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    INTERVIEW – 中村和彦[9mm Parabellum Bullet]

    • Interview:Koji Kano

    揺るぎない信念、研ぎ澄まされた攻撃性

    国内屈指のライヴ・アクトを武器に、ロック・シーンの先頭を走り続ける9mm Parabellum Bullet(以下、9mm)が、3年ぶりとなる9thアルバム『TIGHTROPE』を完成させた。バンド結成18年目を迎えた彼らの鳴らすロックは、どこか獰猛で、変わらずリスナーの感情を揺らす。楽曲ごとに表情を変える多彩なベース・プレイで楽曲を彩る中村和彦は、この3年間で制作方法を見直し、どこまでもひたむきに“理想”を追い求めたという。中村が今作で提示したベーシストとしての真価と、9mmが見据える未来について語ってもらった。

    単純に自分がカッコいいと思う音をそのまま作品に落とし込めた。

    ――今作『TIGHTROPE』は前作から3年ぶりの作品となりますが、この間は配信含め5枚のシングル・リリースがあったりと、次のアルバムを見据えた制作活動を行なっていたよう思います。

     そうですね。でも前作のツアーが終わっていろいろと区切りがついたタイミングでコロナが流行りだして。コロナ禍になったことで制作に時間をかけることはできましたけど、ライヴとかツアーが延期になったりと、やっぱり影響はかなり受けました。コロナ禍に入って一番最初に完成した曲が今作にも入っている「白夜の日々」なんですけど、これは2020年にレコーディングした曲になります。

    ――9mmはコロナ禍であっても、できる範囲のなかで積極的にツアーやイベントを企画していて、ある種風当たりが厳しかったロック・シーンの先陣を切る姿勢もうかがえました。

     ライヴとか制作とか、あらゆる音楽活動するうえでコロナのことはあんまり考え過ぎないようにしていました。配信ライヴをする際も、お客さんが実際に観ているライヴの光景はいつもの自分たちと同じはずなので、全力でやるというところはブレなかった部分だと思います。

    ――9mmはこれまで“9”という数宇に関連づけた展開が多くありましたよね(例えば、前作『DEEP BLUE』は2019年9月9日発売)。今作は“9枚目”のアルバムとなるわけですが、これまでとは違う特別な意味や思いが込められていたりするのでしょうか?

     個人的にはあるような、ないようなって感じですね(笑)。まぁアルバムを作っていけばどこかで必ず9作目に当たりますから。実は今作はコロナの影響もあって、プリプロとかレコーディングを一部リモートで行なったんです。だからいつもと違う制作方法を採用したという意味では特別な思いがあると思います。

    『TIGHTROPE』
    コロムビア/COCP-41808
    左から、中村和彦、かみじょうちひろ(d)、菅原卓郎(vo,g)、滝善充(g)。

    ――制作にリモートを導入したのは今回が初めてですか?

     そうなんです。今までだったらスタジオに入ってデモを詰めていくやり方でしたけど、「白夜の日々」のプリプロの際に、僕からリモートを提案させてもらいました。自宅で時間をかけて作業を行なっていくうちに、ひとりだとテイクを選ぶ時間もゆっくり取れるし、自分のテイクのクオリティも上がって、本番用でリリースできちゃうかもってくらいのものになって自信を持てたんです。だから今作のベースは自宅でライン録りしたあと、スタジオでリアンプする形で進めていきました。

    ――なるほど。リモートでレコーディングすることで、プレイに意識の変化などはありましたか?

     最終的にはアンプを使うって考えると、アンプの音までイメージしないとやりづらいって人も多いみたいなんですけど、自分はどちらかというとそこは気にしないほうなので、しっかりフレーズに向き合って録音できた点は良かったです。だから単純に自分がカッコいいと思う音をそのまま作品に落とし込めたと思います。自分のなかにある、揺るぎないものはそのままに、好きなようにプレイすることができました。

    ――今年でバンド結成18年目となるわけですが、今作を聴いていても音楽性にブレがなく、 “9mm特有の世界観”のなかで独自に進化を遂げている印象を持ちました。

     自分たちとしては、ブレずにやってこれたってことに対してそこまで自覚はなくて、まわりの人からそういう風に言っていただけてようやく実感できている部分はあります。なので、今作もそういう変わらない信念みたいなものを表現できたと思います。

    ――9mmと言えばトリッキーなリズムも多いですが、中村さんはドラムのビートに対して的確にリズムを入れ替えていますよね。例えば「One More Time」だと、4つ打ちのビートとカッティング・ギターに対して、ハネ感のあるリズミカルなリフでベース・ラインが構成されています。

     この曲のフレーズは滝(善充/g)さんが最初に持ってきたデモの感じを忠実に弾いています。ただあくまでもギタリストのフレーズというか、すごくシンプルなものだったので、スタッカートとかスライドのニュアンスを大袈裟に入れてみたり、フレーズそのものはシンプルな状態をキープしつつ、ニュアンスを強めに入れていくことを意識しました。

    ――ドラムとの絡み合いも聴きどころですが、かみじょう(ちひろ/d)さんとアンサンブルに関して意識を共有し合うこともありますか?

     かみじょうくんは近年のクセというか、本人のなかの流行りなのかもしれないけど、うしろノリで叩くことが多いんです。速い曲だったら少し前に突っ込み気味に弾いて“音を持っていく”ことを意識的にやることもあるのですが、最近だとジャストめを狙うと自然と合うことが多いんですよね。だからあくまでも縦の線がしっかりと合うようなタイム感を作っています。

    「白夜の日々」Music Video

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