ち良くなりたかったんです。
━━イガラシさんのプレイといえば、“リード・ベース”という部分も期待してしまいますが、個人的にはゴリゴリの音色のロック曲「Flight Simulator」の、ルート弾きのカッコよさとリード・ベースというよりはオブリとしての動くフレーズというのも、キッズ心を煽るようで魅力的に感じます。
ありがとうございます。「Flight Simulator」はピック弾きで、得意なことをやればいいっていう感じだったから、録るのは早かったですね。フレーズも、もう決まったことをやるタイプの動くラインにしたかったので、型を決めて、それを繰り返すっていう感じですし。
━━ベースが派手な「3分29秒」でも、その派手な部分はもちろんですけど、ギター・ソロを8分ルートで押すところが、音色も含めてすごくグッとくるというか。“ベーシスト”なら、あの音色・プレイでアガると思います。
この間のリード・ベースの対談(本誌2022年5月号)をしたときにも思ったんですけど、やっぱりベースが動いていることが、ルート弾きを際立たせることってあると思っていて。ある意味、突然出てくるルート弾きには、ひとつの“フレーズ感”がすごくあるじゃないですか。“フレーズを弾いていない”んじゃなくて、“ルート弾きっていうフレーズ”というか。そのカッコよさって、俺はやっぱりすごく信じているので、ああいうギター・ソロの裏は絶対にルート弾きをカッコよく弾きたいとは思っています。
━━ベースの派手な部分で言えば、「3分29秒」でも「Flight Simulator」でも、ハンマリング&プリングやトリルを使ったプレイも印象的ですが、手グセと言えますか?
そうかも。「3分29秒」とかもそうなんですけど、シノダが作ってくるデモにはもう少し“細かくない”状態のイメージというか8分音符でラインが入っていて、それを自分で装飾している感じですね。「3分29秒」のサビなんかは基本的にはフリー・スタイルで(笑)。もう作曲者からも“好きにやってください”っていう感じですしね。
━━「ステレオジュブナイル」はストレートな8ビート・ロックでイントロから動きのあるベースですが、一般的にこういうタイプの曲だと、Aメロで一旦落ち着かせることも多いと思うんです。それがAメロでもわりと動いているのがイガラシさんらしさかなと。
この曲はイントロとかでちょっと流れる感じにしたかったのと、サビのコード進行が“C”(実音はE)から始まるというか、メジャー・キーの一番下からルートが上がっていく感じで、その気持ちいい感じを出したいなと思ったんです。イントロがあって、そこから“Aメロに着地するイメージ”だったら、多分Aメロはそんなに弾かないと思うんですけど、この曲ではサビのアタマのルートの気持ちよさに着地したかった。そこまでタメにタメて、サビのアタマから“ドドドドドド~”ってルート弾きでいきたいと。こういうコード進行って、ヒトリエには今までなかったというか珍しいものだったので、そこをうまく聴かせたいなと思ったんです。
━━動いているAメロも、1番と2番ではギターとの絡みもあって、動き方を意図的に変えていますね?
そうですね。これはアレンジというか構成上というのもありますけど、ハイポジに行って違うフレーズを弾いていたら、作曲者のゆーまおが喜んでくれて、ウケたから採用って(笑)。この曲に関してはビートもシンプルだし、明るくストレートっていう感じだったから、“ベース・ラインでなんとかしてほしい”って言われていたんですよ。
━━“メンバーが喜んでくれたから”っていう理由、いいですよね、バンドらしくて。さて、今は振替公演のツアー中(取材は6月前半に行なわれた)で、7月からはアルバムを携えたツアーも始まります。気持ちもまた変わりますか?
わりとツアー同士の隙間がなくなっちゃったんですけど。今のツアーが長い期間にまたがってやっているので、前半と振替公演になっている後半では自分の気持ちが切り替わった部分があって。どっちかというと、この気持ちのまま次のツアーもやりたいなと思っています。ただ、曲はもちろん新鮮なものが入ってくるので、楽しいツアーになると思います。
━━アルバムを聴いても、今日のインタビューでも、楽しんでバンドをやっているのが伝わってきます。
そうですね、楽しんでやってもいいのかなって、ようやくちょっと思った感じですね。
◎Profile
いがらし●6月17日生まれ。高校時代に吹奏楽部でコントラバスを始め、大学入学後にエレキ・ベースを手にする。2011年にサウンド・クリエイターとして活動していたwowaka(vo,g)を中心に、イガラシ、ゆーまお(d)で前身バンドを結成。2012年にシノダ(g)が加入して“ヒトリエ”として活動を開始し、2014年にメジャー・デビューを果たす。2019年にwowakaが急逝し、シノダがヴォーカル・ギターを担当する3ピース形態となる。2021年2月に3人体制初となるアルバム『REAMP』を発表。2022年6月22日に3人体制での2作目となるアルバム『PHARMACY』をリリースした。7月からは全国ツアーを開催する。イガラシはヒトリエのほかに[忘れらんねえよ]などのサポート活動も行なう。ピザが好き。
◎ライヴ情報
『ヒトリエ Summer flight tour 2022』
7月16日(土)広島 セカンド・クラッチ
7月17日(日)香川 高松DiME
7月30日(土)宮城 仙台 Rensa
7月31日(日)岩手 盛岡CLUBCHANGE WAVE
8月6日(土)大阪 梅田クラブクアトロ
8月7日(日)兵庫 神戸VARIT.
8月17日(水)鹿児島 鹿児島SR HALL
8月18日(木)福岡 DRUM Be-1
8月27日(土)北海道 札幌 cube garden
9月2日(金)新潟 新潟LOTS
9月3日(土)石川 金沢AZ
9月8日(木)愛知 名古屋クラブクアトロ
9月9日(金)京都 磔磔
9月22日(木)東京 Zepp Haneda (TOKYO)
◎Information
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